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切る・縫う・結ぶ・止める 外科基本手技+応用スキル[Web動画付]

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外科手術の基本手技「切る」「縫う」「結ぶ」そして「止める」の原理とテクニックを一から解説。「なぜそうするのか」「どうすればスムーズに行えるのか」を理論的に説き起こす。手術器具の特性、術中の一つ一つの動きの意味を明らかにし上達の勘所を教示。著者が実演・レクチャーする動画(86本)が記載内容の理解を促す。初心者はもとより経験を重ねた外科医も目から鱗が落ちる知見が満載。

小坂 眞一
発行 2021年10月判型:B5頁:220
ISBN 978-4-260-04285-7
定価 6,600円 (本体6,000円+税)

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  • 序文
  • 目次
  • 書評
  • 付録・特典
  • 正誤表

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 外科医であれば誰でも相反する二つの考えを持つ.
 それは「自分には手術に才能があり誰よりも上手に手術ができる」と,もう一つは「自分は手術に向いておらず才能もなく結局大成しない」である.しかし,手術を経験するうちに「手術には特別な才能など存在せず,結局は努力を続け経験を積んだものが名人の域に達する」ことを知る.すなわち不断の努力の積み重ねが実力である.
 人が学ぶすべてのことに言えるのではあるが,まず初めに誰に外科を習ったかがその後の外科医人生を大きく変えてしまう.誰から手術を習ったかでその手術が上手になったりそうでなかったりする.経験を積めば上手になるのは事実だが,やはり初めが大切なのである.その意味で初めに良い指導医に恵まれる運の良さ,また多くの症例に恵まれる運の良さは外科医の成長にある意味不可欠なものかも知れない.
 実は本書の目的はその初めの運の良し悪しを解消することにある.
 本書は外科の基本である“切る・縫う・結ぶ・止める”を重点的に取り上げたが,これこそがすべての外科に共通する必要手技である.またこれを行うのに必須のメス,鋏,鑷子,鉗子,持針器などの道具の使い方と特徴についてもより深く言及したが,さらに外科医にとって重要な手と頭の使い方についても本文やコラムなどで説明をした.本書を熟読して明日から手術に臨まれることを切望する.必ず手術の最中に本書の内容が頭に浮かぶはずである.また困ったときにはbail outする術をリマインドさせてくれる.
 外科は道具を使って手術をするが,その道具は先人達の創意と工夫によって生まれた.道具に敬意を払って丁寧に使えば良い結果が得られる.その道具にはteam staffも含まれるが,「ヒトと道具は使いよう」,個性を熟知して敬意を払えば手術はスムースに行く.

 末筆ながら本書の作成に3年半余り尽力下さった林 裕氏,またアドバイスや写真を下さった山岸俊介先生(イムス東京葛飾総合病院),水野博司教授(順天堂大学),横山真一郎客員教授(宮崎大学),また塩田吉宣院長はじめ塩田病院手術スタッフに深謝申し上げる。

 最後に本書を亡き父母と40年間外科医人生を支えてくれた妻に捧ぐ.

 2021年 初秋
 小坂眞一

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第1章 手指の機能と特性
 手の解剖学的特徴
 手の把持機能①
 手の把持機能②
 手の二機能① 橈側3指と尺側2指の役割分担
 手の二機能② 上部と下部の使い方
 指の役割① 挟む
 指の役割② 片手2操作
 指の役割③ 道具の移動と回転
 肘の固定の意味
 手首の回外と回内
 感覚器としての手指の役割
 左手(非利き手)の役割

第2章 外科医が知るべき基本原理
 手術における大小長短と道具の選択
 テコの原理
 高低と重力① 出血点の探索
 高低と重力② ドレーンチューブの置き方とケア
 高低と重力③ ものの置き方
 カウンタートラクションとカウンタープレッシャー
 マージン幅
 ラチェットとは
 2と3の違いと活用法
 長さや深さを指で測る
 道具の重心を掴む
 ものの配置

第3章 切る
 メスのタイプ
 メスが切れる原理
 メスの種類
 メスの使い方
 メスとカウンタートラクション
 表層切開法
 逆メスの注意点
 メスによる曲線の切開法
 メスによる剝離
 メス刃の交換
 鋏が切れる原理
 剪刀(鋏)の種類と使い分け
 鋏の持ち方①
 鋏の持ち方② 曲がりの鋏
 糸の切り方① 通常
 糸の切り方② 深部
 組織の切り方①
 組織の切り方②
 組織の切り方③
 右手用の鋏と左手用の鋏
 左手で鋏を使う
 特殊な鋏の持ち方

第4章 縫う
 縫合の道具① 持針器と針
 縫合の道具② 鑷子
 マチュー型持針器の把持法と運針法
 へガール型持針器の把持法
 へガール型持針器の針の装着法
 運針対象の位置認識
 運針の基本① 正しい運針
 運針の基本② 針の彎曲と長さ
 運針の基本③ 順手運針(G1)と針の抜き方
 運針の基本④ 逆手運針(G2)
 運針の応用① 4つの把持形と4つの運針法
 運針の応用② 運針法の適用
 運針の応用③ 針の角度補正(angling)
 運針の応用④ 特殊な運針法(非回転運針)
 運針の応用⑤ パームグリップ
 縫合の実際

第5章 結ぶ
 糸の種類
 糸の把持法
 糸結びの原理
 男結びと女結び
 糸結びの数
 糸結びと糸の牽引①
 糸結びと糸の牽引②
 糸結びと糸の牽引③
 糸締めにおける手指の使い方
 糸の配列と結紮法
 両手結び
 片手結びの原理と特徴
 結紮時に糸が切れる理由と対策
 特殊な深部糸の結び方
 器械結び
 連続縫合の終点の結紮法
 スリップノット

第6章 止める
 出血が止まる原理
 出血が止まらない理由
 皮膚および皮下組織からの出血
 止血に使われる鉗子
 鉗子を使った止血法① バジング
 鉗子を使った止血法② 結紮
 運針による止血法(Z縫合,U字縫合)
 出血血管の切離と止血鉗子の向き
 ヘモクリップによる止血法
 深部からの出血
 中血管の止血法
 完全遮断時のヘパリン
 大血管の止血法
 止血のための運針法のまとめ
 各種の組織や臓器からの止血法
 大量出血の対応法

索引
著者紹介

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修得のスピードを上げ技術の深化へと導く一冊
書評者:宮入 剛(聖マリアンナ医大教授・心臓血管外科)

 本書のタイトル『切る・縫う・結ぶ・止める』は外科手術の基本である。初めて手術室に足を踏み入れた研修医の時代から,先輩医師に口を酸っぱくして指導された手術手技のイロハである。例えば,駆け出しの時代に,椅子の背柱や机の脚などで繰り返し糸結びを練習した記憶は,どの外科医にも残っているであろう。しかし,それらの動作を巨細な指の動きのレベルまで突き詰めた外科医は,そう多くないはずである。

 本書は,外科医であれば普段何気なく行っている数々の基本手技を,手や腕の解剖学的特性から説き起こした他に類を見ない内容となっている。それらのメカニズムが,多数の写真やイラストによって解き明かされていくさまは,まるでベン・ホーガンの『モダン・ゴルフ』のように鮮やかである。あまつさえ,本書には著者自らが実演する動画が86本も添付されていて,実際の動作を見ながら学べるというおまけ付きである。

 著者の小坂眞一先生は,かつて本邦で最初の冠動脈バイパス手術の技術指南書を送り出し,世の心臓外科医の裨益するところ大であった。またその後も心臓病にならないためのわかりやすい新書などを出版され,社会の啓蒙に努めておられる。現在は日本AHVS/OPCAB研究会の代表世話人としてエキスパートの集団を率い,また早稲田心臓外科塾の主宰者として後進の指導にあたられている。本書は,外科の奥義を知り尽くした小坂先生が,そのスキルの全てを前途ある若手外科医に伝承したいという熱意に溢れた,渾身の一冊である。

 もちろん外科医にとって,技術を伴わない理論は意味を持たない。技術は理解するものでなく,たゆまぬ練習によって実技のレベルまで落とし込むものである。しかし,全ての鍛錬がそうであるように,初心者にとって正しい理論とメカニズムを知ってから実技を始めるのとそうでないのとでは,技術修得のスピードばかりか到達度まで変わってくる。また,すでにある程度技術を修得した人にとっても,ふと疑問に思ったり,壁に突き当たったりして,原理原則に立ち返りたくなることはしばしば経験されるだろう。さらに,エキスパートの先生方にとっても,スキルの確認と整理,および後進の指導のために,基本技術をビジュアルに体系化した本書は極めて有用と思われる。全ての外科医の書架に蔵していただきたい一冊である。


良質なパフォーマンスをめざす全ての外科医へ
書評者:塩瀬 明(九大大学院教授・循環器外科学)

 一流のスポーツ選手や音楽家の感動を呼ぶ華やかなパフォーマンスの裏には,長年の地道な基本手技の繰り返しによる習得がある。本書は,外科医にとっての基本手技の重要性を説き,文章でも写真でもイラストでも動画でもその手技を理解できるよう工夫されている。さらに手の固定,指の使い方,回旋,感覚など今まで漠然と経験的に取得してきた「外科医の手」について,解剖学的特性から理路整然と解き明かされたことは画期的である。

 手指の効率的な動かし方に基づいた鑷子,鋏,持針器などの道具の使い方や糸結びについて,若手のみならず経験豊富な外科医にも大いに学ぶべき内容,解説が随所に述べられている。日頃から道具の特性を熟知し,敬意を払って丁寧に使うべし,という著者の立場から,道具の構造から使用方法まで解説されているため,外科医各個人が自分に合った道具を選ぶ際に大いに参考になる。外科手術では避けて通れない止血の項目では,効果的な止血点の探索法や止血法のエッセンスが述べられ,実際の手術で止血に困った時には,本書で述べられていることを参考にすれば出血コントロールも可能であろう。

 本書を通して随所に「コツ・勘所」がハイライトで述べられ,その数は58にのぼる。著者のこれまでの経験に裏打ちされた基本手技の肝となることがそれぞれ一文で述べられているので,必要な箇所を書き出して日頃から繰り返し見直したり,手術に臨む前に見直したりするのも本書の一つの使い方かもしれない。

 手術で実力を発揮するためには外科基本手技の習得が必須条件である。基本手技習得に際して“変な癖”がつかないよう良質の導きが必要であり,本書で重点的に述べられている“切る・縫う・結ぶ・止める”に沿って不断の努力を続けると自ずと良質なパフォーマンスの基本となる手技が習得できることは間違いない。

 本書は経験年数にかかわらず外科医にとって重要な基本手技に立ち返る際に手元に置いておくべき書である。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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