永寿総合病院看護部が書いた
新型コロナウイルス感染症アウトブレイクの記録
病院職員83名、患者さん109名が感染。あの時、何が、起こったか。
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発熱者の増加、相次ぐスタッフの体調不良、それが新型コロナウイルス感染症アウトブレイクの始まりだった。病棟閉鎖、人員不足による業務負担の増加、そして感染への不安。目まぐるしく状況が変わる中で、看護師たちがいかに感染対策を進め、情報を共有し、患者さんと家族に対応したか。日常の看護を守るために何をしてきたか。看護師たちの実体験をもとにした、新型コロナウイルス感染症対応の記録。
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序文
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はじめに
2020年3月、永寿総合病院で発生した新型コロナウイルスの大規模な感染拡大(アウトブレイク)により、最終的に患者様、病院職員の200名以上が感染し、43名の患者様がお亡くなりになりました。お亡くなりになった患者様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
院内感染が判明してから、当院を取り巻く環境は一変しました。今まで当たり前に行っていた業務が、この日を境に大きく変化しました。このような経験は、誰にとっても初めての出来事でした。
しかも、相手は新型コロナウイルスという未知のウイルスです。感染制御部を中心に、とにかく感染を広げない、そして自分もうつらないよう、手探りのまま対応するしかありませんでした。先が見えず、本当に収束を迎える日がくるのだろうかと途方に暮れたこともあります。結局、アウトブレイクが収束し、外来診療を再開するまでには、2か月以上を要しました。
その後も、他の病院や施設で新型コロナウイルス感染症のクラスター発生に関するニュースを何度も耳にしました。そのたびに、今まさに感染症と闘っている医療従事者たちの苦労や大変さが身にしみて感じられ、つらくなりました。
ようやくワクチン接種が開始されたものの、新型コロナウイルス感染症との闘いはまだ続いています。今、私たちにできることは、あの約2か月間、当院の職員たちがどのような感染対策を講じ、アウトブレイクを乗り越えたてきたのかを伝えることだと考えています。
本書は、アウトブレイクから感染収束までを看護科長の視点からまとめた記録です。私たちが取った対策が正解だったのか、もっとよい方法があったのか、わからないままのことも含まれています。現在は明らかになっていても、当時わからなかったこともたくさんありました。
読者の皆様が、ご自身の病院や施設で院内感染を起こさないために、そして不幸にも起きてしまった時に、私たちの失敗を含めた経験を少しでも役に立てていただければ幸いです。
2021年2月
武田聡子
目次
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はじめに
Chapter 1 何が起こっているの? 始まりは「あれ? おかしい」
患者、スタッフに発熱者が増え始めた!
新型コロナウイルス感染症の院内感染が明らかになった
スタッフへの感染も徐々に増えていった!
Chapter 2 勤務調整 突然の出勤停止、病棟閉鎖をどう乗り越える?
28名が出勤停止!
他部署混合の業務が始まった!
業務の負担軽減を進めた
勤務調整に適応していく一方で、失われたものもあった
Chapter 3 業者の撤退! 清掃も洗濯も警備も、自分たちでやるしかない!
業者が行っていた業務を分担した
感染管理をしながらの新しいルール作りが必要になった
業者の撤退は入院患者さんにも大きな影響があった!
Chapter 4 手探りの感染対策 「とにかく防御!」からコホーティング、感染対策の確立へ
とにかく防御、防御!
コホーティング、ゾーニングによって清潔区域が整備された
清潔区域を維持するためのルール作りを進めた
PPE装着のルールが変更になった
Chapter 5 感染対策の確立 起こさない、広げないためのルールを周知徹底!
感染対策の教育を進めた
感染しない、広げないためのルール作りを行った
病棟内の環境ラウンドは毎日実施!
これ以上感染者を出してはいけない、という思いがとにかく強かった!
Chapter 6 看護科長の役割 スタッフには、患者さんのケアに集中してもらいたい!
看護スタッフには、通常の業務に集中してもらいたい!
陽性患者さんのエンゼルケアやお見送りの難しさに直面した
看護スタッフの健康管理と勤務調整に追われた!
Chapter 7 情報共有 日ごと、時間ごとに変わる情報に対応する!
クロノロジーで「今」の情報共有を図った
情報共有をしながら、協力体制を構築していった
Chapter 8 患者さんとご家族への対応とケア 退院、転院、面会制限……患者さんも大変だった!
感染を広げないため、患者さんの転院・退院を進めた
ご家族の面会を制限した
タブレット面会を導入した
様々な行動制限により、患者さんのストレスも高まった
Chapter 9 看護スタッフのケア 風評被害と差別、出勤制限への対応
家族の事情から、出勤できない職員が増えた
感染リスクを減らすため、職員の日常生活にも制限がかかった
給与の保証や勤務体制が、状況に応じて変更された
自宅への訪問、突然の取材申し込みなど、マスコミ対応に悩まされた
看護スタッフのメンタルケアが必要となった
column
1 感染管理に関連する用語を整理しておこう
2 看護学生の臨地実習も受け入れ停止に
3 意外と使える! 養生テープ
4 業務効率化のための工夫① 陰部洗浄を簡便に!
5 業務効率化のための工夫② 高吸収パッドの導入
6 患者さんのお見送り「全然知らない私ですみません」
7 アウトブレイクから学んだことを支援に生かす
8 4月入職者対応――新卒看護師は別の病院へ
9 タブレット面会で「伝わるもの」と「伝わりきらないもの」
10 血液内科の患者さんがくれた「花まる」
11 アウトブレイク後も、職員のメンタルヘルスを守る活動を
おわりに
索引