感染対策マニュアル 第2版
感染させない、感染しない。感染対策の基本と手順が一目でわかります
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手洗いや消毒、ガウンテクニックの基本手順を写真で解説。滅菌操作が必要な人工呼吸器管理や、手術室や透析室での感染管理についても、手順が一目でわかる。MRSAやインフルエンザなど感染症別の対応は、発生から解除までの流れに沿って、感染対策のポイントが理解できる。
現場の声が作り上げたマニュアルだから、忙しい臨床でもすぐに使える。患者と自分を守るために、今日からできる感染対策の実践を。
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
はじめに
2007年に『感染対策マニュアル』初版が発行されて6年,驚いたのは感染症のしぶとさです。
どんなによい薬に対しても必ず出てくる薬剤耐性菌,今までなかった新型感染症の登場,結核や風疹などが復活し,熟知したつもりのノロ,インフルエンザが毎年のようにブレイクしています。医学が進歩すると病原体が進化し,医学はさらに進歩して,病原体がもっと進化する,この関係はどこまでも続くことでしょう。
患者を守り,医療従事者自身を守るためには院内感染予防が必要です。進化する感染症をなくすことはできなくても,院内感染を予防することは可能だ,この『感染対策マニュアル』の目標はそこにあります。
無数の人間が入り乱れる医療の現場では,最も低いレベルの部分から防御壁が破れ院内感染が発生し,一気に広がります。すべてを知り尽くしている天才が一人いてもだめなんです。どうしたら一人の漏れなく全員のレベルを底上げできるかが,感染対策の大事なポイントになります。私たちの『感染対策マニュアル』は,その発想から作成しました。
感染対策は,医師,看護師はもちろん,すべての職員が確実に実行可能でなければなりません。だから,誰が見てもよくわかる内容にまとめてあります。
また医療スタッフは大変忙しいので,すべてを読み通すことはできないかもしれません。ましてやすべての項目を暗記することは,とても無理。ですから,とっさのときに必要なことが一目でわかる構成になっています。
私たちの病院と同じような,ごく普通の規模のごく普通の病院でできること,特別な道具や特別な施設はなくても,できることでなくてはなりません。
こうして,使い勝手のよい,ちょうどほしかった本になったと思います。
第2版の作成にあたっては,目まぐるしく変化する感染対策を巧みにまとめあげた吉田美智子さん,藤井基博さん,そしていつも的確なアドバイスを与えて下さった医学書院の品田暁子さんの協力が不可欠でした。監修者からこの場を借りて彼らに感謝し,労をねぎらう場違いさを許していただければと思います。
最後にお願いがあります。使ったら必ず感想を教えて下さい。特に,
「目には目を,歯には歯を,新版には新型を」(インフルエンザ)
「また来年,必ず戻ってきます」(ノロ)
「昔の名前で出ています」(結核)
そんな挑戦状,大歓迎です。それで私たちはもっと鍛えられます。
一人残らず鍛えられたみんなの団結力だけが,この終わりのない泥沼のような戦いを制することができるのです。一緒にがんばりましょう。
2013年5月
大野義一朗
2007年に『感染対策マニュアル』初版が発行されて6年,驚いたのは感染症のしぶとさです。
どんなによい薬に対しても必ず出てくる薬剤耐性菌,今までなかった新型感染症の登場,結核や風疹などが復活し,熟知したつもりのノロ,インフルエンザが毎年のようにブレイクしています。医学が進歩すると病原体が進化し,医学はさらに進歩して,病原体がもっと進化する,この関係はどこまでも続くことでしょう。
患者を守り,医療従事者自身を守るためには院内感染予防が必要です。進化する感染症をなくすことはできなくても,院内感染を予防することは可能だ,この『感染対策マニュアル』の目標はそこにあります。
無数の人間が入り乱れる医療の現場では,最も低いレベルの部分から防御壁が破れ院内感染が発生し,一気に広がります。すべてを知り尽くしている天才が一人いてもだめなんです。どうしたら一人の漏れなく全員のレベルを底上げできるかが,感染対策の大事なポイントになります。私たちの『感染対策マニュアル』は,その発想から作成しました。
感染対策は,医師,看護師はもちろん,すべての職員が確実に実行可能でなければなりません。だから,誰が見てもよくわかる内容にまとめてあります。
また医療スタッフは大変忙しいので,すべてを読み通すことはできないかもしれません。ましてやすべての項目を暗記することは,とても無理。ですから,とっさのときに必要なことが一目でわかる構成になっています。
私たちの病院と同じような,ごく普通の規模のごく普通の病院でできること,特別な道具や特別な施設はなくても,できることでなくてはなりません。
こうして,使い勝手のよい,ちょうどほしかった本になったと思います。
第2版の作成にあたっては,目まぐるしく変化する感染対策を巧みにまとめあげた吉田美智子さん,藤井基博さん,そしていつも的確なアドバイスを与えて下さった医学書院の品田暁子さんの協力が不可欠でした。監修者からこの場を借りて彼らに感謝し,労をねぎらう場違いさを許していただければと思います。
最後にお願いがあります。使ったら必ず感想を教えて下さい。特に,
「目には目を,歯には歯を,新版には新型を」(インフルエンザ)
「また来年,必ず戻ってきます」(ノロ)
「昔の名前で出ています」(結核)
そんな挑戦状,大歓迎です。それで私たちはもっと鍛えられます。
一人残らず鍛えられたみんなの団結力だけが,この終わりのない泥沼のような戦いを制することができるのです。一緒にがんばりましょう。
2013年5月
大野義一朗
目次
開く
第1章 見直そう!感染対策の基本
1.スタンダードプレコーション
2.手洗い
3.手指消毒
4.手袋の着脱
5.マスクの着脱
6.ガウンテクニック
7.洗浄・消毒・滅菌
第2章 確認しよう!滅菌操作時の感染予防
1.滅菌手袋の装着
2.滅菌ガウンの着脱
3.尿道留置カテーテルの感染管理
4.血管内留置カテーテルの感染管理
5.人工呼吸器の感染管理
6.透析室の感染管理
7.手術部位の感染管理
第3章 知っておきたい!感染症別感染対策
1.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
2.B型肝炎・C型肝炎(HBV/HCV)
3.後天性免疫不全症候群(AIDS)
4.腸管出血性大腸菌感染症
5.感染性胃腸炎(ノロウイルス)
6.疥癬〈かいせん〉
7.結核(TB)
8.麻疹〈ましん〉・風疹〈ふうしん〉・水痘〈すいとう〉
9.インフルエンザ
10.針刺し損傷,血液曝露〈ばくろ〉
11.ワクチンによる感染症予防
資料
感染性廃棄物分類表
届出感染症の分類と対応一覧
感染対策NEWS
指輪や腕時計で,院内感染する証拠はある?
親指,指先,手首まで,きちんと洗えていますか?
N95レスピレーターQ&A
そのマスク,本当にフィットしている?
手洗いの方法,使い分けていますか?
工事をせずに隔離室ができる,空気感染隔離ユニット
1.スタンダードプレコーション
2.手洗い
3.手指消毒
4.手袋の着脱
5.マスクの着脱
6.ガウンテクニック
7.洗浄・消毒・滅菌
第2章 確認しよう!滅菌操作時の感染予防
1.滅菌手袋の装着
2.滅菌ガウンの着脱
3.尿道留置カテーテルの感染管理
4.血管内留置カテーテルの感染管理
5.人工呼吸器の感染管理
6.透析室の感染管理
7.手術部位の感染管理
第3章 知っておきたい!感染症別感染対策
1.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
2.B型肝炎・C型肝炎(HBV/HCV)
3.後天性免疫不全症候群(AIDS)
4.腸管出血性大腸菌感染症
5.感染性胃腸炎(ノロウイルス)
6.疥癬〈かいせん〉
7.結核(TB)
8.麻疹〈ましん〉・風疹〈ふうしん〉・水痘〈すいとう〉
9.インフルエンザ
10.針刺し損傷,血液曝露〈ばくろ〉
11.ワクチンによる感染症予防
資料
感染性廃棄物分類表
届出感染症の分類と対応一覧
感染対策NEWS
指輪や腕時計で,院内感染する証拠はある?
親指,指先,手首まで,きちんと洗えていますか?
N95レスピレーターQ&A
そのマスク,本当にフィットしている?
手洗いの方法,使い分けていますか?
工事をせずに隔離室ができる,空気感染隔離ユニット
書評
開く
見て,理解して,実践できる感染対策
書評者: 石井 良和 (東邦大学医学部教授・感染制御学分野)
1995年ごろは,わが国の病院で分離される黄色ブドウ球菌の約90%がメチシリン耐性株(MRSA)という信じられない状況でした。当時は,“それが当たり前”ととらえられており,その制御はほぼ不可能と考えられていました。そのような中,1996年に「病院における隔離予防策のためのガイドライン」がCDC(米国疾病管理予防センター)のHICPAC(医療感染制御業務諮問委員会)によって公開されました。
本ガイドラインは,科学的根拠に基づく実践的な内容であることから,多くの施設で感染症対策に取り入れられてきました。CDCは複数の実践的なガイドラインをその後も公開し,それらは世界の感染対策に多大な影響を与えてきました。現在,わが国の多くの病院で分離される黄色ブドウ球菌に占めるMRSAの頻度は約30%にまで低下しています。
CDCガイドラインは日本の感染対策にも大きく貢献しました。CDCガイドラインを基にした感染対策の書籍も出版されました。しかし残念ながら,その多くは若干の図表が掲載されているものの文章ばかりで,初心者向けのものではありませんでした。いつも多忙で時間のない医療現場で使われるマニュアルとして最も重要なことは,知りたいことを簡単に検索し,見て(読んでではありません),理解して,実践できるようなものです。
2007年に大野義一朗氏から,本マニュアル(初版)発刊の連絡を受けました。その後,学会会場の書籍販売店で本書を見かけましたが,正直に言いますと,一抹の不安を感じながら手にしました。なぜなら,私の認識では大野氏は感染対策の専門家ではないからです。
しかし,本書を開いてすぐに,私の不安は杞憂であることがわかりました。本マニュアルには多くの写真が取り入れられており,誰でも一目で重要な手技・方法を理解して実践できるように配慮されていたからです。CDCガイドラインに示された感染対策が,しっかりとマニュアルとして落とし込まれていると感じました。
大野氏は,初版の冒頭で“感染対策に関しては,全医療従事者が一定レベルに到達していることが重要で,たった一人の不注意から破たんする”という趣旨の考えを述べています。さまざまな職種が関与する感染対策業務において,このことは極めて重要です。それまで,それを意識して作成されたマニュアルはなく,私が知る限り,本書はそれを意識して編纂された最初のマニュアルです。
今回,大野氏は2007年に刊行された感染対策マニュアルを改訂して,第2版を上梓しました。第2版では「透析室の感染管理」,「感染性胃腸炎(ノロウイルス)」,「ワクチンによる感染症予防」が追加されました。もう少し早く本書を入手できていれば,多くの施設でノロウイルスのアウトブレイクに効果的な対策がとれたかもしれません。そのことが残念です。
本書は院内感染対策チームのみならず,調理,清掃,事務などの仕事に携わる職員を含め,病院に勤務するすべての医療従事者に見てほしいと考えます。
書評者: 石井 良和 (東邦大学医学部教授・感染制御学分野)
1995年ごろは,わが国の病院で分離される黄色ブドウ球菌の約90%がメチシリン耐性株(MRSA)という信じられない状況でした。当時は,“それが当たり前”ととらえられており,その制御はほぼ不可能と考えられていました。そのような中,1996年に「病院における隔離予防策のためのガイドライン」がCDC(米国疾病管理予防センター)のHICPAC(医療感染制御業務諮問委員会)によって公開されました。
本ガイドラインは,科学的根拠に基づく実践的な内容であることから,多くの施設で感染症対策に取り入れられてきました。CDCは複数の実践的なガイドラインをその後も公開し,それらは世界の感染対策に多大な影響を与えてきました。現在,わが国の多くの病院で分離される黄色ブドウ球菌に占めるMRSAの頻度は約30%にまで低下しています。
CDCガイドラインは日本の感染対策にも大きく貢献しました。CDCガイドラインを基にした感染対策の書籍も出版されました。しかし残念ながら,その多くは若干の図表が掲載されているものの文章ばかりで,初心者向けのものではありませんでした。いつも多忙で時間のない医療現場で使われるマニュアルとして最も重要なことは,知りたいことを簡単に検索し,見て(読んでではありません),理解して,実践できるようなものです。
2007年に大野義一朗氏から,本マニュアル(初版)発刊の連絡を受けました。その後,学会会場の書籍販売店で本書を見かけましたが,正直に言いますと,一抹の不安を感じながら手にしました。なぜなら,私の認識では大野氏は感染対策の専門家ではないからです。
しかし,本書を開いてすぐに,私の不安は杞憂であることがわかりました。本マニュアルには多くの写真が取り入れられており,誰でも一目で重要な手技・方法を理解して実践できるように配慮されていたからです。CDCガイドラインに示された感染対策が,しっかりとマニュアルとして落とし込まれていると感じました。
大野氏は,初版の冒頭で“感染対策に関しては,全医療従事者が一定レベルに到達していることが重要で,たった一人の不注意から破たんする”という趣旨の考えを述べています。さまざまな職種が関与する感染対策業務において,このことは極めて重要です。それまで,それを意識して作成されたマニュアルはなく,私が知る限り,本書はそれを意識して編纂された最初のマニュアルです。
今回,大野氏は2007年に刊行された感染対策マニュアルを改訂して,第2版を上梓しました。第2版では「透析室の感染管理」,「感染性胃腸炎(ノロウイルス)」,「ワクチンによる感染症予防」が追加されました。もう少し早く本書を入手できていれば,多くの施設でノロウイルスのアウトブレイクに効果的な対策がとれたかもしれません。そのことが残念です。
本書は院内感染対策チームのみならず,調理,清掃,事務などの仕事に携わる職員を含め,病院に勤務するすべての医療従事者に見てほしいと考えます。