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看護現場で「教える」人のための本
教える側と教わる側のミスマッチを防ぐために

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臨床看護師は、後輩や新人、学生などを相手に、現場で「教える」立場になることが珍しくありません。ただ、その際の「教え方」は、自らの経験に基づくことが多く、教育的に吟味された方法とは言いにくい場合があります。本書は、長年看護教育に携わってきた教育の専門家である著者が、看護現場で遭遇する13のケースを通して、事例編ではその対処法を、解説編ではその根拠を、教育学の観点からわかりやすく解説したものです。

新保 幸洋
発行 2021年10月判型:A5頁:176
ISBN 978-4-260-04792-0
定価 2,420円 (本体2,200円+税)

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  • 著者による本書の紹介
  • 序文
  • 目次
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はじめに

 本書は,院内で教育や指導を行っている臨地実習指導者,プリセプター,新人教育担当者などの指導者の方々に向けて書かれた本です。その教える主たる対象者は,新人あるいは入職後3,4年程度の看護師から実習中の学生までの幅広い層を想定しています。
 看護教育に関する専門的な内容について書かれた本の多くは,教員が学生を教えるためのものです。しかし本書は,臨床での指導時に遭遇する具体的なコミュニケーション場面に焦点を当て,その改善を通して教育の在り方や対象者の育て方を見つめ直そうという意図で書かれています。
 私はこれまで30年以上の期間,看護に関係する数多くの組織(病院,看護協会,現任教育機関など)に関わり,さまざまな役割を担った看護師さんたちと出会い,一緒に仕事をしてきました。そこで気づいたことは,看護師という職業には,我々のような教育学の専門家が想像する以上に,非常に高度な教育能力が要求されているという事実でした。指導的な立場に立たされた先輩看護師には,学生を含めた後輩看護師たちを教育し,その成長を後押しする力,医療や看護に関する新しい知識や技術などを同僚たちに伝達し,共有してゆく能力などが日々求められています。しかし,その一方で,ほとんどの看護師は,それまで受けてきた教育課程のなかで,教育に関する専門的な知識や技術を学ぶ機会を十分には得ていません。そのため,自らの被教育者としての体験(学校の先生から教えてもらった経験など)を思い出し,それを手がかりとしながら実践してみたり,職場の先輩たちの指導を見よう見まねでやってみるなど,ほぼ徒手空拳に近い状態で取り組んできたのが実情ではないでしょうか。その結果,教育に関して苦手意識をもったり,実際の指導がうまくいかなくて落ち込んでしまい,それがバーンアウトや離職につながるということも起きています。私としてはそのような状況を少しでも改善したいという想いから,本書の執筆を思い立ちました。
 もちろん,本書を読んだぐらいでこれらの問題が一挙解決となれば苦労はありません。しかし,教育に関する基礎的・基本的な原理・原則を押さえ,対象者理解を深め,その対象者及び状況に合った方法を選択してゆくことによって,多少なりとも教える側と教わる側のミスマッチを防ぐことはできるのではないかと考えました。どこで両者の食い違いが起き,それに対して何をポイントとして押さえながら関わってゆくとよいのか。さまざまなケースに基づきながら,具体的に改善策を考えてゆきましょう。

 新保幸洋

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はじめに
本書のねらい

第1部 実際の臨床場面で指導上困難を感じた場面を再検討する
 Case 1 優先順位がうまくつけられない
 Case 2 何がわからないかがよくわからなくて,混乱している
 Case 3 実際は大丈夫ではないのだが,つい「大丈夫」と言ってしまい失敗する
 Case 4 同じミスを何度も繰り返す
 Case 5 強いプレッシャーから不安に押しつぶされそうになっている
 Case 6 言葉遣いや態度が横柄だと患者さんからクレームがついた
  Column ① フィードバックの理論と実践法
 Case 7 与えられた課題が重すぎて,つぶれそうになっている
 Case 8 言われたことをすぐに忘れてしまいミスをする
 Case 9 自分の世界に閉じこもり,外界とのコンタクトを失っている
 Case 10 わかっているけど,できない
  Column ② 子どもの教育モデルと大人の教育モデルの違い
 Case 11 自分のやり方に固執して,柔軟な対応ができなくなっている
  Column ③ 成人学習の5原則
 Case 12 見るべきポイントがよくわからなくて混乱している
  Column ④ リフレーミングの理論と実践法
 Case 13 患者さんから関わりを拒否された指導を行う際に役立つ

第2部 原理・原則・方法を学ぶ
 1.教育とは共育である(凶育や脅育でもなければ,強育でもない)
  ・教育観が学習者に与える影響
  ・私の教育観「教育=共育」
  ・学生や新人と共に指導者も育つことを願って
 2.学習者の一見奇妙に見える行動,理解し難い行動をどう捉えるか
  ・怒りやイライラを学生にぶつけるのは生産的ではない
  ・学習者の行動を,捉える枠組みから理解する
  ・「人に理由あり」を心に留めて対応する
  ・学生の提案を受け入れて,やってみる
  ・無意識に高い期待を抱いているのでは?
 3.新人や学生の特徴を理解し,関わりを工夫する
  ・失敗に過敏になるより経験から学ぶ
  ・マイナス着眼からプラス着眼へ
  ・仕事の意味を限定的に捉えるよりも個々の仕事に意味づけを行う
  ・否定されることへの恐れが強い状態から,わからないことを率直に聞く・伝える姿勢へ
  ・思い込みが強い状況から,視野を広げて考えるようにする
  ・ひとりで仕事を抱え込む状況から,周囲の力を借りて巻き込むように
  ・バッドフローに入らないように気をつける
 4.教と育の関係(語源,モデル,歴史,アプローチ)
  ・教と育という2つの漢字の語源
  ・「教」を重視したモデル:粘土細工モデル,導管注入モデル
  ・「育」を重視したモデル:植物栽培モデル,有機体モデル
  ・学習者の成熟度に応じた指導方法の工夫

事例フォーマット
おわりに
索引

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新人・学生と指導者が共に学べる,事例を使った「共育」の名著
書評者:熊谷 雅美(済生会横浜市東部病院院長補佐)

 本書の著者は,看護基礎教育においては看護教員や臨地実習指導者,継続教育においては新人看護職員研修の担当者育成など,教育学の専門家として,看護教育に長年ご尽力をいただいている。その豊かな経験を通じ,「看護師という職業には,教育学の専門家が想像する以上に,非常に高度な教育能力が要求されている」こと,そして「ほとんどの看護師は,教育課程の中で,教育に関する専門的な知識や技術を学ぶ機会を十分には得ていない」という事実に気付かれた。このことが本書の執筆につながったと述べられている。

 著者の具体的な経験を基に書かれた本書は,指導上困難を感じた13の場面を通して,指導者が対象者の理解を深め,対象者に合った教育方法を選択できることをめざしている。ここに登場する新人看護師や学生は,場面や時期は違っても,「何度教えても,同じ失敗を繰り返す」「他の新人はできるのに,同じように成長していかない」「わからないのにわかると言って失敗する」というタイプで,いずれも新人・学生の指導上の3大困難パターンを示していると言っても過言ではないだろう。著者はどのケースも臨場感たっぷりに設定しており,読んでいると思わず「あるある」とうなずける。そして,その状況はどういうことなのか,新人・学生の思考はどうなっているのかを解説し,それを踏まえ,だから指導者はこうかかわってみたらどうかと,教育学に基づいたエビデンスを駆使し論述している。事象⇒事象の説明⇒解決のためのエビデンス⇒解決方法という系統的な論述で,事例を使った著者の授業を受けているようにスッとふに落ちる。

 看護基礎教育における看護学生と教員,新人看護師と研修担当者も成人学習者であり,経験学習を通し学んでいく。著者は本書の中で,「教育担当者が新人看護師の状況を理解すること」や「教育担当者自身が教えることに困難を感じていること」を客観視する必要がある,そして学びの営みにおいて,教える者が自身を客観視するメタ認知の力を育成することが必要であると述べている。

 教育は,目標とその達成のために方法と評価で構成されるので,目標が達成されなければ,方法や目標の変更が必要だ。指導がうまくいかないことを,対象者の状況と方法のミスマッチだと説くところに,教育者としての著者の立ち位置を感じることができる。

 新人看護師が,学校で学んだことと臨床現場で学ぶことに乖離を感じ,就職して1年以内に離職してしまうことがよく起こったことから,2010(平成22)年,法律が改正され新人看護職員研修が努力義務化された。このことによって,指導に当たる看護師は「教える」ことについて学ぶ必要が生じたことがわかる。今日もどこかで新人看護師と教育担当者が共に学んでいる。本書は,指導する側とされる側が共に成長するために,多くの示唆を与えてくれる「共育」の名著である。

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