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リフレクションを可視化する
ティーチング・ポートフォリオ・チャート作成講座【Web解説動画付】

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ティーチング・ポートフォリオ・チャート(Teaching Portfolio Chart )は、1枚のワークシートに「責任」「改善努力」「成果評価」「方法」「方針」「理念」「目標」といった項目を、行ってきた教育についてリフレクションしながら作成するものです。作成過程や出来上がったものを他者と共有することで、自らの教育に対する姿勢や行動の原理が明らかになります。本書では、看護教育の事例を参照しながら具体的な作成方法を学べます。チャートを通して成長する方法を身につけましょう。

栗田 佳代子 / 吉田 塁
発行 2021年03月判型:B5頁:112
ISBN 978-4-260-04477-6
定価 2,860円 (本体2,600円+税)

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[サンプル]1.作成の流れを知る

    

[サンプル]8.方法の背後にある方針を書き出す

    

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はじめに

ティーチング・ポートフォリオ・チャートの広がり
 「よい教育」を実現するための具体的な手法や考え方は,世の中にすでに無数にあり,これらの情報は簡単に手に入れることができます。一方では,教育に対する社会からの要請や期待は日々高くなり,教員はそれに応えたいと考えつつも諸事に忙殺され,「よい教育をしたい」とじっくりと考える時間をとることもままならない日々を過ごしています。
 また,2020年のCOVID-19の世界的な感染拡大は,教育方法に大きな影響を与えました。感染拡大防止のため,2020年度開始当初は,大学をはじめとする教育機関におけるほぼすべての授業が,オンラインに急遽切り替わる事態となりました。このことは,「対面で行われる授業では何が学べるのか」「オンラインでは何ができるのか・できないのか」「そもそも何が『学び』につながるのか」といった問いが起こり,これまで当たり前だった教育や学校の価値が見直される機会となりました。
 現在,教員は,膨大な情報と社会からの期待に囲まれ,かつ,教育そのものの価値について問い直す機会を否応なく突きつけられており,今ほど教育者としてのあり方を自分で自覚することが必要とされているときはありません。そうでなければ,情報に流され期待に応えようと右往左往し,いつしか自分に自信がもてなくなってしまうことでしょう。

 本書でとりあげるティーチング・ポートフォリオ・チャート(Teaching Portfolio Chart:以下,TPチャート)とは,教育者としての自分を振り返り,自分のあり方を自分で見出すためのツールです。学生にどのように育ってほしいのか,自分はどうありたいのか,学問の何を学んでほしいのか,これらの問いに対する答えは,他者から与えてもらうものではなく,自分のなかに見出すものです。自分のなかにある軸を見出せば目指す方向が定まり,必要な情報を,意思をもって選び取っていくことができるでしょう。また,教育者としての価値をあらためて認識し,誇りをもって教育を行っていくことができるでしょう。

 TPチャートの試作版が2009年に開発されて以降,TPチャートを作成するワークショップが数多く開催されてきました。それらのなかには参加者が900名を超えるものや,アイルランドや台湾での開催,オンラインでの実施が含まれています。また,TPチャートは,小中高の先生方にも受け入れられ,学校種を越えて普及しつつあります。
 TPチャートは,新しい教育方法でもありませんし,作成するには一般的な研修プログラムよりは少し長い時間を必要とします。しかし,それでもこれら多様な場へ広がりを見せているのは,TP チャートが「どうありたいのか」を自身に問い,教育者としての自分を見出せるというところに意義を感じてくださる人が多いからではないかと考えます。
 そこで,さらにより多くの先生方にTPチャートについて知っていただき,使っていただけるよう,作成や活用の方法について具体的にまとめたのが本書です。

想定する読者
 本書で紹介するTPチャートは「教育者であること」について深く考えるツールです。したがって,教育に従事している,あるいは従事したいと考える方々を読者として想定しています。なかでも本書は,看護学を専門とする教員に読んでいただきたいと考えているので,TPチャートの事例としては,看護学を専門とする先生方のものを所収しています(第2部第3章)。
 本書の想定する読者は,第一に看護師を育てることに従事する大学や専門学校に所属している教員ですが,これからそうした職に就こうとする方々,具体的には,現在,大学院生であったり,あるいは現役の看護師から教育職を目指そうとされたりしている方々にも手に取っていただきたいと考えています。
 もちろん,事例は看護学を基本としていますが,他の学問領域に通じることも多く,実際に理念そのもの,あるいは理念に至る過程に学問間に大きな違いは見られません。これは,本書で紹介するTPチャートを作成するワークショップが,学問領域や職位を問わず,また,小学校や中学,高校,大学に至るまで多様な学校種の先生方が互いに共有し合いながら行われるところにも表れています。したがって,他の学問領域において教育に従事されている高等教育機関や初等中等教育の先生方にも,TPチャートの理解や作成,あるいは活用について知りたいときに役立つ書になると考えています。

本書の構成と使い方
 本書は,3部構成となっています。知りたい内容に応じてどこから読んでいただいてもかまいません。大まかにいえば,TPチャート自体について知りたい場合は第1部,作成について具体的に知りたい場合は第2部,TPチャートではなくティーチング・ポートフォリオ(TP)について知りたい場合は第3部から開いてみてください。また,巻末には参考文献および参考となるWeb サイトを所収しています。

 以下,各部をより詳しく解説します。
 第1部は,TPチャートそのものについての理解を目的としています。第1章では,TPチャートの成り立ちや,作成の意義・活用を基本構成とともに説明しています。また,作成の際には他者との対話がとても有意義であり,理念を深めるメンタリングに通ずることから,この対話の意義や具体的方法について第2章で取り上げています。
 第2部は,TPチャートを実際に作成するときに読んでもらいたいパートです。まず,具体的な作成方法について第1章で順序を追って説明しています。ここには目安の時間や注意事項も書かれているので,ページをめくりながら一歩一歩TPチャートを作成していくことができます。また,第2章は,一度作成したTPチャートを見直す方法について説明しています。具体的には,特に【理念】と【方針】に注目し5つの質問を使って,自問自答や他者との対話を通して,TPチャートをブラッシュアップする方法を示しています。
 第3章には,実際にさまざまな専門領域の看護教員によって作成されたTPチャートの実例を所収し,第4章は,実際にTPチャートを用いて理念を深めるメンタリングの対話録です。TPチャートを用いた対話でより深い教育理念に到達する様子を知ることができます。
 第3部は,TPチャートのおおもとであるTP について知っていただくことを目的としています。ここでTP チャートとの比較をしながらその基本構成や特徴,活用について説明しています。
 また,本書にはTPチャートを作成する各ステップなどについて,解説する動画があります。動画のある箇所にはそのマークがついています。これらもぜひ参考にしてみてください。

 皆さんもTPチャートについて「学ぶ」だけでなく,作成をして,自分をじっくりと振り返っていただければと思います。TPチャートの作成が,ご自身の教育者としての価値をあらためて確かめ,新しい一歩を踏み出す一助となれば幸いです。

 2021年1月
 栗田佳代子・吉田塁

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はじめに

第1部 TPチャートを理解する
 第1章 TPチャートについて知る
  TPチャートは,教育活動を可視化しリフレクションを促す
  TPチャートには多様な活用方法がある
  TPチャートを更新することで,継続的なリフレクションが促される
 第2章 メンタリングについて知る
  メンタリングによって,よいリフレクションができる
  メンタリングで話を聴くときには,気をつけることがある

第2部 TPチャートを作成する
 第1章 TPチャートを実際に作成する
  TPチャート作成のための準備をする
  TPチャートに取り組む
  デジタル版のTPチャートの作成
 第2章 TPチャートを見直す
  TPチャートを見直すことの意義を知る
  TPチャートを見直す方法を知る
  実際にTPチャートを見直す
  TPチャートの組織への導入
 第3章 TPチャートの実例を知る
  TPチャート作成ワークショップについて知る
  事例1 A先生のTPチャート(資料1)
  事例2 B先生のTPチャート(資料2)
  事例3 C先生のTPチャート(資料3)
  事例4 D先生のTPチャート(資料4)
 第4章 TPチャート作成に関する座談会を通して,メンタリングの実際を知る
  「TPチャート作成の感想」をめぐる座談会
  座談会のまとめ──メンターからの問いかけのポイント

第3部 ティーチング・ポートフォリオ(TP)を理解する
  TPはリフレクションにもとづいた教育活動に関する文書である
  TPは個人でも組織でも活用できる

参考文献
TPに関する参考書籍,関連Webサイトなど
おわりに
索引
著者略歴

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教育に携わる人が,自らの教育を見える形で振り返るために
書評者:佐々木 幾美(日本赤十字看護大教授・看護教育学)

 2008年に出された中央教育審議会の答申で,研究面だけでなく教育面を重視した教員の業績評価の仕組みとして,ティーチング・ポートフォリオ(以下,TP)の導入が示されてから,これまでさまざまな文献を読んでいた。その意義はよく理解できるものの,実際に取り組むとなると,かなりの時間と労力を要することもわかり,導入にはハードルが高いという印象も強く,もう少し簡便に工夫されたものはないだろうかと考えていた折に,本書を紹介された。ひと言でいえば,非常にわかりやすく,一気に読み進めることができ,やる気にさせる本である。

 第1部では,ティーチング・ポートフォリオ・チャート(以下,TPチャート)の概説と活用方法を紹介している。また,TPチャートの作成では,他者との対話を通して自分の教育活動に関するリフレクションを行うことが重要なので,メンタリングについても最初から紹介されている。

 第2部では,実際にTPチャートを作成したり見直したりする手順が紹介されている。その中で私が注目した特徴の1つは,所要時間が明確に決まっているところである。自分の教育活動について考えるときに,真剣に取り組めば取り組むほど,多くの時間が必要になるだろう。しかし本書では,時間を区切って途中でも次のステップに進むようにと説明されている。完璧でなくても,その後のワークで気付いたことをいつでも追記したり,修正したりできる点が画期的だと思う。さらには,第1部で取り上げられたメンタリングの姿勢は,実際に作成する際に設けられているペアワークや,チャートを見直す中で生かされる。

 本書は,ポイントが絞られていて,心に残りやすい留意点が示されている点も特徴である。中でも私は,他者とTPチャートを見直す際に意識することとして「敬意をもって,忌憚なく,建設的に」というフレーズが「3K」と呼ばれて挙げられていたことが忘れられない。リフレクションにおいて,非常に重要な姿勢であると思う。他者との振り返りの1つとして,メンタリングの実際が座談会形式で紹介されているが,ここでのやりとりは,メンティーとなった森真喜子先生の語りも印象的で,「3K」をもってリフレクションがうまく展開していった状況が再現されている。

 なお,本書には23本のWeb解説動画が用意されている。1本1,2分の短いものだが,それだけでもTPチャートの作り方の理解を助けるものになっている。動画を見れば,ワークのプロセスがアニメーションで映し出されるので,スムーズに理解できる。

 TPチャート作成は,1つひとつのワークの意味が明確で無駄がなく,本当によく考えられた構成になっている。教員だけでなく,実習指導者など臨床で教育を担当する立場の人もリフレクションツールとして活用できるだろう。


よりよい教育活動と自己肯定感の向上をもたらす(雑誌『看護教育』)
評者:林 直子(聖路加国際大学教授)

 本書は、教育学を専門とし教員のポートフォリオ開発ならびに普及に尽力してこられた栗田佳代子氏と、教育工学が専門でオンラインのアクティブラーニングシステムの開発に取り組んでこられた吉田塁氏が、ティーチング・ポートフォリオ・チャートの作成方法について、研修さながらに順を追ってていねいに解説した書である。

 ティーチング・ポートフォリオ(TP)とは、「自身の教育活動全体のリフレクションとその成果物としての教育活動の可視化のために作成される文書」であり、その普及を促す目的で栗田氏が開発したシートがTPチャートである。教育改善ツールとしての長所が認識され、TPチャートを作成し自身の教育のリフレクションを行う研修会が広く開催されている。

 本書は3部構成となっており、TPチャートについての説明、TPチャートの具体的な作成方法、TPの理解、の順に解説されている。実践書でもある本書は、知りたい内容に応じてどこから読んでもよい旨が記されている。そのなかでも、本書の主目的であるTPチャートの具体的な作成方法については、項目ごとに実例を挙げながらていねいに解説されている。

 このチャートのユニークなところは、用紙の上部に「基本情報」と「作成目的」を記載したら、用紙の下部に設定された「改善・努力」「成果・評価」を記載し、要所でペアワークを取り入れつつ、用紙の中ほどに位置する「方法」「方針」と書き進め、さらに上部にある「理念」の記入へと書き上げていくという構造である。これにより、具体的に実施した教育活動と、改善・努力したこと、そしてその成果がどのような教育方針、教育理念に拠って立っているのかといった、自身の思考が可視化される。

 記載にあたり、使用する付せんの種類や色の使い分け、作成の所要時間と手順なども細かく指定されているが、作業を進めるにつれ、これらが単にマニュアル的ガイドではなく、個々の作業が思考の整理と自身の教育理念の気づきへと導く、緻密に仕組まれた工程であることを認識する。

 TPチャート作成の過程は、筆者によるWeb解説動画付きで、電子媒体でもシートを作成できるよう、ダウンロード可能になっている。また、後半には「メンタリングの実際を知る」と題して、座談会形式で栗田先生・吉田先生をメンターとしたメンタリングの場面が紹介されている。個人的には、メンター、メンティー双方の深い洞察にも感銘を受け、この章だけをみても、きわめて価値ある書と感じた。

 よりよい教育活動と自己肯定感の向上をもたらすTPチャートの作成を、看護教育に携わるすべての人に勧めたい。

(『看護教育』2021年7月号より)

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