APA論文作成マニュアル 第3版
論文作成にかかわる全ての人に必携。待望の最新版。
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APA論文作成マニュアルは、心理学のみならず、看護学でも広く使われる論文作成のスタンダードの1つである。前版より大きくアップデートされた本版では、論文の構成・書式から、文法知識、偏見のない文章表現、引用文献と内容は多岐にわたり、APA方式にかかわらず、論文そのものを作成するための基本が詰まっている。論文作成に携わる全分野の人の傍らで、きっと役に立つに違いない必携のマニュアルである。
著 | アメリカ心理学会(APA) |
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訳 | 前田 樹海 / 江藤 裕之 |
発行 | 2023年02月判型:B5頁:472 |
ISBN | 978-4-260-04812-5 |
定価 | 4,620円 (本体4,200円+税) |
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序文
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謝辞/はじめに
謝辞
1929年,Psychological Bulletin誌に7ページの記事が掲載された.それは「例外を認めつつも,迷ったときに参照することができる,論文執筆のための標準的な手順」(Bentley et al., 1929, p.57)について書かれたもので,これが,のちにPublication Manual of the American Psychological Association(以下,APAマニュアル)へと発展する.それ以来,社会科学,行動科学,ヘルスケア,自然科学,人文学など,さまざまな領域の研究者,学生,教育者のニーズに応えるべく,APAマニュアルのカバーする範囲は広がり,ページ数は増え,質量ともに大きな変化があった.しかし,先駆者たちが意図した精神は,今もなお,APAマニュアルのなかに変わることなく生きている.
前版(第6版)が発行されてから,学術論文の執筆や出版を取り巻く環境は大きく変わってきた.その変化に対応するために,私たちは多くの専門集団,そして個々の専門家に助言を求めた(編集スタッフ/協力者一覧に氏名を記載している).まず,APAマニュアル改訂タスクフォースのメンバーに謝意を申し上げたい.彼らは,本書について明確なヴィジョンをもち,私たちの方針が実際の成功事例を反映していることを確かなものにしてくれた.ジャーナル論文の報告基準(JARS)に関しては,量的研究の報告基準,および質的研究の報告基準の増補改訂を担当した2つの作業部会のメンバーに感謝したい.量的研究の報告基準の内容が更新されただけでなく,今回,質的研究とミックスメソッド(ミックス法,混合研究法)研究のAPAスタイルの報告基準が新たに付け加えられるという画期的な作業が行われた.また,年齢,障害,人種・民族,性的指向とジェンダーの多様性,そして社会経済的地位に関する偏見のない文章表現のガイドラインの改訂には,APA公益部門委員会,および各種支援グループのメンバーが大きな貢献を果たした.さらに,心理学,看護,教育,ビジネス,ソーシャルワーク,倫理,ライティング指導の第一人者としての立場と経験から,本書の改訂に貴重な視点を示してくれた方々にも感謝したい.
こういった,APAマニュアル改訂タスクフォース,JARS作業部会,偏見のない文章表現のためのAPAガイドライン作成委員会をはじめとする専門グループのメンバーによる重要な作業は,先人による努力の成果のうえに成り立っている.それゆえ,これ以前のAPAマニュアルの改訂作業に従事したタスクフォース,作業部会,そしてAPAスタッフの多大な貢献にも感謝の意を表したい.
さらに,米国老年医学会のNancy Lundebjerg とDan Trucilには,高齢者について尊敬と尊厳の念をもって書くことの指導をしていただいた.人種と民族のセクションでは,マサチューセッツ大学ボストン校のKaren Suyemotoより協力をいただいた.性的指向,ジェンダー,障害については,米国の人権団体であるヒューマン・ライツ・キャンペーンのJay Brown,Katalina Hadfield,Ellen Kahn,Sula Malinaに改訂版の原稿を読んでもらい,深い洞察に富んだアドバイスを得ることができた.性的指向とジェンダーの多様性を担当するAPAの第44部会のメンバーであるlore m. dickey,Mira Krishnan,Anneliese A. Singhは,性的指向とジェンダーの多様性に関するセクションの改訂に際して貴重な専門的知識を提供してくれた.ケンタッキー大学医学部のWilliam W. Stoopsからは,薬物使用に関する言語表現についていくつかの提案をいただいた.これらの専門家たちは,自らの経験に基づく知恵とそれぞれのコミュニティに対する熱い思いを分かち合うことによって,私たちが文章を書くときに,研究に協力してくれた人々への尊敬の念と,その文化の多様性を忘れないようにすることを教えてくれた.
今回の改訂で,APAマニュアルは以前の版よりもずいぶんと利用しやすくなった.それは,デヴィッド・バーマン・コミュニケーションズのスタッフ,特に,David Berman,Michael E. Cooper,Hannah Langford Berman,Krisandra Ivingsらの,熱心で,詳細かつ思慮深い貢献によるところが大きい.本書を利用するすべての読者がより使いやすくなるように,フォント,見出し,参照スタイル,色のコントラストなど,私たちが改良しようとしていた点をさらによいものにしてくれた.
図と表に関しては,調査・実験結果の提示方法についてAdelheid A. M. Nicol とPenny M. Pexmanの助言に感謝する.また,Gilad Chen,Anne M. Galletta,Roger Giner-Sorolla,Kevin Grimm,Lisa L. Harlow,Wendy Rogers,Nadine Michele Weidmanから,出版とは何か考えることを教わった.オープンサイエンスと方法論の部門長であるSteve W. J. Kozlowskiには,再現研究と出版の倫理について専門的立場からの意見をいただいた.法律関係資料の引用に関する貴重な専門知識については,ドレクセル大学のDavid DeMatteoとKirk Heilbrunにお世話になった.
上記のほかにも,さまざまな意見や専門的知見を寄せてくれた多くのAPAスタッフ,そしてコンサルタントの方々に感謝したい.これらスタッフの所属は,APAの出版部門,教育部門,管理部門,ITサービス,法務顧問室,公益部門,科学研究部門の多岐にわたっており,ここにその名前を記しておく.Joe Albrecht, Emma All, Kimmone Allen, Ida Audeh, David Becker, Cara Bevington, Martha Boenau, Marla Bonner, Liz Brace, Dan Brachtesende, Dan Brown, Ann Butler, Kerry Cahill, Brenda Carter, Lindsay Childress-Beatty, Alison Cody, Lyndsey Curtis, Chris Detzi, Katie Einhorn, Andy Elkington, Kristine Enderle, Elise Frasier, Rob Fredley, Dana Gittings, Hannah Greenbaum, Mara Greengrass, Rachel Hamilton, Sue Harris, Beth Hatch, Annie Hill, Sue Houston, Shelby Jenkins, Robert Johnson, Lois Jones, Vanessa Jones, Shontay Kincaid, Kristen Knight, Kristin Walker Kniss, Marla Koenigsknecht, David Kofalt, George Kowal, J.J. Larrea, Stefanie Lazer, Katy Lenz, Glynne Leonard, Kathryn Hyde Loomis, Tim Meagher, Jennifer Meidinger, Claire Merenda, Necco McKinley, Clinton Moore, Debra Naylor, David Nygren, Sangeeta Panicker, Amy Pearson, Steph Pollock, Lee Rennie, Natalie Robinson, Kathleen Sheedy, Jasper Simons, Rose Sokol-Chang, Ann Springer, Elizabeth Stern, Amber Story, Daniya Tamendarova, Nina Tandon, Ron Teeter, Karen Thomas, Jenna Vaccaro, Purvi Vashee, Chi Wang, Jason Wells, Sarah Wiederkehr, Angel Williams, Kimberly Williams, Aaron Wood, Sherry Wynn.
最後に,電子メール,アンケート調査,インタビュー,フォーカスグループ,SNSを通して,多くの読者からご意見をいただいたことに感謝の意を表したい.APAスタイルのどういった点が参考になり,さらに求められている点は何かについて,利用者の深い考えを知ることは,APAマニュアルの改訂作業を進めていくうえで何にも代えがたいものとなった.
はじめに
優れた文章作成能力──これは,研究や教育,そして高度の専門性を必要とする仕事で成功するにはきわめて重要である.APAスタイルは,明快で正確な学術論文を執筆するためのガイドラインであり,経験のあるなしにかかわらず,この能力を身につけることができるように著者を支援するものである.心理学は言うまでもなく,看護,福祉,コミュニケーション,教育,ビジネス,エンジニアリングなど,さまざまな研究領域で,ジャーナルに投稿するための論文作成から,学生の課題論文や学位論文の執筆に世界中で何百万もの人々に使われている.本書『APA論文作成マニュアル』は,APAスタイルについて最も信頼のおける教本であり,ここに最新版(原書第7版)をお届けできることを誇りに思っている.
なぜ,APAスタイルなのか?
APAスタイルは,学術論文を効果的に書くための基礎となる知識とスキルを与えてくれる.APAスタイルに従って文章を書くことで,著者は自分の主張を,簡潔明快に,そして,全体的に整った形で表現することができるようになる.文章が,統一された文体,そして一貫性のある様式で書かれていれば,読者は論文の形式面を気にせず,そこで展開されている内容に意識を集中でき,また重要なポイント,実験や調査結果からの発見,参考資料の出典を素早く読みとることができる.スタイル(文体)のガイドラインに沿って文章を書くことで,著者は必要な情報を完全に伝えることができ,読者は句読点,大文字使用,文献の引用,統計の表示の方法に一貫性が欠けていたり,ミスがあるといった,論文の内容とは関係のない細かな形式面に煩わされることがなくなる.
理想的なスタイルで文章を書くことができれば,主張は論理的に展開され,引用文献の出典は適切に記載され,論文全体が記述内容に矛盾のない,一貫性のある構成となる.また,研究参加者をはじめ,論文に記述される人々は,その価値と尊厳を重んじる言葉で表現される.著者は倫理を遵守する計画を立て,研究の手順の重要な点を詳細に伝えることで,読者は研究結果を評価し,ほかの研究者はその研究を再現することができる.図や表の提示は,読者を引き付ける一貫した方法でなされている.
APAスタイルを一度の授業のなかだけで使うにしても,あるいは,研究者としてのキャリアを通して長期にわたって使うにしても,誠実な態度で文章を書くことがいかに大切であるかをしっかりと認識してほしい.このガイドラインの内容は多岐にわたっており,習得には時間と訓練が必要になる.しかし,このガイドラインを実践することで,学術的な文章を書くときに,規則を守りながらも,柔軟に対応できるバランス感覚を身につけ,いずれはこういったガイドラインを自然に使いこなせるようになることを願っている.
学生の皆さんへ
本マニュアルは,これまで長い間,学術的な文章を書くための権威ある教本として研究者を主な対象としてきたが,このたびの改訂では,学生の読者を視野に入れた文章作成のガイダンスとサポートも提供している.将来,どのようなキャリアに進むにしても,批判的な思考力を養い,正確で明快な文章表現を磨くために,学術的な文章作成のノウハウを習得することはすべての学生にとって有益なことであると考える.
本書に示すガイドラインのほとんどの内容は,学生が書くレポートや課題論文と研究者が書く学術論文の両方に適用することができる.それ以外にも,本書には,学生論文のタイトルページ,授業やイントラネットの情報源を引用する際の手引き,また,文献解題,レスポンスペーパー,修士論文,博士論文などの一般的なタイプの学生論文の説明など,特に学生の使用に配慮した内容も含まれている.ジャーナル論文の報告基準(Journal article reporting standards:JARS)は,ジャーナルに投稿する論文原稿を書く著者を主な対象にしているが,学生でも,高度な研究プロジェクトを遂行する際に役立つものと思われる.
実用性と利用のしやすさ
今回の改訂では,読者の利便性を常に考慮しながら作業を行った.各項目は,各章ごとに番号付きのセクションからなり,読者が求めている情報がすぐにみつけられるように構成されている.このように,使い勝手をよくし,情報量を増やしたことで,本書は,学術的な文章作成の参考書としても,教科書としても使うことができる.
この改訂版では,障害をもつ読者を含め,すべての人が利用しやすい環境が提供できることを推進している.専門家と協議して,スクリーンリーダーなどの支援技術を含むさまざまな方法で,APAスタイルの著作物の読み書きをするときに,確実にサポートできるようなガイドラインを策定した.たとえば,本文中の引用は,書くときにも読むときにも負担をかけないように,よく工夫されたフォーマットを採用している.また,障害のある人がウェブコンテンツにアクセスできる方法を示したガイドラインであるWeb Content Accessibility Guidelines(Web Accessibility Initiative, 2018)に従い,図に十分な色のコントラストを用いる方法についての手引きを提供している.さらに,よく使用されるワープロソフトにあるさまざまなフォントやデフォルト設定での使用をサポートしており,APAスタイルで文章を書く際に,ワープロソフトの設定を調整する必要が少なくなってきている.私たちが目指すものは,何にもまして,人々がお互いの考えを伝え合う多くの方法を支援することである.私たちは,著者の1人ひとりが,執筆の対象となる人々や,その論文から恩恵を受ける読者に対して誠実であり,そして,敬意を払うようにあってほしいと考えている.
本改訂版における新機軸
それでは,以下,本改訂版での新しい内容および改訂された内容について,章ごとに簡単に説明する.変更内容に関するより包括的な情報は,APAスタイルのウェブサイト(https://apastyle.apa.org)を参照.
第1章:学術論文の執筆と出版の基礎知識
第1 章は,論文の種類と研究倫理の遵守について説明している.
・量的研究法,質的研究法,ミックスメソッド(ミックス法,混合研究法)の論文,および学生の課題エッセイ,学位論文に関する新たな指針を示した.
・研究倫理遵守の計画と確保に関する情報は,成功事例を反映した.
・質的研究を含むデータ共有に関する指針は,Open Practiceの基準を反映した.
第2章:論文原稿の構成と書式
第2章は,APAスタイルに慣れていない読者のために,論文の各項目の必要事項,書式,構成についてまとめている.
・ジャーナルに投稿する論文のタイトルページの内容を更新し,学生の課題エッセイなどに掲載するタイトルページについての説明を加えた.
・タイトルページにある著者の氏名欄(バイライン)と所属先の書式について更新した.
・著者注には,研究者識別子(ORCID iD),利益相反の有無の開示,研究登録情報などの情報を追加した.
・ランニングヘッドの書式を簡略化し,学生の課題エッセイなどにはランニングヘッドは必要なしとした.
・APAスタイルで使用するフォントは,より柔軟に考えて,誰もが利用しやすい書体にした.
・論文の読みやすさと,ワープロソフトの見出しスタイル機能を使用する著者の利便性を向上させるために,レベル3,4,5の見出しの形式を刷新した.
・ジャーナル投稿用と学生の課題提出用の2種類の論文フォーマットについてサンプルを掲載し,個々の要素がどのように表示されるかラベルを付して説明した.
第3章:ジャーナル論文の報告基準(JARS)
第3章は,ジャーナル論文の報告基準を紹介し,量的研究,質的研究,ミックスメソッドによる研究の報告基準の概要を一覧表で示している.
・量的研究の報告基準が大幅に拡張,更新された(Appelbaum et al., 2018; Cooper, 2018参照).
・今回の改訂で,新しく質的研究,およびミックスメソッドによる研究の報告基準が加えられた(Levitt, 2019; Levitt et al., 2018参照).
第4章:文章スタイルと文法の知識
第4章は,文章のスタイルと文法についての手引きを示している.
・総称的な三人称単数の人称代名詞として「単数のthey」の使用を支持した.
・文章表現の擬人化を避けるためのより詳細な指針を示した.
第5章:偏見のない文章表現のガイドライン
第5章では,偏見のない文章表現のガイドラインを示し,人種,性別,障害などにかかわらずすべての人々を表現する際に,敬意をもって受け入れようとする態度で書くことを奨励している.
・年齢,障害,ジェンダー,人種的・民族的アイデンティティ,性的指向について,既存の指針は成功事例を反映するために更新された.
・研究への参加・協力,社会経済的地位,インターセクショナリティ(交差性)をカバーする新たな指針が提供された.
第6章:論文スタイルの技巧
第6章では,句読点,大文字使用,略語,数字,本文中の統計など,論文執筆に必要な表現上のスタイルについて説明している.
・よく聞かれる質問について,解答を「文末のピリオドの後には,出版社や指導教員からの指示がなければ,半角英数字1文字分のみのスペースをいれる」に更新した.
・読者によりわかりやすくするために,文字,単語,句,文を言葉の用例として,もしくは言葉そのものとして指す場合に,イタリック体の使用から,二重引用符を使用へ変更した.
・大文字使用について,固有名詞,役職名,病気や障害などの表記に関する内容を拡げて説明した.
・略語を引用文献表記に含める際の書式など,略語の表示についてよくある質問に対応した.
・数の表示に関して,論文内での一貫性を重視したガイドラインを更新した(例:アブストラクトでの数の表示方法の例外をなくした).
・遺伝子およびタンパク質の名称を記載する新しい方法を定めた.
・リスト表記のガイドラインを更新し,文字記号,数字,中黒記号についてこれまで以上に柔軟な使用ができるようにした.
第7章:表と図
第7章では,図表作成の指針を示している.
・40以上の新しい図表のサンプルを示して,さまざまな研究種やテーマをカバーした.
・文中での図表の提示をより柔軟にした(引用文献リストの後に別ページにしても,文中に埋め込んでもよいこととした).
・図表番号,タイトル,注において一貫したスタイルをもたせるなど,図表の書式を一致させた.
・すべての読者が見分けられる図中でのカラーの使用について説明した.
第8章:本文中にクレジットされた文献
第8章では,適切な引用のレベル,剽窃,自己剽窃,その他の非倫理的な執筆行為について説明している.
・文中引用を簡略化した.3人以上の著者の文献の文中引用は,筆頭著者+et al.で記載できることとした(曖昧にならない限り).
・記録されている,あるいは記録されていない先住民の伝統的知識または口承の引用方法について新たな指針を提供した.
・パラフレーズ引用の例では,過剰引用することなく明快にクレジットを与える方法を示した.
・研究参加者の発言を引用する場合の表記方法について新たな指針を示した.
第9章:引用文献リスト
第9章では,引用文献の4要素(著者,日付,タイトル,出典)について説明している.
・引用文献リストの書誌情報に載せる著者の数が変更になった.20名までは名前を載せ,それ以上は省略記号を用いて省略する.
・ディジタルオブジェクト識別子(DOI)とURLの表示方法を標準化した.いずれもハイパーリンクとして示す.“DOI:”というラベルは不要となった.“Retrieved from”は検索日が必要な場合のみ表記する.
・多くの学術研究データベースや,ERICあるいはUpToDateのような独自のデータベースで検索した文献に,どのような場合にDOIやURLを記載するかどうかの解説を更新した.
・文献解題のフォーマットについて新たな指針を示した.
第10章:引用文献の例
第10章では,100以上のAPAスタイルの引用文献リストの書誌情報の記載例を示している.それぞれの例について文中引用におけるカッコ引用とナラティブ引用を提示している.
・引用文献のカテゴリーごとにテンプレートを示した.
・引用文献を合理化した.例えば,ジャーナル論文の引用文献リストの書誌情報には常に号数を記載し,書籍の場合は出版社の所在地を省略することとした.
・視聴覚メディアに関する説明を拡充し,YouTube動画,PowerPointのスライドや講義ノート,TEDトーク,などの新しい例を追加した.
・ソーシャルメディア,ウェブページ,ウェブサイトは新たなカテゴリーとして位置づけた.一貫性とフォーマットの簡便さのために,ブログやオンライン刊行物は,定期刊行物のカテゴリーに含めた.
第11章:法律関係資料の引用
第11章では,法律関係資料の引用方法について,前版までの内容を拡大・更新して説明している.
・これまで通り,ブルーブック(The Bluebook:A Uniform System of Citation)のガイドラインがAPAスタイルの法律関係資料の引用法の基礎となっている.一部,多少の修正を施した.
・APAスタイルの論文でよく引用される法律(例:すべての生徒が成功する法)を示した.
第12章:学術論文出版のプロセス
第12章では,学術論文を出版するまでのプロセスに関する説明がなされている.
・論文出版の経験の浅い研究者のために,学位論文のジャーナルへの投稿,投稿先のジャーナルの選定,危険な出版社の回避,論文原稿の投稿までのプロセスに関する新たな内容を加えた.
・学術論文出版のプロセスに関する指針を更新し,投稿原稿を準備する際に著者が注意すべき最新の手順や指針を示した.
・論文の出版後に,著者がその論文を共有し,宣伝する方法に関する新しい指針を示した.
オンラインアクセスできるAPAスタイル,および関連情報
APAスタイルはオンライン上でも公開されているが,公式ウェブサイト(https://apastyle.apa.org)が最も信頼のおける情報を提供している.さまざまな参考資料や補助教材に無料でアクセスできるだけでなく,追加の参考例,サンプル論文,図を効果的に見やすくする配色の手引きなど,本書を通して参照される補足的な内容を提供している.
ジャーナル論文の報告基準ウェブサイト(https://apastyle.apa.org/jars)では,広範囲にわたる研究デザインの対応するジャーナル論文の報告基準に関する情報をすべて提供しており,本書第3章で示した報告基準を補完する内容に無料でアクセスできる.
APAスタイルブログ(https://apastyle.apa.org/blog)や関連するSNSアカウントを利用して,今後とも,本改訂版の出版に伴う読者の質問にAPAスタイルチームのメンバーが責任をもって回答し,読者からの意見や提案を共有していく.
APAでは,効果的な学術的な文章作成指導,および学習のためのクラウドベースのAcademic Writer(https://digitallearning.apa.org/academic-writer)を提供している.APAスタイルチームの作成メンバーによって開発されたこのツールは,ジャーナルに投稿する論文,および学生の課題エッセイや学位論文に対応し,本改訂版のAPAスタイルが利用できるように支援している.
読者の皆さんへ
読者の皆さんが研究を進めていくなかで,あるいは,研究成果の執筆や投稿原稿の出版のプロセスで,数多くの便利な製品やサービスを知り,また実際に利用されることと思う.それがすべてAPAと関係があるわけではないが,本書では,そういった製品やサービスについて触れている.本書で言及している商標は,それぞれの製品やサービスの所有者に帰属しており,読者の参考になるように情報の提供は行う.しかし,APAとそれらの製品やサービスの所有者との間でのなんらかの提携があるわけでなく,また,そういった商品を推薦する意図はない.
最後に次のことを述べておきたい.本書の中でAPAスタイルが適用されていない箇所がある,それはなぜか? といった指摘を鋭い観察眼をもった読者からいただくことがある.本書は出版物であり,その一方で,APAスタイルのガイドラインは,あくまでもジャーナルに投稿する原稿,そして,学生の課題エッセイや学位論文に適用されることを意図して作られている.本書のような出版物では,ジャーナルへの投稿原稿や学生の課題エッセイや論文とは異なる点(例:活字組み,行間,長さ,フォント,色の使用,余白)への配慮が必要となり,APAスタイルの書式が使えないこともある.また,本書は学術的な文章作成についての教本であることから,フォントや色などのデザインで説明文と例文を分けて示す必要がある.しかしながら,APAスタイルについて書いているところは,それを示すことができるように可能な限りAPAスタイルを実践しながら執筆し,世界中の多くの読者がアクセスしやすい方法で情報を提供するように努力した.
目次
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謝辞
はじめに
編集スタッフ/協力者一覧
第1章 学術論文の執筆と出版の基礎知識
論文の種類
論文発表の倫理基準,法的基準,および専門職としての職業基準
科学的知見の正確さの保証
研究参加者,および被験者の権利と福祉の保護
知的財産権の保護
第2章 論文原稿の構成と書式
論文に必要な項目
論文を構成する各項目
書式
論文の構成
第3章 ジャーナル論文の報告基準
報告基準の概要
研究デザインを超えた共通の報告基準
量的研究の報告基準
質的研究の報告基準
ミックスメソッドの報告基準
第4章 文章スタイルと文法の知識
効果的な学術論文執筆方法
連続性と流れ
簡潔さと明快さ
文法と語法
動詞
代名詞
文の構造
論文の文章をよりよくする方法
第5章 偏見のない文章表現のガイドライン
偏見のない文章表現のための一般的ガイドライン
偏見のない文章表現のための項目別ガイドライン
第6章 論文スタイルの技巧
句読点
綴り
大文字使用
イタリック体
略語
数字
統計的・数学的な原稿
方程式の表示
リスト
第7章 表と図
図表の一般的なガイドライン
表
図
第8章 本文中にクレジットされた文献
引用に関する一般的なガイドライン
引用に特別なアプローチを要する作品
本文中の引用
パラフレーズ引用と直接引用
第9章 引用文献リスト
引用文献のカテゴリー
引用文献リスト入力の原則
文献リストの要素(書誌情報の要素)
著者
日付
タイトル
出典
さまざまな引用
引用文献リストのフォーマットと並べ方
第10章 引用文献の例
著者のバリエーション
日付のバリエーション
タイトルのバリエーション
出典のバリエーション
テキスト作品
データセット,ソフトウェア,およびテスト
視聴覚メディア
オンラインメディア
第11章 法律関係資料の引用
法律関係資料の引用の一般的ガイドライン
法律関係資料の引用例
第12章 学術論文出版のプロセス
論文出版の準備
出版までのプロセスを知る
投稿原稿の準備
著作権と著作物利用許諾手続きのガイドライン
出版プロセス中と出版後の作業
図表とサンプル論文の出典
訳者あとがき
索引
文献
訳者略歴