高次脳機能障害学 第3版

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第3版では「言語聴覚士養成教育ガイドライン」に基づき,高次脳機能障害に関する基本的知識,重要な理論・技術を網羅しています。また「高次脳機能障害のリハビリテーションにおける言語聴覚士の役割」「認知コミュニケーション」の解説を新設しました。最新の研究から得られた知見も盛り込み、臨床家や研究者にも有用。第一線の執筆陣による充実の改訂版です。

*「標準言語聴覚障害学」は株式会社医学書院の登録商標です。

シリーズ 標準言語聴覚障害学
シリーズ監修 藤田 郁代
編集 阿部 晶子 / 吉村 貴子
発行 2021年01月判型:B5頁:352
ISBN 978-4-260-04306-9
定価 5,280円 (本体4,800円+税)

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    2021.11.22

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「言語聴覚士養成教育ガイドライン」に基づいて,高次脳機能障害に関する基本的知識,重要な理論・技術を網羅しています。第3版では,学生が高次脳機能障害学を学ぶための導入として,「高次脳機能障害のリハビリテーションにおける言語聴覚士の役割」を新設しました。高次脳機能そのものの障害,活動制限,参加制約に働きかけることと併せて,高次脳機能障害によって起こるコミュニケーション障害に対するアプローチの必要性を述べています。

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第3版の序

 高次脳機能障害は,脳損傷に起因する言語,行為,認知,記憶,注意,判断,遂行機能,社会的認知,行動などの高次の精神活動の障害である.高次脳機能障害は,障害の種類や程度が同じでも,患者の生活様式や障害のとらえ方によって,対応すべき問題が異なることが多く,個別性が高い.高次脳機能障害のリハビリテーションは,それぞれの病態を正しく評価・診断し,質の高い生活を目指すための訓練や各種の支援を行うことが求められる.
 本書は,2009年に初版が刊行された標準言語聴覚障害学シリーズ『高次脳機能障害学』の第3版である.2015年に改訂された第2版の刊行から6年が経過し,このたび第3版として大幅な改訂を行った.第3版の刊行にあたっては,言語聴覚士を目指す学生がテキストとして使用できるよう,2018年に日本言語聴覚士協会によって作成された「言語聴覚士養成教育ガイドライン」に基づいて,高次脳機能障害に関する基本的知識,重要な理論・技術を網羅することを目指した.さらに,初学者だけでなく,新しい知識を得たいと考える臨床家や研究者のために,最新の研究から得られた知見も学ぶことができるようにした.
 第3版では,第1章に「高次脳機能障害のリハビリテーションにおける言語聴覚士の役割」の節を設け,高次脳機能そのものの障害,活動制限,参加制約に働きかけることと併せて,高次脳機能障害によって起こるコミュニケーション障害に対するアプローチの必要性を述べた.また,新たに,「認知コミュニケーション障害」の章(第13章)を設け,脳外傷や認知症,筋萎縮性側索硬化症,パーキンソン病などにおける各種症状がコミュニケーションに与える影響について詳しく解説した.その他,今回の改訂では,理論から臨床への応用を念頭におき,事例を適宜示した.
 初版,第2版と同様,第3版の執筆者も高次脳機能障害のリハビリテーションの第一人者の先生方である.医師,作業療法士の先生方が,言語聴覚士の先生方とともに,研究や臨床の裏づけをもつ貴重な内容をご執筆くださった.本書が高次脳機能障害のリハビリテーションの発展に貢献することを願っている.
 最後に,ご執筆いただいた先生方に,心からの御礼を申し上げる.また,医学書院編集部の方々には,多大なるご支援,ご協力をいただいた.ここに深謝申しあげる.

 2020年9月
 編集
  阿部晶子
  吉村貴子

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第1章 総論
 1 高次脳機能障害とは
  A 日常生活・社会生活を支える高次脳機能
  B 高次脳機能障害とは
  C 高次脳機能障害の主要症状と背景症状
 2 脳と高次機能
  A 脳という「形」,生ける脳の「活動」,立ち現れる「こころ」
  B 脳の形――機能を支える構造
  C 高次脳機能と画像診断
  D 高次脳機能障害の原因疾患
 3 神経心理学的な考え方
 4 高次脳機能障害のリハビリテーションにおける言語聴覚士の役割
  A 高次脳機能障害のリハビリテーションの流れ
  B 高次脳機能障害のリハビリテーションにおける言語聴覚士の役割

第2章 視覚認知の障害
 1 視知覚と視覚認知
  A 知覚と認知
  B 視覚伝導路(網膜から一次視覚皮質までの情報伝達)
  C 一次視覚皮質以降の視覚情報処理
 2 視知覚障害
  A 皮質盲
  B 大脳性色覚障害
  C 幻視と錯視
 3 視覚認知障害
  A 視覚性失認
  B 視覚性失語
  C 相貌失認
  D 色彩失認
 4 視覚性認知障害の評価とリハビリテーション
  A 皮質盲
  B 大脳性色覚障害
  C 幻視・錯視
  D 視覚性失認
  E 相貌失認
  F 色彩失認
 5 視覚性失認の事例

第3章 視空間障害
 1 視空間認知
 2 半側空間無視
  A 基本概念
  B 症状
  C 責任病巣と発症メカニズム
  D 評価・診断
  E リハビリテーション
 3 地誌的見当識障害
  A 街並失認
  B 道順障害
  C 自己中心的地誌的見当識障害
  D 前向性地誌的見当識障害
  E 評価・診断
  F リハビリテーション
 4 バリント症候群
  A 基本概念
  B 症状
  C 責任病巣
  D 評価・診断
  E リハビリテーション
 5 構成障害
  A 基本概念
  B 症状
  C 原因と発症メカニズム
  D 評価・診断
  E リハビリテーション
 6 左半側空間無視の事例

第4章 聴覚認知の障害
 1 聴覚の情報処理過程:聴覚伝導路と聴覚認知
 2 聴覚認知障害
  A 皮質聾
  B 聴覚性失認(広義)
  C 狭義の聴覚性失認
  D 純粋語聾
  E 失音楽症
 3 聴覚性失認の評価とリハビリテーション
  A 聴覚性失認の評価
  B 聴覚性失認例に対するリハビリテーション
 4 聴覚性失認の事例

第5章 触覚認知の障害
 1 触覚の情報処理過程:体性感覚と触覚認知
 2 触覚性失認
  A 基本概念
  B 触覚性失認の分類
  C 症状
  D 病巣と発症メカニズム
  E 触覚性失語
 3 触覚性認知障害の評価
  A 要素的感覚の検査
  B 複合感覚の検査
  C 素材弁別の検査
  D 形態弁別の検査
  E 物品認知の検査
 4 リハビリテーション

第6章 身体意識・病態認知の障害
 1 身体図式
 2 ゲルストマン症候群
  A 原因
  B 責任病巣
  C 発現頻度とメカニズム
  D 症候
  E 鑑別すべき失語症との関連
  F 評価・診断
  G リハビリテーション
 3 病態失認
  A 原因と発症時期
  B 責任病巣
  C 症状
  D 合併症状
  E 評価・診断
  F 発症メカニズム
  G リハビリテーション

第7章 行為・動作の障害
 1 行為・動作の障害と失行
 2 行為・動作理解のための基礎知識
  A 大脳機能全体を維持する機能
  B 各一次感覚野
  C 「言語処理と操作」と「対象認知・空間認知」
  D 行為・動作実現に特化した機能
  E 「左右の一次運動野から全身へ」,「錐体路以外」など
 3 古典的な失行の考え方(リープマンの失行論)
  A 観念性失行のリープマンのとらえ方
  B 観念運動性失行のリープマンのとらえ方
  C 肢節運動失行のリープマンのとらえ方
 4 古典論から脱却して今日の見方へ
  A 古典論からの脱却
  B 今日の見方
 5 失行と失行関連障害の今日のとらえ方
  A 失行以外の行為・動作症状(その1)――一側肢の運動・感覚に関連する障害
  B 失行による行為・動作症状
  C 失行以外の行為・動作症状(その2)
 6 リハビリテーション
  A 一側肢の運動・感覚に関連する障害へのリハビリテーション
  B 古典的失行と呼ばれる症候のリハビリテーション
  C 広義の失行のリハビリテーション
 7 観念性失行の事例

第8章 記憶障害
 1 記憶の基本概念と分類
  A はじめに
  B 記憶の処理過程――3つの過程
  C 記憶の種類と機能
 2 記憶障害の原因疾患と症状
  A 記憶障害の症状
  B 健忘症候群を引き起こす脳部位
  C 原因疾患
  D 記憶障害の種類――病巣による健忘症候群の分類
 3 記憶障害の評価とリハビリテーション
  A 記憶障害の評価の流れ
  B リハビリテーション
 4 記憶障害の事例

第9章 前頭葉と高次脳機能障害
 1 前頭葉の構造と機能
 2 前頭葉損傷による主要な高次脳機能障害
 3 前頭葉機能障害の評価とリハビリテーション
  A 評価・診断
  B リハビリテーション
 4 ワーキングメモリ障害の事例

第10章 脳梁離断症状
 1 脳梁の構造と機能
  A 脳梁とは
  B 大脳機能の側性化と脳梁の役割
 2 脳梁離断症状の原因疾患
 3 脳梁離断症状の分類
  A 左半球優位症状
  B 右半球優位症状
  C 左右半球間連合症状
  D 左右半球間抑制症状
 4 脳梁離断症状の評価
  A 左半球優位症状
  B 右半球優位症状
  C 左右半球間連合症状
  D 左右半球間抑制症状
 5 拮抗失行に対するリハビリテーション

第11章 認知症
 1 正常な加齢と認知症による社会生活水準の低下
  A 認知症を取り巻く背景
  B 生理的な加齢と認知症の違い
  C 認知症と軽度認知障害(MCI)・フレイル
 2 認知症の基本概念と分類
  A 認知症の概要・定義・医学的診断手順
  B 認知症の診断基準
  C 認知症の病型と認知症に間違われやすい病態
  D 認知症でみられる認知機能障害
 3 認知症性疾患の薬物療法と非薬物療法の概要
 4 認知症に対するアプローチの今後の展望
 5 認知症の評価とリハビリテーション
  A 認知症の評価
  B 認知症の評価の流れと情報収集,検査
  C 認知症のリハビリテーション
  D 認知症の事例

第12章 脳外傷による高次脳機能障害
  A 脳外傷とは
  B 脳外傷の病態
  C 症状
  D 評価・診断
  E 訓練・指導・援助

第13章 認知コミュニケーション障害
 1 脳外傷に伴う認知コミュニケーション障害
  A 基本概念と症状
  B 評価
  C リハビリテーション
  D 事例
 2 右半球損傷に伴う認知コミュニケーション障害
  A 基本概念と症状
  B 評価
  C 訓練
  D 事例
 3 認知症によるコミュニケーション障害
  A 基本概念と症状
  B 評価
  C リハビリテーション
  D 事例
 4 筋萎縮性側索硬化症に伴う認知コミュニケーション障害
  A 基本概念
  B 原因と発症メカニズム
  C ALSに伴う高次脳機能障害の症状
  D 評価・診断
  E リハビリテーション
  F 事例
 5 パーキンソン病に伴う認知コミュニケーション障害
  A 基本概念
  B 原因と発症メカニズム
  C パーキンソン病に伴う非運動症状と3つの基底核大脳皮質回路
  D パーキンソン病にみられる情動・認知・行動障害
  E 評価・診断
  F リハビリテーション
  G 事例

参考図書
索引

Note 一覧
 ・Hebbの法則
 ・情報が評価や訓練にもたらす意味
 ・高次脳機能障害と外界との関係性
 ・高次脳機能障害と加齢
 ・アントン症候群
 ・対座法による視野測定
 ・視覚性運動失調 ataxie optique
 ・拡散MRI軸索画像
 ・読話
 ・意図性と自動性の乖離
 ・原始反射
 ・「他人の手徴候」という用語・概念について
 ・記憶の処理水準と脳内処理
 ・一過性全健忘と全生活史健忘
 ・エビングハウスの忘却曲線
 ・ウェルニッケ脳症
 ・短期記憶の限界 Magical Number Seven, Plus or Minus Two
 ・葉性萎縮
 ・Exnerの書字中枢
 ・メタ認知
 ・treatable dementia
 ・FTLDとbvFTD
 ・高次脳機能障害と認知症
 ・感度・特異度
 ・メモリーブック
 ・地域包括ケアシステム
 ・認知症予防と認知予備能
 ・高次脳機能障害診断基準
 ・Griceの会話の公理
 ・命題 proposition
 ・語用論的プロトコル
 ・右半球言語能力検査(RHLB)
 ・心の理論 theory of mind
 ・日本版ALS機能評価スケール(ALS Functional Rating Scale Japanese version;ALSFRS-R Japanese version)
 ・会話明瞭度
 ・類義語判断検査と類音的錯書
 ・意味的線画連合検査(Pyramid and Palm Trees Test)
 ・失語症構文検査

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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    2021.11.22