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上部消化管内視鏡診断アトラス

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消化管領域の臨床研究や診療において、内視鏡は必須のモダリティとなりました。特に、内視鏡診断の領域では白色光による観察のみならず、色素内視鏡、デジタル色素内視鏡、拡大内視鏡、超拡大内視鏡などの画像強調内視鏡検査が日常臨床に広く取り入れられています。そのような状況において、本書は消化管内視鏡診断の醍醐味を若手の先生方に知っていただくことを目標に企画されました。上部編&下部編の2冊を刊行。
編集 長浜 隆司 / 竹内 学
発行 2020年10月判型:A5頁:268
ISBN 978-4-260-04155-3
定価 5,940円 (本体5,400円+税)

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 1950年,宇治達郎博士が世界で初めて胃カメラを完成させてから早70年が経過しようとしています.この間わが国の早期癌を中心とした形態診断学は,X線所見,内視鏡所見,切除標本,病理組織の詳細な対比を行うことでその確固たる診断学を確立しました.消化管の形態診断学は,病変の形態,所見を類型化し,その法則性から理論化し,その理論をもって病変の成り立ちを解析し診断する学問で,ここに形態診断学の醍醐味と面白さがあります.
 ただし頻度の高い疾患についてはこのような理論が通用するものの,実際に経験することの少ない比較的まれな疾患についてはパターン化が困難であり,またすべての症例を自分自身で経験することは難しいです.そのため,どんな症例でも正確に診断するためには,症例検討会への参加や症例報告などに目を通すことにより経験学習しておく必要があります.経験学習とは自分が実際に経験した事柄から学びを得ることであり,内視鏡所見や肉眼形態から診断が難しいまれな症例に遭遇しても,一度見たり,経験しておくことで診断に行きついたり,鑑別診断として挙げることができます.
 このようななか,本書『内視鏡診断アトラス』は内視鏡医が知っておくべき疾患を幅広く網羅し,特に経験の少ない若い先生方に消化器内視鏡診断の醍醐味と面白さを知っていただき,また比較的まれな疾患についても経験学習ができるように企画されたものです.本書は上部消化管と下部消化管の2冊組になっており,咽喉頭・食道疾患は竹内学先生,胃・十二指腸疾患は私,下部消化管は松本主之先生が編集を担当いたしました.
 執筆の先生方には美麗な写真の提示はもちろんのこと,わが国の消化管診断学をリードしてきた「早期胃癌研究会」や「胃と腸」の理念を踏襲し,できる限り内視鏡所見,切除標本,病理組織学的所見との対比に基づいて症例の解説をしていただくようにお願いしました.また簡単に持ち運びができるようになるべくコンパクトにまとめましたので,日常診療のさまざまな場で先生方の内視鏡診療に有益な情報を与えてくれるアトラスであると自負しています.
 最後に,貴重な症例呈示,ご解説,ご執筆をしてくださった先生方,および本書の企画,出版に全面的に尽力していただいた医学書院の能藤久臣氏,片山智博氏に感謝申し上げます.

 2020年7月
 長浜 隆司

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咽頭
  咽頭扁平上皮癌
  リンパ濾胞
  乳頭腫

食道
 良性疾患
  異所性皮脂腺
  食道壁内偽憩室症
  Zenker憩室
  乳頭腫
  Xanthoma(黄色腫)
  ヘルペス食道炎
  サイトメガロウイルス食道炎
  天疱瘡
  好酸球性食道炎
  薬剤性食道炎,腐食性食道炎
  顆粒細胞腫
 脈管性病変
  海綿状血管腫
  化膿性肉芽腫
 全身性疾患に伴う食道病変
  Crohn病
  Behçet病
  Cowden病
  結核
 Barrett食道
  SSBE/LSBE
  Barrett食道癌
 食道胃接合部
  炎症性ポリープ
  食道胃接合部癌
 腫瘍・腫瘍様病変
  扁平上皮癌(表在隆起型0-I)
  扁平上皮癌(表面隆起型0-IIa)
  扁平上皮癌(表面平坦型0-IIb)
  扁平上皮癌(表面陥凹型0-IIc)
  扁平上皮癌(表在陥凹型0-III)
  類基底細胞癌
  食道癌肉腫
  腺扁平上皮癌
  粘表皮癌
  神経内分泌細胞癌
  食道疣状癌(verrucous carcinoma)
  壁内転移
  転移性食道腫瘍
  食道GIST
  食道悪性リンパ腫
  悪性黒色腫


 炎症(非感染性)
  胃炎の京都分類
  萎縮性胃炎
  鳥肌胃炎
  collagenous gastritis
  好酸球性胃腸炎
  巨大皺襞症
  自己免疫性胃炎
  gastritis cystica polyposa(GCP)
  Crohn病
  胃潰瘍
  Dieulafoy潰瘍
  NSAIDs起因性胃病変
  胃サルコイドーシス
 炎症(感染性)
  サイトメガロウイルス感染症
  胃蜂窩織炎
  胃梅毒
 脈管性病変
  血管拡張症:GAVE,DAVE
 全身性疾患に伴う胃病変
  アミロイドーシス
 腫瘍・腫瘍様病変
  胃ポリープ
  胃腺腫
  進行胃癌
  早期胃癌① 隆起型(0-I)
  早期胃癌② 表面隆起型(0-IIa)
  早期胃癌③ 表面陥凹型(0-IIc)
  胃底腺型胃癌
  胃底腺粘膜型胃癌(腺癌)
  腺窩上皮型胃癌(ラズベリー様の胃癌)
  低異型度分化型腺癌
  Helicobacter pylori除菌後胃癌
  リンパ球浸潤胃癌
  カルチノイド
  異所性膵
  胃血管肉腫様病変
  脂肪腫
  炎症性線維性ポリープ
  形質細胞腫
  GIST,平滑筋腫
  悪性リンパ腫① MALTリンパ腫
  悪性リンパ腫② びまん性大細胞型B細胞リンパ腫/マントル細胞リンパ腫
  転移性胃腫瘍
  家族性大腸腺腫症
  Peutz-Jeghers症候群
  Cronkhite-Canada症候群
  若年性ポリポーシス
  Cowden病

十二指腸
 炎症(感染性)
  Whipple病
  糞線虫症
  ランブル鞭毛虫症
  回虫症
 炎症(非感染性)
  潰瘍性大腸炎
  十二指腸潰瘍
  セリアック病
 脈管性病変
  リンパ管拡張症
 全身性疾患に伴う十二指腸病変
  アミロイドーシス
  里吉症候群
 腫瘍・腫瘍様病変
  非乳頭部の腫瘍様病変
  非乳頭部の上皮性腫瘍(腺腫・癌)
  乳頭部癌/腺腫
  カルチノイド
  ガストリノーマ
  形質細胞腫
  十二指腸GIST
  悪性リンパ腫
  転移性十二指腸腫瘍
 ポリポーシス症候群の十二指腸病変
  家族性大腸腺腫症
  Peutz-Jeghers症候群
  multiple lymphomatous polyposis(MLP)
  Cronkhite-Canada症候群

索引

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内視鏡検査の実力がアップすること間違いなし
書評者:芳野 純治(大名古屋ビルセントラルクリニック院長/藤田医大名誉教授)

 本書はどちらもA5判の大きさで,総ページ(索引を除く)は『上部消化管内視鏡診断アトラス』が247ページ,『下部消化管内視鏡診断アトラス』が237ページ,疾患数は前者が108疾患,後者が96疾患である。すなわち,1疾患がほぼ2ページにまとめられ,左ページは「疾患の概念・特徴」と「内視鏡所見と診断のコツ」,右ページは画像である。左右は見開きになっており,「内視鏡所見と診断のコツ」を読みながら,画像を確認することができる。画像は書名が「内視鏡診断アトラス」とあるように診断の鍵となる内視鏡画像であるとともに,内視鏡画像の成り立ちを説明する病理組織像,X線像などが添えられている。内視鏡画像には通常の内視鏡像の他に,必要に応じて拡大内視鏡像,NBI像,超音波内視鏡像なども加えられている。可能な限り簡潔になるように編集されているが,内視鏡所見が多彩な疾患では画像にページ数を多く割いている。

 これらの画像は美しく鮮明である。執筆者による選りすぐりの画像であり,編者が画像にいかにこだわっているのかがよくわかる。そういえば,下部消化管の編者の松本主之先生は,医学雑誌『胃と腸』の編集委員長であり,上部消化管の編者の長浜隆司先生,竹内学先生はいずれも『胃と腸』編集委員である。また,執筆者に『胃と腸』編集委員の多くが加わっている。『胃と腸』は画像診断を重視しており,画像から病態解明などが行われてきた。そのこだわりを本書の随所に窺い知ることができる。その他の執筆者も内視鏡診断の一流の方ばかりである。

 また,本文の「疾患の概念・特徴」と「内視鏡所見と診断のコツ」の説明は箇条書きで,疾患の概念・特徴,画像所見のうち何が重要であるのかが容易に理解できるようにしてある。本書をA5判の大きさにしたのは,持ち運びを容易にしていつでも開けることを可能にしたかったのか,内視鏡室の机の上に邪魔にならないように置けるようにしたのか。しかし,考えてみると,A5判とコンパクトにしたため,大切なことが簡潔に記載されている。そのため,日本消化器内視鏡学会専門医を受験する際に疾患の特徴・所見はここに書かれていることを覚えていればよいのではないかとも思われる。記載された疾患は同学会の専門医カリキュラムに沿って精選されているとのことであり,本書を読みながら,内視鏡検査を行えば実力がアップすることは間違いないであろう。本書は消化器内視鏡診断に特化して編集されており,診断を行う者にとって座右の書であると言える。


手垢が付くまで読めるギフト(アトラス本),ここに誕生!
書評者:港 洋平(NTT東日本関東病院消化器内科)

 内視鏡診断が一人前にできるというのは並大抵のことではない。自分も中堅の域にさしかかってきたが,今でもわからないことだらけで,先人たちが築いてきた診断学の奥深さには何度も打ちのめされてきた。

 一方で,今は何でもインターネットで調べられる時代となった。わからないことがあれば,スマートフォン片手に簡単にググって(検索して),情報を得られることができる。確かに便利極まりないが,情報が溢れかえっており,何が正しくて何が重要なのかの取捨選択が難しい。こうして手に入る情報は,まったくと言ってよいほど自分の頭に残っていない。そう,これでは頭の中が整理できないのである。

 そんな中,多くの内視鏡診断の達人である諸先輩が執筆され,恩師の長浜隆司先生と,何度も講演を拝聴し勉強させていただいた竹内学先生が編集された『上部消化管内視鏡診断アトラス』が刊行された。アトラス集というと,大きくて重い本で医局の本棚の片隅にたたずむ,持っているけどなかなか手に取らない写真付きの辞書といったイメージであったが(僕以外の先生方はそんなことありませんのでご容赦ください),この本はなんと手に取れるコンパクトサイズではないか(iPadより小さい)。にもかかわらず,実に多岐にわたる疾患が網羅されている。まあさすがに疾患くらいは私も全部知っているであろうと高をくくっていたら,実は知らなかった疾患もあった(恥ずかしいのであえてここで明かすまい)。さらにさらに,まさに知りたい情報が,疾患ごとに“コツ”として凝縮されてまとめられている。

 これは半端ない。自分もこれまで執筆の機会をいただいたことがあるが,書き始めるとどうしてもボリュームが増えてしまう。しかしこの本は多くの疾患を網羅しながらも,あえてコンパクトにボリュームもなるべく少なくされている。つまりは,諸先輩方が本当はまだまだ伝えたいことを泣く泣く我慢してそぎ落とし,これだけは本当に伝えたいということを練りに練った至高の内容を書いているのである。となると,そう,インターネットで必要とされる情報の取捨選択がこの本では不要なのである。

 であれば内視鏡検査をしている現場で困ったときにまず何をすればよいか,答えは見えてくる。そう,ググる前にまずはこの本を手に取ればよいのである。さらには選りすぐった内容だけが書かれているので,アトラス集でありながら教科書としても最初から最後まであっという間に読めてしまうのである。ははーん,これは諸先輩方からインターネット世代の若者への考え抜かれた現代版のギフト(アトラス本)なのか。これは買うしかない。え,しかも安い(笑)。

 よし,そっちがその気なら,この本を手垢が付くまで隅から隅まで読んで,わからないことあればこの本でこそっと調べて,どんどん脳内に叩き込んでやろう。そうしたら,ググる必要もない,この本を開く必要もない。すっきり頭の中が整理されたらもう捨ててもよいかもしれない(極論)。そうなったら執筆陣の先輩方もにんまりしてくれるであろうし,ようやく足元くらいには追いつけるかな。善は急げ! ポチッとな。


この時代だからこそ,ぜひとも「見て」学んでいただきたい一冊
書評者:野中 康一(東女医大教授・消化器内視鏡科)

 インターネット社会となり,若手内視鏡医はネットで好きなときに興味がある領域だけ勉強すればよい時代となった。なってしまったというほうが表現は正しいかもしれない。大勢の前で内視鏡所見を読影するドキドキ感は縁遠いものとなり,貴重な症例を勉強できる勉強会へ積極的に参加しようという意気込みのある若手内視鏡医は絶滅危惧種になりつつある。

 さらに追い打ちをかけるように誰もが予想だにしなかった新型コロナウイルス感染症のパンデミックに襲われ,勉強会に参加するどころか開催もされない状況となった。時間はあるのに,勉強会に参加できない。学会に参加できない。そういう若手内視鏡医が増えているように思える。

 こういう時こそ「紙媒体」で勉強するのだ!! それが数年後に必ず実を結ぶ。「全集中の呼吸」で紙媒体(本)を読むのだ! 完全に流行りものの『鬼滅の刃』に便乗してみたが,自分自身は見たこともないので今ネットで「全集中の呼吸」を検索してみた。「骨身を削りながら修練を重ねる以外に習得方法はない」と記載があった。適当に言った割には,結構今回の書評の文脈と一致していた。

 時を戻そう(これもまた流行りの芸人を参考にした)。

 私自身も時間を持て余し,久しぶりに気になる本を数冊ネットで購入して読んでいる。その一冊が今回書評を書かせていただいている,長浜隆司先生・竹内学先生編集の『上部消化管内視鏡診断アトラス』である。決して書評の依頼書とともに本が送られてきたから目を通したわけではない。

 咽頭・食道・胃・十二指腸の症例がきれいな内視鏡写真と病理写真とセットで,シンプルで読みやすいスタイルで一冊にまとめられている。私が最も気になったのは,食道壁内偽憩室症である。これは今まで何回か出合ったことがあったが,何だかよくわからず無視した記憶がある。内視鏡診断とはそういうものである。知らなければ診断できないし,アトラスでたくさんの症例を頭にインプットしている内視鏡医は診断できるわけである。あー,早く食道壁内偽憩室症に出合いたい。そして,みんなの前でサラッと診断したい。そういう欲望に駆られるのは私だけであろうか。

 とにかく,名前さえ知らない里吉症候群の内視鏡写真から,今流行のラズベリー様の腺窩上皮型胃癌まで網羅されているのである。最も気持ち悪くて夢にも出てきそうなのが,十二指腸の単元にある回虫症の内視鏡写真(p.201)である。乳頭部に迷入した回虫を内視鏡的に捉えた奇跡の一枚である。回虫もこのタイミングで写真を撮影されるとは思っていなかったに違いない。ぜひこのアトラスを手に取って,ご覧いただきたい一枚である。このアトラスを一冊全部頭に入れておけば,若手内視鏡医は数年分,いや数十年分の勉強を数時間でできるのである。

 さらに,今回のこのアトラスの特徴は本のサイズである。A5サイズで小さく,持ち運びやすい。それなのに内視鏡写真・病理写真のサイズは見やすく枚数も十分である。わが家のペット犬のチョコちゃんの餌を計る計量器に乗せると474 gであった。これは『五木食品タカモリナポリタン3食入』と同じ重さである。かつて内視鏡アトラスといえば,大きくて重くて分厚くて,表紙は固い紙で,夫婦喧嘩になれば武器にもなり得る代物であった。この『上部消化管内視鏡診断アトラス』は持ち運びやすく,安全でもある。

 この内容で,この価格。秀逸としかいえない。いつ買うの? 今でしょ!

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