内科診断学 第4版

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内科診断学の定番テキストの第4版。好評の「症候・病態編」では、医学生・研修医がおさえておきたい症候・病態を網羅。本文オールカラー、豊富な図表とともに、症候から診断に至るまでの思考プロセスをわかりやすく丁寧に解説。今版では、「症例編」の内容を刷新し、掲載症例数を大幅に拡充させ、具体的な症例を通した学びがますます充実。マルチデバイスで閲覧可能な「付録電子版」付。

編集 福井 次矢 / 奈良 信雄 / 松村 正巳
発行 2024年03月判型:B5頁:1104
ISBN 978-4-260-05315-0
定価 11,000円 (本体10,000円+税)

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第4版 序

 もう23年前になってしまったが,本書初版の序に,かつて疾病の病態生理学を学んできた医学生の私が臨床実習でいざ患者さんに接したときに,学習してきたはずの知識をうまく活用できない“もどかしさ”を感じ,なんと当時の内科教授に「教育のしかたがどこかおかしいのではないですか?」と訴えたというエピソードを記載した.
 その“もどかしさ”の原因として,「たとえ疾病に関してどのような症候が起こりうるのかを知っていても,個別の症候の原因としてさまざまな疾病を頻度などとともに思い浮かべられるとは限らないこと」「多くの医学部・医科大学で圧倒的な授業時間を費やしている生物医学的アプローチは臨床医にとって必要な知識の一部分にすぎないこと」の2点を挙げ,少しでもそれらが軽減されるよう本書『内科診断学』の構成に工夫を凝らしてきた.その結果,「I.診断の考え方」「II.診察の進め方」「III.症候・病態編」「IV.症例編」という4部構成となり,各症候についての詳細な説明,疾患の頻度と臨床的重要度の図の作成,医療面接や身体診察,検査所見の確定診断への寄与などに配慮した内容となった.
 第3版の出版から7年経ち,ここに第4版を出版できることとなった.今回は,松村正巳先生に新たに加わっていただき,奈良信雄先生ともども,3名の編集体制で改訂作業にあたり,内容をよりいっそう充実すべく,以下のような変更を行った.
 「III.症候・病態編」の掲載項目を8項目(「抑うつ・不安」「せん妄」「鼻漏・鼻閉」「嗅覚障害」「味覚障害」「肛門・会陰部痛」「もの忘れ」「終末期の諸症状」)増やし,109項目とした.「IV.症例編」の掲載症例数を,前版の26症例から大幅(81症例)に増やして107症例とした.なお,これら107症例中27症例は書籍に掲載し,残り80症例は付録の電子版で閲覧可能とした.前版同様,本版でも,書籍に付与されたシリアル番号を用いてオンライン上で電子版閲覧権の申し込みをしていただくと,スマートフォンやタブレット,パソコンなどの各種端末で,電子版の閲覧が可能となる.
 引き続き,医学生,研修医をはじめとする若い医師の皆さんに,診断学のコース,臨床実習,卒後研修など,さまざまな学習場面で本書を活用していただければ幸甚である.膨大な作業を見事にこなし,本書第3版からさらに高みに押し上げた杉崎公亮氏に心から感謝申し上げる次第である.

 2023年10月
 福井次矢

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I 診断の考え方
 ▪ 診断の意義
   医療における診断の意義
   診断の軸
 ▪ 診断の論理
   診断のプロセス
   診断の思考様式
   日常診療における診断の認知心理
 ▪ 医療情報の有用性
   病歴情報の有用性
   身体診察の有用性
   現代医療における医療面接と身体診察の位置づけ
   検査情報の有用性
 ▪ 新しい診断学の考え方
   病態の理解と臨床疫学の統合
   evidence-based diagnosis(EBD)
   コンピュータの活用
 ▪ 誤診に至る心理
   臨床判断を誤る心理機制
   不運な結果と誤診
   誤診の背景と予防

II 診察の進め方
 ▪ 診察の進め方
   診察の進め方のアウトライン
 ▪ 医療面接
   医療面接とは
   医療面接の手順
 ▪ 身体診察の進め方と方法
   身体診察の進め方
   身体診察の方法
 ▪ 部位別の身体診察 バイタルサイン
   意識状態
   体温
   脈拍
   血圧
   呼吸状態
 ▪ 部位別の身体診察 全身状態
   顔貌
   精神状態
   体格
   体位と姿勢
   運動
   歩行
   言語
   皮膚・爪・体毛
   表在性リンパ節
 ▪ 部位別の身体診察 頭頸部
   頭部
   頸部
 ▪ 部位別の身体診察 胸部
   胸郭の診察
   心臓の診察
   肺の診察
   乳房の診察
   腋窩の診察
 ▪ 部位別の身体診察 腹部
   腹部の区分
   視診
   触診
   打診
   聴診
   肛門・直腸の診察
   外性器の診察
 ▪ 部位別の身体診察 四肢
   視診
   触診
   生体計測
 ▪ 神経症候の診察
   神経所見のとり方
   神経症候の診察
 ▪ 検査
   検査計画の立て方
   尿・便検査
   髄液検査
   血液学的検査
   肝機能検査
   腎機能検査
   代謝検査
   内分泌検査
   炎症マーカー検査
   免疫血清学的検査
   腫瘍マーカー検査
   病原微生物検査
   遺伝子検査
   画像検査
   病理検査
   病理解剖
 ▪ 診療録の記載法
   診療録とは
   POMRの記載法

III 症候・病態編
   発熱/寝汗,ほてり/全身倦怠感/肥満,肥満症/
   るいそう/成長障害/不眠/失神/
   抑うつ・不安/せん妄/皮膚の異常/黄疸/
   出血傾向/貧血/頭痛/めまい/
   視覚障害/結膜の充血/眼球突出/眼瞼下垂/
   瞳孔異常/眼底異常/眼球振盪(眼振)/
   眼球運動障害/顔面痛/聴覚障害/鼻漏・鼻閉/
   鼻出血/嗅覚障害/味覚障害/舌の異常/
   咽頭痛/嗄声/いびき/悪心・嘔吐/
   食欲不振/胸やけ・げっぷ/口渇/嚥下困難/
   吐血/甲状腺腫/リンパ節腫脹/咳,痰/
   喀血,血痰/胸痛および胸部圧迫感/乳房のしこり/呼吸困難/
   喘鳴/胸水/動悸,脈拍異常/高血圧/
   低血圧/脱水/チアノーゼ/静脈怒張/
   くも状血管腫,手掌紅斑/ばち状指(ばち指)/浮腫/腹痛/
   腹部膨隆/腹水/肝腫大/
   脾腫/下痢/便秘/下血・血便/
   肛門・会陰部痛/月経異常/背部痛/腰痛/
   排尿障害/排尿痛/頻尿/乏尿・無尿/
   血尿/四肢痛/関節痛/末梢血行異常/
   知能障害/失語・失行・失認/もの忘れ/痙攣/
   構音障害/運動麻痺/感覚障害/筋脱力/
   筋萎縮/筋緊張異常/運動失調/不随意運動/
   歩行障害/心肺停止/ショック/意識障害/
   甲状腺機能亢進症/脳血管障害/呼吸不全/心不全/
   急性冠症候群/急性腹症/急性腎不全,急性腎障害/妊娠と分娩/
   急性感染症/外傷/急性中毒/誤飲・誤嚥/
   熱傷/精神科領域での救急/終末期の諸症状

IV 症例編
   発熱
   全身倦怠感
   食思不振,不眠
   黄疸
   出血傾向
   息切れ,全身倦怠感
   反応が鈍い
   突然の声がれ
   食欲不振
   吐血
   頸部リンパ節腫脹
   咳,痰
   胸痛
   胸痛,呼吸困難
   脱水
   チアノーゼ,ばち状指
   静脈怒張
   月経異常
   排尿痛,頻尿
   血尿
   ろれつが回らない
   感覚障害・感覚異常
   歩行障害
   心肺停止
   左半身麻痺
   労作時呼吸困難
   悪寒,発熱

【以下の症例は電子版に収録.「症例編ワークシート」ご利用方法はp.xiv 参照】
   寝汗/肥満/体重減少/成長障害/
   睡眠中の奇行/失神/失見当識や辻褄の合わない言動/皮疹,瘙痒/
   右後頭部痛/めまい,悪心/左目の一過性失明発作/眼の充血,頭痛と悪心/
   眼球突出/右後頭部痛,ふらつき/喚語困難/めまい/
   眼球運動障害,意識障害/顔面痛/難聴,耳鳴/鼻閉/
   反復する鼻出血/嗅覚障害/味覚障害/舌痛,口内乾燥/
   咽頭痛/いびき/悪心・嘔吐/
   胸やけ・げっぷ/口渇/嚥下困難/甲状腺腫/
   血痰/乳房のしこり/喘鳴,労作時呼吸困難/胸水,労作時呼吸困難/
   動悸/呼吸困難/意識消失/手掌紅斑,下腿浮腫/
   下肢浮腫/腹痛/腹部膨隆/腹水/
   肝腫大/全身倦怠感,食欲不振,脾腫大/下痢/便が出ない/
   下血/肛門・会陰部痛/背部痛(安静時痛もある)/腰痛/
   排尿障害/頻尿/無尿・乏尿/
   左上肢痛,左手指しびれ/左股関節痛/末梢血行異常/理解力低下,手指の不随意運動/
   物にぶつかる(自覚なく,周囲から指摘)/もの忘れ/持続する手の痙攣/
   左手足の脱力発作/四肢脱力/構音障害,四肢筋萎縮/手がふるえる,手が使いにくい/
   ふらつき,ろれつ不良/ショック/意識障害/甲状腺機能亢進症/
   呼吸不全/強い心窩部痛/上腹部痛,背部痛/易疲労感/
   下腹部痛(妊娠初期)/腰背部痛/意識障害/異物誤飲/
   熱傷/意識障害・痙攣発作/左殿部から下肢にかけての疼痛

主要検査の基準値
略語一覧
和文索引
数字・欧文索引

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進化を続ける内科診断学の教科書
書評者:田中 雄二郎(東京科学大学長)

 8年ぶりに改訂された『内科診断学 第4版』は,学生や研修医のみならず,全ての医師の学び直しのためにもお薦めしたいと思います。

 学生たちには,患者さんは「クモ膜下出血できました」とは言わず,「頭が痛くて何とかしてほしい」「こんな頭痛は経験したことがない」「まるで頭をハンマーで殴られたようだ」と言ってくるのだと話します。

 また,「ハンマーで殴られたような頭痛」だからといって必ずしもクモ膜下出血とは限らず,他の病気も鑑別診断に挙げなければ,思わぬ間違いを悔やむことになると話します。

 学生は言われてみればその通りだとすぐに理解しますが,ではどうやって勉強するのかということになると,現実には症状を生成系AIに入力して答えを待つ,もうそういう時代になっています。

 しかし,診断とは,本来丁寧な医療面接と身体診察,そしてそこから必要とされる検査や画像検査の所見を総合して判断する知的な行為です。医療面接プラスAIだけでは誤った診断になることは容易に想像できることです。

 ではどうやってこのプロセスを勉強すればよいのか。診断学の教科書がその意味を持ちます。以前からわが国には優れた内科診断学の教科書がありました。ベテランの人たちは学生時代に身体診察なら武内重五郎先生の『内科診断学』,症候学なら吉利和先生の『内科診断学』を使って学んだものでした。しかし,残念ながらこれらの名著は10年以上改訂されていません。

 そのような中,内科診断学を学ぶほとんど唯一の現役の診断学の教科書と言ってよい本書が改訂されました。元々定評のある症候学に加えて,症例が第3版の26例から107例に大幅に増えていることが特徴です。

 今回は増えた症例が付録電子版に掲載されていますので,今回の改訂からは,むしろ付録電子版を主体とした使い方になるのではないかと思います。私も実際にタブレットPCから付録電子版を見ています。症例には「アナザーストーリー」という今風の記載もあり,ちょっとした隙間時間に読むと読み物を読んでいるような楽しさもあります。

 最後に強調したいことは,医療面接,身体診察,症候,症例と進む前の第I章の重要性です。診断の落とし穴について経験に裏付けられた論理的な記載があり,臨床実習の医学生や研修医にとっては「転ぶ前の杖」となり,ベテランの医師にとっても新たな気付きを与えてくれるものと思います。

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