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在宅ケアのための判断力トレーニング
訪問看護師の思考が見える

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複雑な状況を前に一人での判断が求められる在宅ケア現場での「判断力」を養う本。何を見て、何を考え、どう道筋をつけてケアを組み立てるのか。そしてどう動き、何に備えるのか。在宅医療の現場で「命と暮らしを守る訪問看護師」の思考過程を深読みしながら、包括的情報のなかでの判断力を身に付ける。判断力を高める方法として臨床推論、フレームワーク、リフレクション、認知バイアスについても分かりやすく解説する。

清水 奈穂美
発行 2022年06月判型:A5頁:160
ISBN 978-4-260-04887-3
定価 2,200円 (本体2,000円+税)

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はじめに 
奮闘中のあなたへ

 在宅医療の現場では、「療養者と家族が大切にしていること(価値観や思い)」や「療養者の暮らし」を理解し、生き方そのものを支えることが必要とされています。社会的に訪問看護師に求められているものは、「医学的/療養者中心」双方の判断をすることであり、この本を手に取られた皆さんもまさに今、奮闘中ではないでしょうか。
 訪問の現場は、基本的に1人ですね。その場での判断が求められることに緊張したり、医学的な判断だけでは療養者や家族(介護者)とうまくいかず、その家全体を見て判断することの難しさに直面したりしていると思います。
 でもこれは、在宅ケア(訪問看護)の醍醐味の1つです。この判断の“難しさ(面白さ)”に気づいた方は、訪問看護の奥深さに一歩足を踏み入れたようなものです。
 この「奥深さ=壁」を乗り越える鍵は、読者の皆さんそれぞれが、これまでの看護実践の経験で培ってきた“思考を柔軟に転換する”ことです。そして、療養者その人の価値観や思いに触れながら、療養者を取り巻く家族や多職種など周囲の人々の状況も踏まえた判断を考えられるようになったら、訪問看護がもっともっと面白くなるでしょう。

 と言っても、1人で乗り越えるのは至難の業かもしれません。そこで私は、これまで「経験知」としてしか語られていなかった多くのベテラン訪問看護師たちが悩み歩いてきた道を、皆さんに本書で伝えようと思いました。
 訪問看護や在宅ケアを担う人には、療養者の望む生活や生き方を支えることを目指してほしいと思っています。そのためには、「本当の意味で療養者を支えることができる判断力」を身に付けてほしい――このような思いから、私自身の看護実践の経験を省察し、在宅看護専門看護師や訪問看護認定看護師の仲間たちとともに考え、訪問看護師の「判断」が導かれる思考プロセスを概念化しました。

 本書は、思考プロセスの基盤となる訪問看護師の判断を支える4つの力と最善解を導く意思決定の共有を具体的に解き明かしながら、判断力をトレーニングできるようになっています(詳しくはⅷページの「本書の読み方」をご参照ください)。
 さらに全体にわたり事例も紹介しながら、判断が必要な場面では、あなたにも「問いかけ」ますから、ぜひ一緒に思考を深め、あなた自身の実践と照らし合わせてみてください。
 そのときに示す「皆の意見」からは、多様な考え方(推論や価値観など)を知って“思考の幅”を広げてください。きっと、あなたと同じ考えや、あなた自身が考えられなかったことに気づくでしょう。
 この“問いかけながら進めるトレーニング”には、「皆それぞれ1人で訪問するけれど、決して1人じゃない。あなたの判断を支えてくれる人がいるはず(本書もあなたを支えます)、だから勇気をもって思考を回していこう!」という思いを込めました。この思いには、療養者と家族や多職種らと共に、ときに笑い、泣きながら実践を積み重ねてきた訪問看護認定看護師や在宅看護専門看護師たちからの願い(愛)と学び、奮闘する皆さんへの応援が詰まっています。

 本書は、雑誌『訪問看護と介護』2020年2月号での「訪問看護師の臨床推論」や「誌上シミュレーション臨床推論をやってみよう」、同誌2021年1月号から連載した「訪問看護師のための判断力トレーニング」をもとにまとめました。ここにたどりつくためには、私に問いかけてくださり、私の省察を助けてくださった医学書院『訪問看護と介護』編集室の皆さんの存在が欠かせませんでした。執筆中に編集者から問いかけてもらうことは私に新たな気づきをもたらし、私の看護実践を言語化する力、つまり“言葉にできる”力となりました。心より感謝しています。

 そして、訪問看護の面白さを語り合える仲間であり、訪問看護の臨床推論における数々の名言を授けてくれた訪問看護認定看護師の小林澄子さん、坂本由規子さん、甲斐年美さんに感謝です。私が悩んだときにいつも助けてくれる在宅看護専門看護師の田中美樹さん、山本克美さん、アドバイスをくださる医師の清水健太郎先生の支えもありました。本当にありがとうございました。
 また、訪問看護師の判断が導かれる思考プロセスの基盤を学生時代から学び、実践に活かしている新卒訪問看護師の渡邊莉希さんと、その実践を支える訪問看護認定看護師の駒井和子さんにも感謝します。たくさんの示唆をいただきました。

 訪問看護師は、医学的根拠に基づき推論する予測的判断と対話に基づく価値判断をすり合わせ、療養者の思いを多職種連携の中心に置き、その時の状況、その場に合った判断を導きます。こうした判断は、新人であっても中堅やベテランになっても、悩んだり、迷ったりするもので、皆、一緒です。
 本書は、訪問看護師1人ひとりの自律的な学びを支えるものであり、皆で学ぶものでもあります。在宅ケアの現場で判断に悩んだときには、ぜひ本書を手に取っていただけたらと思います。
 そして、療養者と家族の望みを叶えるケアを実現するために、あなた自身の訪問看護師としての「判断力」を磨いていただけたらと願っています。同時に、本書が訪問看護師に限らず、在宅ケアを支える多職種の人々にも届き、在宅ケアチームの皆で、療養者の望む生き方を支えられる一助となれば幸いです。

2022年6月
清水奈穂美

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はじめに――奮闘中のあなたへ

本書の読み方

Prologue 訪問看護師に必要な「判断力」とは

Chapter1 訪問看護師の思考プロセス
 Step1 手がかりを感じとる力
  Aさん 人工肛門を造設した90歳男性
 Step2 見えないことを推論する力
  Bさん 腰椎へがんの骨転移がある73歳女性
 Step3 考えを言葉にする力
  Cさん 慢性心不全をもつ77歳女性
 Step4 余計なことをしすぎない力
  Dさん 脳性麻痺を抱える58歳男性
 Step5 最善解を導く意思決定の共有
  Eさん 認知症の進行により発語ができない85歳女性
 Step6 多職種と共に導く最善解
  Fさん 褥瘡を抱える87歳女性
 Step7 倫理的葛藤に向き合う意思決定
  Gさん 原因不明の胸水が認められる72歳男性
 [場面別]判断が必要な場面と思考プロセス

Chapter2 判断力を鍛える方法
 ①臨床推論
  Hさん ヘモグロビン値が低い90代女性
 ②臨床判断モデル
 ③Stop and Think

Chapter 3 自律的な学びを支えるもの
 ①認知バイアス
  Iさん 多系統萎縮症をもつ62歳女性
  Jさん 多疾患を併せもつ75歳女性
 ②リフレクション
 ③心理的安全性とアンラーニング

名言コラム 気づきをくれた5つの言葉
 1 「環境から語りかけられるものに耳を傾ける」
 2 「“互いの支え合い方”が感じとれるチャンスを逃さない」
 3 「それは、看護がすることか」
 4 「最悪を想定して最善を考える」
 5 「『メロンが食べたい』に何を考えるか」

おわりに――判断力は「チーム」「地域」で向上させる時代へ
判断のポイントINDEX
索引

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