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小児科レジデントマニュアル 第4版

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初版発行から27年、進化し続ける小児科マニュアルの最新版。「沖縄県立中部病院」「沖縄県立南部医療センター・こども医療センター」で研鑽を積んだエキスパートたちがノウハウを凝縮し、全面改訂。カラーアトラスを新設し、項目数は過去最多とさらに充実した。日常診療から救急、新生児、保健まで、“子どもをみる優しく的確な視点”が幅広く詰まっている。研修医はもちろん、子どもに関わるすべての医療職におすすめ。

*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ レジデントマニュアル
監修 安次嶺 馨 / 我那覇 仁
編集 小濱 守安 / 中矢代 真美
発行 2021年03月判型:B6変頁:656
ISBN 978-4-260-03962-8
定価 4,950円 (本体4,500円+税)

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第4版 序

 『小児科レジデントマニュアル第4版』は,前版から6年を経て改訂の運びとなった.近年の医療情報の蓄積は早く,また,診断法や治療法の進歩が年々加速している状況に鑑み,従来より改訂期間が短くなった.
 思えば,初版の発行から,すでに27年が経った.第4版のページ数は,初版の208ページから3倍以上の672ページに増えた.執筆は,沖縄県立中部病院と沖縄県立南部医療センター・こども医療センターで研修を受け,あるいは共に働き,その後,全国で診療に従事する小児科医,小児外科医らが担当している.本書の執筆者には,新たに新進気鋭の小児科医が加わり,その内容は一層充実したものとなっている.
 本書の基本的な枠組みは第3版と同様で,I 小児救急,II 小児疾患,III 新生児疾患,IV 小児保健,V 検査・手技,VI 小児検査基準値,VII 小児薬用量であるが,今回,新たなる試みとして,巻頭にカラーアトラスを取り入れ,より日常の診療に役立つものと期待している.ほとんどの写真は,関連項目の執筆者の提供によるものである.
 編集会議では監修者,編集者,編集協力者8人の委員と医学書院編集担当者が集まって作業した.8人の委員は担当項目のすべての原稿をチェックし,その結果を全体会議で検討した.原稿の長さが予定字数から大幅に超過したものは,適切な長さに縮めるよう依頼した.また,内容があまりにも高度で専門的すぎるものは,簡潔に記述するよう要請した.各項目には,原則として推薦文献とそのポイントを記述した.このことは第2版から始めたが,読者から好評なので,今回もその方針を継続した.マニュアルとしての記述の限界から,さらに詳しい内容を知るために関連文献にあたって理解を深めることを意図した.このような作業により,全体にバランスの取れた内容になったと考える.
 最終の編集会議はコロナ禍の最中で,全員が集まることが困難になり,オンライン会議を行った.時代の変化を感じつつ,マニュアルの編集作業を終えることができた.
 「Instructive Case」は沖縄県立南部医療センター・こども医療センターと沖縄県立中部病院のケースカンファレンスで討論した症例から,興味ある例を取り上げた.「Side Memo」は項目を15に増やし,COVID‒19という最新トピックスをカバーして,内容の充実を図った.検査値については,成長発達の過程にある小児の特性を考えて,適切に判断していただきたい.また,薬用量については,添付文書に全面的に従ったものではなく,執筆者の判断によるものもあることをご理解いただきたい.
 本書の発刊に際し,医学書院の山中邦人氏,安部直子氏には多大なご支援をいただいた.編集委員一同,心から感謝申し上げます.

 令和3年2月
 監修
  安次嶺 馨
  我那覇 仁

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カラーアトラス
略語一覧

I 小児救急
  1.発熱
  2.けいれん重積
  3.意識障害
  4.呼吸障害
  5.咳・喘鳴
  6.チアノーゼ
  7.アナフィラキシー/蕁麻疹
  8.ショック
  9.心肺蘇生
  10.脱水
  11.嘔吐
  12.下痢
  13.吐血・下血(消化管出血)
  14.腹痛
  15.低血糖症
  16.異物(気道・消化管)
  17.溺水
  18.児童虐待
  19.頭部外傷
  20.中毒

II 小児疾患
 呼吸器疾患
  1.上気道炎・咽頭炎
  2.中耳炎
  3.クループ症候群
  4.細気管支炎
  5.肺炎・膿胸
 循環器疾患
  6.先天性心疾患
  7.心不全
  8.心筋炎
  9.無酸素発作
  10.感染性心内膜炎
  11.川崎病
  12.不整脈
 腎・泌尿器疾患
  13.尿路感染症
  14.腎不全
  15.腎炎
  16.ネフローゼ症候群
 消化器疾患
  17.肥厚性幽門狭窄症
  18.腸重積症
  19.急性虫垂炎
  20.胃食道逆流症
  21.肝炎・肝不全
 血液・腫瘍性疾患
  22.貧血
  23.免疫性血小板減少性紫斑病(特発性血小板減少性紫斑病)
  24.出血性疾患
  25.輸血
  26.腫瘍
  27.白血病
 内分泌異常・代謝性疾患
  28.甲状腺疾患
  29.成長ホルモン分泌不全性低身長症
  30.糖尿病性ケトアシドーシス
  31.副腎不全症(慢性・急性)
  32.思春期早発症
 免疫・アレルギー疾患
  33.食物アレルギー
  34.気管支喘息
 感染症
  35.抗菌薬療法
  36.麻疹(はしか)
  37.インフルエンザ
  38.菌血症
  39.細菌性髄膜炎
  40.発疹性疾患の鑑別
 神経疾患
  41.熱性けいれん
  42.てんかん
  43.脳炎・脳症
  44.発達障害(神経発達症)
  45.脳性麻痺

III 新生児疾患
  1.新生児の分類と成熟度
  2.ハイリスク新生児
  3.新生児の一般的管理
  4.新生児の栄養
  5.新生児の蘇生
  6.新生児黄疸
  7.新生児低血糖
  8.新生児低カルシウム血症
  9.けいれん(新生児発作)
  10.低酸素性虚血性脳症
  11.新生児頭蓋内出血
  12.新生児の感染症
  13.新生児の呼吸管理
  14.無呼吸発作
  15.新生児一過性多呼吸
  16.胎便吸引症候群
  17.未熟児動脈管開存症
  18.新生児の外科疾患

IV 小児保健
  1.成長と発達
  2.乳幼児健診のチェックポイント
  3.予防接種
  4.学校において予防すべき感染症

V 検査・手技
  1.縫合
  2.骨髄輸液
  3.腰椎穿刺
  4.胸腔穿刺・胸腔ドレナージ
  5.検尿
  6.排尿時膀胱尿道造影
  7.グラム染色
  8.小児の鎮静法

VI 小児検査基準値
  小児検査基準値

VII 小児薬用量
  1.小児薬用量一覧
  2.ステロイドの全身投与

索引

Side Memo
 頭蓋内圧亢進症
 片頭痛のアプローチ
 SIDSとALTE,BRUE
 搬送
 熱傷
 小児の新型コロナウイルス感染症
 尿崩症
 夜尿症
 停留精巣,陰囊水腫
 便秘と便秘症
 関節痛の鑑別
 SIAD
 頸部リンパ節腫大
 子どもとたばこ
 鼠径ヘルニア

Instructive Case
 ピクつきを主訴に来院した乳児
 食道異物はすぐに症状が出ない?
 超音波検査を契機に診断に至り,MRIでフォローアップが可能だった急性巣状細菌性腎炎(AFBN)の1例
 清涼飲料水の飲ませすぎで心不全?
 頻回の喘息発作を契機に診断したムコ多糖症
 細菌性髄膜炎として治療介入された新生児脳室内出血
 X線で異常指摘のなかった頻回嘔吐の日齢2男児
 嘔吐・経口摂取不良を主訴に来院した頻拍発作
 1歳8か月男児のけいれん?
 ポート感染の診断にDTP(differential time to positivity)が有用だった小児例

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小児医療を極める
書評者:田原 卓浩(たはらクリニック院長)

 わが国の小児医学/小児医療の進化・進歩の道程を長くけん引している安次嶺馨・我那覇仁両先生が熱情をこめて改訂された書である。初版は1994年。これまでに2回の改訂がなされ,第2版では「日本のHarriet Lane」という帯が付けられていた。いずれの版も沖縄県の小児科専門医を中心とした執筆陣が読み手・使い手の立場に立って丁寧に記述する方針が貫かれていることが基軸といえる。

 本書は前版と同様に「小児救急」「小児疾患」「新生児疾患」「小児保健」「検査・手技」「小児検査基準値」「小児薬用量」の7部で構成されている。今回の改訂では巻頭にカラーアトラスが取り入れられ,近年遭遇する機会が減少した感染症やグラム染色標本など多数の鮮明な写真が本文の解説への興味をいざなうかのごとくである。

 「小児救急」「小児疾患」「新生児疾患」では,疾患概要/症候の特徴,診断(診察・鑑別診断・検査),治療,上級医(専門医)コールのタイミング,保護者(患児)への説明のポイントの項目を基本として,統一された解説が展開されているが,「新生児疾患」ではtechnical termの解説や栄養を含めての項目ごとの記述に工夫がうかがえる。

 続く「小児保健」では,小児の特徴である「成長と発達」「乳幼児健診のチェックポイント」「予防接種」「学校において予防すべき感染症」の4つの項に分けてminimal requirementが的確に記されており,health-oriented pediatricsの重要性がにじみ出ているといえる。

 「検査・手技」を構成している項目は,「縫合」「骨髄輸液」「腰椎穿刺」「胸腔穿刺・胸腔ドレナージ」「検尿」「排尿時膀胱尿道造影」「グラム染色」「小児の鎮静法」の8つである。初版の序に述べられているように,医学知識だけでなく臨床研修で培われるべき技術・手順を貪欲に吸収し修得すべきであるという米国式の医学卒後研修を基盤としたメッセージが組み込まれているように感じる。
 「小児検査基準値」と「小児薬用量」には,医療現場で迅速にmedical decision makingを正確に実施するための情報が満載されており,30年に及ぼうとする本書への評価を反映した実用性を窮める締めくくりといっても過言ではない。

 思わず引き込まれてページを次々にめくることになる600ページ余りの記述の中に,「Side Memo」と「Instructive Case」が載せられている。先天代謝異常症から新型コロナウイルス感染症まで幅広い疾患・症候・症例に関するクリニカルパールがちりばめられている。忙しい業務の合間に読むと,記憶の引き出しが自然に開くような仕掛けである。

 “童どぅ黄金(わらび どぅ くがに)”の精神が底流となっている沖縄から発信され続けている「臨床の知」を体感しながら学べる本書は,子どもたちとその家族のための医療サービスに携わる全ての方にひもといていただきたいmasterpieceであると確信している。


全ての小児科臨床医に薦めたい最強の一冊
書評者:長村 敏生(日本小児救急医学会理事長/京都第二赤十字病院副院長・小児科部長)

 医学書院から『小児科レジデントマニュアル』の第4版が発行された。本書は1994年の初版発行以来好評のうちに版を重ね,実に27年の歴史を有する小児科診療における代表的なレジデントマニュアルである。医学の進歩に伴って改訂のたびに項目数,ページ数ともに増加したにもかかわらず,ここ19年にわたり定価が据え置かれていることは驚きであるが,監修は一貫して安次嶺馨,我那覇仁両先生が担当されていることには感服の至りである。

 かつてわが国の大学の医学教育カリキュラムの中で軽視されがちであった小児救急医療は,米国式卒後研修を取り入れた沖縄県立中部病院の安次嶺,我那覇という師弟コンビの登場によって学問的体系化が一気に加速されたといっても過言ではない。全国から沖縄に集結した若手医師が研修成果を各地に持ち帰った結果として,執筆陣も沖縄にとどまらず全国に及んでいる。さらに各門下生がそれぞれのsubspecialtyを追求した成果が,項目を問わず本書のqualityの高さに反映されている。この豊かな人材群こそがまさに安次嶺,我那覇両先生の最大の財産である。今回の改訂ではカラーアトラスが新設されたが,忙しい診療の中での写真撮影はresearch mindなしには実践困難で,この新企画も両先生の薫陶の賜物であろう。

 以上より,本書の白眉が「I.小児救急」であることは論をまたないが,「(呼吸障害は)SpO2値のみではなく,呼吸数や心拍数を意識する」(p.18),「乳幼児では興奮や不穏,傾眠が重症の呼吸障害を示す重要な徴候である」(p.19),「頻脈の原因は多岐にわたるが,ショック状態ではないかと疑うことがまず大切である」(p.44),「(心肺蘇生時の)家族の立ち合いは家族にとって有益との報告もあるが,蘇生に慣れていないチームでは別室に案内し,逐次報告するほうがよいと思われる」(p.59),「腹部診察は患児の表情,四肢の動き,心拍モニターを見ながら行うと腹痛の最強点を見つけやすい」(p.77),「(異物誤嚥で)患児が咳き込んだり,泣いたり話せたりするなら重篤な気道閉塞はなく,緊急処置は不要」(p.93),「乳幼児(の心筋炎)では受診時の主訴に非特異的症状が多く見落としやすいため,保護者の『いつもと様子が違う』という訴えは傾聴」する(p.165)など,豊富な臨床経験から紡ぎ出された箴言が随所にあふれている。

 不安を抱えて一人で当直業務に当たるレジデントも本書を参考にすれば,症候を確認しての初期対応が容易となる。その際,患児の評価に「小児保健」「検査・手技」「検査基準値」の項目が,病名が想定できれば「疾患各論」が,処方の指示時には「薬用量」の記述が役に立つ。さらに,小児病棟と新生児病棟を併設する多くの一般病院の当直レジデントには「新生児疾患」の項目まで用意されているところが大変心強い。要するに,このマニュアル一冊あれば小児科レジデントは仕事に困らないようになっている。加えて指導医にとってもレジデントに指導するべき事項が極めてコンパクトにまとめられており,大変参考になる。まさに全ての小児科臨床医にお薦めしたい最強の一冊である。


小児診療にかかわる全ての医師必携の書
書評者:縣 裕篤(愛知医大特任教授・小児科)

沖縄県立中部病院の叡智がここに結集
 中部病院がハワイ大と提携して米国式のレジデント教育を行ってきたことは有名であるが,その歴史は古く,半世紀以上の年数を刻んでいる。今でこそ,卒前・卒後の医学教育の重要性が声高に唱えられ,医学教育の専任教員が各大学に在籍するが,中部病院では全国の医学部・医科大学が卒後教育に目を向けるはるか昔から系統的なレジデント教育が行われてきた。その実績は,臨床,特に救急対応できる即戦力の医師を短期間で育て上げる教育システムとして周知され,中部病院はあこがれの研修病院となった。長年,沖縄の小児医療をリードしてきた安次嶺馨先生,我那覇仁先生のもと,多くの門下生が輩出されてきたが,その教育効果は沖縄県内に留まらず,全国さらには世界にまで及んでいる。その指導医たちの叡智を惜しみなく成書にして世間に知らしめた初版の後,版を重ねる年月とともに,中部病院卒業生たちがそれぞれの専門分野を極めていった臨床経験も加味され,まるで中部病院で研修したかのごとく,集約された豊富な知識・技能・実例が手に取れる書となっている。

救急の実臨床にうってつけサイズ
 救急車が際限なく到着する救急外来はレジデントが最も緊張する現場であろう。一瞬の休息もままならない環境下で,一刻も早く助けなければいけない命,即座に対応しなければいけない患者を的確に処置するためには,手元ですぐに答えが見つかるものがあると大変心強い。病態生理の把握に努めながら上級医に報告し,鑑別診断のための検査を提案,投与する薬用量を算出する時でも慌てないようになるのに,本書は頼れる味方となる。なぜなら,「小児救急」に頻度の高い20項目を割り当て,実臨床の場数を踏んだ経験に裏打ちされ,必要事項を無駄なく簡潔に,それでいてポイントを押さえた記述となっているからである。昨今はスマートフォンで検索するレジデントが多いが,検索した知識の記憶,保持が意外に難しく,短期間でスキルアップしていくには不向きである。一方,成書では一度調べた項目に付箋をつけておけば,同じ病態の症例に遭遇したら即座にページが開けるし,何度も見ているうちに記憶が保持されていく。本書は絶妙なサイズであり,長衣だけでなく短衣の白衣のポケットでも出し入れでき,まさに携帯性に優れたバイブルといえよう。

症例の充実,ピットフォールにも言及
 グローバルスタンダードの内容に初版から定評があることはいうまでもないが,「小児救急」の項目だけでなく,緊急性がある疾患についても「初期対応のポイント」がまとめられ,現場ですぐに役立つようになっている。また,本文中のフローチャート,図,表,写真のみならず,巻頭のカラー写真は鮮明な色彩の上に特徴をよく捉えたものを厳選しており,休憩時間に写真を見ているだけでも,バーチャル体験できる。「Instructive Case」では,成書の行間からは決して読み取れない,実践から得た教訓を提示し,百戦錬磨の指導医でも冷や汗をかくようなピットフォールに言及することでレジデントに警告をも与えている。

 本書を十二分に活用し,一日でも早く戦力として社会貢献できるレジデントが一人でも多く生まれることを期待する。

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