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プロメテウス解剖学アトラス 頭頸部/神経解剖 第3版

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解剖学アトラスの最高峰、プロメテウスシリーズの頭頸部・神経解剖が充実の改訂。歯科領域の記述が大幅に拡充。神経解剖の編は、構成が新たに練り直され、基礎的事項も丁寧に解説。臨床に関連するトピックも随所に追加。使い勝手が格段に増した改訂版は、医学生・医療系学生にとどまらず、臨床家の方々も手元に置きたい1冊。
*「プロメテウス/PROMETHEUS/プロメテウス解剖学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ プロメテウス解剖学
監訳 坂井 建雄 / 河田 光博
発行 2019年03月判型:A4変頁:610
ISBN 978-4-260-03643-6
定価 12,650円 (本体11,500円+税)

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第3版訳者序第4版序─プロメテウスで神経解剖学の楽しさを(新)発見!

第3版訳者序

 本書は『プロメテウス解剖学アトラス』第3版(原書第4版)の第3巻にあたる.第3版のうち第1巻の「解剖学総論/運動器系」は2017年1月にすでに刊行され,第2巻の「胸部/腹部・骨盤部」も刊行を準備している.本書の初版は,ドイツ語原書として2004年から2006年にかけて全3巻として出版され,圧倒的な実在感と清潔感を合わせ持つ解剖図によって,世界中に大きな衝撃を与えた.日本語版は2007年から2009年にかけて出版され,わが国の読者にも広く迎えられた.

 すぐれた解剖図は解剖学書の生命線であり,まさに解剖図の革新が新しい解剖学書を作り出してきたと言える.近代解剖学の出発点と目されるヴェサリウスの『ファブリカ』は,精緻で芸術的な木版画により生命を与えられ,17世紀から18世紀にかけての銅版画による精細な表現は,ビドローやアルビヌスによる傑出した解剖図譜を生み出してきた.19世紀の木口木版画によりもたらされた解剖図と本文を一体化した編集は,解剖学書に新たな生命を吹き込み,20世紀の写真製版の技術は,解剖図の新たな表現に無限ともいえる可能性を生み出してきた.『プロメテウス解剖学アトラス』の解剖図は,人間の手で描かれたものでありながら,人工のわざとらしさを感じさせない.まさに人智を尽くして自然を再現した21世紀という時代が生み出した解剖図の最高傑作である.

 原書の第4版は2014年から2015年にかけて出版されたが,最新の研究成果と学習者の使いやすさを考慮した改訂増補がなされている.本書第3巻は全体で50頁ほどが新たに追加され,増頁となっている.特に「頭頸部」で骨格・靱帯・関節の記載が拡充され,頭蓋の個別の骨についての頁が追加されている.また「神経解剖」では,総論と神経組織の記載が拡充されている.これらの改訂により,医学生に必要な事項を読者にわかりやすい形で提供するという『プロメテウス解剖学アトラス』のコンセプトはさらに強化された.見開き構成の中で視認性に優れた解剖図と文字情報を伝えるテキストをバランスよく有機的に配置すること,系統解剖学や臨床解剖学といった伝統的な枠組みに依拠せずに学習内容の重要度に応じて内容を選択したことなど,初版で実現された解剖学学習書の新しいスタイルを,よりよく生かすための改訂がなされている.

 本書「頭頸部/神経解剖」の翻訳にあたって,初版ではドイツ語版の他に英語版を参照することができた.これは翻訳を効率的に行うにあたって有利な事情であった.ドイツ語版と英語版の食い違いも少なからずあり,ドイツ系の解剖学と英語系の解剖学が異なる伝統を有することも,改めて知らされることとなった.今回の第3版では英語版が刊行されていないために,もっぱらドイツ語版に依拠することとなった.翻訳にあたっては,前版と共通する頁についての変更の有無の点検ならびに増頁部分の仮の翻訳を編集部が担当して原稿を作製し,それをもとに前版を担当した各訳者が最終的な原稿に仕上げるという段取りとし,最終的な調整を監訳者が行った.訳語については,原則として日本解剖学会監修『解剖学用語 改訂第13版』に準じるとともに,前版との整合性を可能な限り重視した.日本語訳にあたっては瑕疵のないように最善の努力をしたつもりであるが,至らぬところは監訳者の責である.

 訳者を代表して 坂井建雄,河田光博
 2018年12月1日


第4版序─プロメテウスで神経解剖学の楽しさを(新)発見!

 1990年,当時の米国大統領ジョージ・H・W・ブッシュ氏は「脳の10年(Decade of the Brain)」を宣言した(大統領布告6158参照).その出発点は,人間の脳の過程をよりよく理解することで,アルツハイマー型認知症やパーキンソン病のような疾患がなぜ発生するのか,なぜ麻薬中毒になる人がいるのか,さまざまな毒物がどのように脳に作用するのか,そして特に神経系および免疫系がエイズ発症においてどのように関わり合うのかという疑問を解決したいと願うものであった.

 「脳の10年」以降,早15年が経過した今日でも,その疑問の多くが解決しておらず,神経科学の研究で得られた数多くの知見は臨床での応用に成功していない.アルツハイマー病の治療法はいずれも臨床試験を通過しておらず,多発性硬化症は未だ十分に理解できていない.また,脳腫瘍の治療もここ10年ほど停滞しており,脳卒中や対麻痺の障害も満足のいく治療ができない状況である.

 こうした背景から,古典的な神経解剖学が再び注目されている.古典的な神経解剖学は,臨床での理解の基礎であり続けている─過去10年ほどの間に神経科学が急速に発展したのに比べて,すでに時代遅れとしばしば見なされてはいるが.

 プロメテウスは言うまでもなく,こうした古典的神経解剖学を扱うことで一種の「自己陶酔」を続けるつもりはない.有り難いことに著者らと出版社には,読者の皆さんから数多くの貴重な提案やコメントが寄せられており,それは神経解剖学分野にとどまらず,もう一つの大きなパートである「頭頸部」も同様である.このような読者の貢献があればこそ,プロメテウスのような書物は年余にわたって古びることなく,必然的に生じざるを得ない不足を補い続けることができる.

 プロメテウスの著者として,私たちは常に最新知識を吸収し,それを日常的な学習や診療に結びつける作業を続けている.例えば,第4版では頭蓋骨について新たな学習単元を追加し,すべての骨を個別に図示した.開いた口腔の局所解剖の単元では,美しい解剖図があるので,特に歯科医の方々に喜んでいただけるであろう.歯学生の解剖実習にもまた上質のプランを提供できると信じている.

 言うまでもなく,プロメテウスを読むことによって読者の誰かが,神経解剖学の数ある領域のどれかに,研究者としても関心をもっていただければ幸いである.新しい世代の医師が,まずは伝統にとらわれない考えをもつことが,おそらく科学に前進をもたらすのに不可欠であろう.「勇気をもって自分自身の悟性を使え」というよく引用されるイマヌエル・カントの言葉を用いることを,励みとしたいと思う.

 Michael Schüke, Erik Schulte, Udo Schumacher, Markus Voll, Karl Wesker
 Kiel, Mainz, Hambrug, München, Berlinにて
 2015年8月

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頭頸部
 1 概観
 2 骨,靱帯と関節
 3 筋系
 4 血管,リンパ管と神経
 5 器官とそれらの血管,リンパ管と神経
 6 局所解剖
 7 断面図

神経解剖
 1 序論
 2 神経細胞とグリア細胞の組織学
 3 自律神経系
 4 脳と脊髄の髄膜
 5 脳室系と脳脊髄液
 6 終脳
 7 間脳
 8 脳幹
 9 小脳
 10 脳の血管
 11 脊髄
 12 脳の断面解剖
 13 機能系

中枢神経系:用語集,要約
 1 用語集
 2 要約

付録
 文献
 索引

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理解を深める美しい解剖アトラス
書評者: 竹林 浩秀 (新潟大教授・神経生物・解剖学)
 このほど,『プロメテウス解剖学アトラス 頭頸部/神経解剖 第3版』が坂井建雄先生,河田光博先生の監訳にて発刊された。本書は,2009年の初版の発行以来,その美しい図にて知られてきた解剖学アトラスである。評者も初版,第2版を手元において,事あるごとに参考にしている。

 プロメテウス解剖学アトラスの特徴として,見開きページに美しい図譜を提示しており,眺めているだけで解剖学の理解が深まることが挙げられる。百聞は一見に如かず,という言葉にもある通り,一枚の印象的な図は,長く記憶にとどまる。初学の学生にとっては,手にとって眺めるだけでも,解剖学への手引きとなることであろう。それぞれの図譜は,単に美しいだけでなく,説明文もわかりやすく記述されている。随所に臨床にかかわる記載があるので,学生は解剖学の勉強が将来どのようにつながるのか理解し,興味を持って学べるように工夫されている。

 本書は,大きく分けて前半の「頭頸部」と後半の「神経解剖」に分かれている。いずれも,発生についての記載から,成体の構造と機能,そして,断面図などについてバランス良く章分けと記載がなされている。第3版では,頭蓋骨について新たな単元が追加され,全ての骨が個別に図示されており骨学を理解しやすくなっている。さらに口腔の局所解剖についても増補され,歯学を学ぶ学生にとっても役立つものと思われる。神経解剖においては,序論が増強され「神経細胞とグリア細胞の組織学」という章が独立し,より理解を助ける構成になった。巻末の中枢神経系の用語集は,用語の正しい学習に役立つものである。願わくば,この巻末の章に記載されている神経回路図は,細胞や神経核などの神経系の形態や解剖学的な位置関係も情報に含めながら記載すると,より直感的に理解しやすくなるかもしれない。しかし,この点は本書の完成度の高さにおいては,さほど影響するものではない。

 本書は,解剖学を学ぶ学生や解剖実習を行う学生に役立つのみならず,上級の学生あるいは,医師や医療従事者となってからも,長く使用できるアトラスであると考えられる。
プロメテウスが贈る美しき灯火
書評者: 篠田 晃 (山口大大学院教授・神経解剖学)
 プロメテウス解剖学アトラス第3巻頭頸部/神経解剖に,待望の日本語第3版(原著ドイツ語第4版)が世に出ることとなった。清楚で美しい図譜が定評の「プロメテウス」は,生理機能や病態・臨床的意義の理解までもめざした詳細な解剖学アトラスである。

 今回の最新版では,特に神経解剖と歯科口腔領域で目を見張る拡充と改訂がなされている。通常,解剖学シリーズの神経解剖領域は,その構造と機能の複雑さが故に中途半端感が残り,他の神経解剖学アトラスや専門書に道を譲ることになる。今回の改訂では最新の情報が加わり,全体の構成が再編された。特に序論が充実し,全体が見渡せるようになり,複雑な中枢神経系の構造の学習への心構えができる。中枢神経系の用語集と要約の大幅な増ページも嬉しい。初学者・学生諸君のみならず教師や研究者にとっても知識の整理として大変助かる。第3巻の神経解剖の章自体で神経解剖学の専門書・専門図譜のレベルに達している。

 また医学にとって盲点となりがちな口腔領域の充実した増ページも見逃せない。歯の発生と歯科診療の項が新たに追加され,X線写真と局所麻酔刺入点の写真が加わった。歯科医をめざす学生はもちろん,医学生や若手医師にとっても臨床的理解が助けられ,口腔領域の解剖が一層魅力的なものとなったであろう。

 神経解剖が対象とするのは中枢神経だけではない。脳を理解しようと思えば,末梢神経や感覚器や効果器,そしてそれらとの関係について学ばなければならない。頭頸部は特に顕在意識化された脳の高次機能の入出力の要である。こころを構成する認知や情動や能動について深い理解をめざすならば,この領域の詳細な有機的関係の理解が鍵を握っている。これらが一体化した第3巻は21世紀の脳科学・神経科学の礎を担っているといっても過言ではない。

 現実に出会う自然現象には無数の情報が含まれ本来複雑である。見えていても見えないものばかりである。科学的解析プロセスはその描写から始まるが,そのままでは真実の不完全な鋳型である。描写から説明文のついた図譜,シェーマ(図式)への過程で整理がなされ理解に至る。しかし同時に大切な真実が削ぎ落とされている事を忘れてはならない。そういう意味で,われわれは常に御遺体や体そのものに立ち返る必要がある。図譜というものは,真の人体の描写とシェーマを結びつける位置付けにある。描写に近い図譜もあれば,シェーマに近い図譜もある。

 「プロメテウス」の美しさは,描写の側面とシェーマの側面を持ちあわせ,両者を上手くつなぐ整合美にあると言える。特にこの巻の神経解剖は,精緻な図譜とシェーマの絶妙な組み合わせにより,構造と機能が一体のものであるとわかる。これが解剖学図譜を芸術の域に高め,読者を惹き付けて止まぬゆえんである。

 翻訳版はともするとその過程で原著のエッセンスを失う危惧がある。英訳を介するとなおさらである。今回はドイツ語原著から直接の翻訳であり,訳者に神経解剖学や歯科解剖学の錚々たる面々が参加している。日本語の説明文は,損なうどころかさらに理解を助ける言葉が散りばめられている。

 プロメテウスはゼウスの反対を押し切り,哀れで愚かなる人類に人体が理解できるよう,未来を照らす神の灯火を与えてくれた。解剖学図譜の至高の大傑作である。

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