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認知行動療法トレーニングブック[DVD/Web動画付] 第2版

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CBTを勉強したいと考えている方に、とにかくお勧めの1冊です。基礎理論、実践方法はもちろん、治療者が燃え尽きないための対処法まで、CBTのすべてが詰まっています。本書の最大の魅力は、23編、計200分の付録動画です。米国の第一人者たちが自分の面接法を惜しげもなく披露していて、動画を眺めているだけでも臨床で使えるヒントがたくさん手に入ります。全動画、WEBでもDVDでも視聴可能でとっても便利!
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大野裕先生による研修会のお知らせ

認知行動療法のエッセンスが学べる、本書を用いた研修会が開催されます。
講師は本書の監訳者・大野裕先生です。「通年研修」と「週末2日間研修」の
2つのコースがあり、ご都合に合わせてお選びいただけます。

「動画で学ぶ通年研修」
2019年5月から毎月1回、計11回のコース
https://stress-management.co.jp/video/vtrcourse/

「動画で学ぶ週末2日間研修」
2019年3月23日(土)、24日(日)の短期集中コース
https://stress-management.co.jp/video/vtrcourse2days/

受講資格:認知行動療法に関心を持っている方
講師:大野裕(認知行動療法研修開発センター理事長)
主催:ストレスマネジメントネットワーク
詳しい情報およびお申込はストレスマネジメントネットワークのwebサイトをご覧ください。
https://stress-management.co.jp/

監訳 大野 裕 / 奥山 真司
磯谷 さよ / 入江 美帆 / 奥山 祐司 / 川崎 志保 / 工藤 寛子 / 齋藤 竹生 / 柴田 枝里子 / 森下 夏帆
発行 2018年11月判型:A5頁:394
ISBN 978-4-260-03638-2
定価 9,900円 (本体9,000円+税)

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  • 序文
  • 目次
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第2版 監訳者の序

 10年あまりの歳月を経て改訂された本書に目を通したとき,私はよい意味で強いショックを受けた.第2版では,初版の内容に丁寧に手が加えられていて,すでに完成形に近かった初版をはるかにしのぐ優れた内容になっていたからだ.
 本書は,米国精神医学会がレジデント(研修医)の教育で必須としている認知行動療法の教科書として出版されただけあって,認知行動療法を勉強したいと考えている初心者だけでなく,すでに経験を積んでいる専門家にも役に立つ貴重な実践的助言がじつに多く含まれている.
 米国で『認知行動療法トレーニングブック』が刊行されることになったのは,精神科のレジデントの精神療法のトレーニングのなかで,認知行動療法の研修が必須になったことがきっかけだった.その研修では,まず支持的精神療法を身につけたうえで認知行動療法と精神力動的精神療法を学ぶことになっている.そのためのテキストとして,本書,そして『動画で学ぶ 支持的精神療法』(医学書院)や『精神力動的精神療法 基本テキスト』(岩崎学術出版社)が出版・邦訳されている〔続いて,認知行動療法の領域では『認知行動療法トレーニングブック 統合失調症・双極性障害・難治性うつ病編』『認知行動療法トレーニングブック 短時間の外来診療編』(ともに医学書院)が出版・邦訳されている〕.
 これらの書籍で特に印象的だったのが,面接場面のビデオが提供されていたことだった.認知行動療法に限ったことではないが,わが国では,精神療法の勉強に不可欠と考えられる実際の面接場面への同席やスーパービジョンはごく限られていた.そのために,精神療法を勉強しようとする多くの臨床家はテキストを読んで勉強するしかなかった.
 しかし,いくら丁寧に説明されていても文字で伝えられる情報はごく限られている.その文章を読んでいるそれぞれの人の受け取り方によって,その内容は大きく変わってくる.頭で考えるだけでは全く不十分だし,思いがけない誤解が生まれる可能性があることは,認知行動療法がまさに指摘していることだ.
 百聞は一見にしかず.映像を通して面接を見ることは,実際に認知行動療法の面接に同席できない臨床家にとって大きな力になる.ビデオを効果的に使って情報を提供していた本書の初版に刺激を受けて,私たちも自分たちのロールプレイの映像を活用した研修を続けている.その研修の様子は,一般社団法人認知行動療法研修開発センターのホームページで見ていただくことができる.
 そのビデオだが,第2版では全面的に刷新されている.それも米国の精神科レジデント教育の全国組織American Association of Directors of Psychiatric Residency Programsのプレジデントを務めているDurexel大学教授のDonna Sudakなどの第一人者が面接者として登場している.米国の認知行動療法の第一人者の認知行動療法面接を実際に見て確かめることができる貴重な資料だ.
 頭のなかの考えにとらわれず,現実に目を向けるというのは認知行動療法の治療者の基本的な姿勢である.ビデオの視聴がその助けになるのは間違いない.ぜひ,動画を通して認知行動療法の基本を学び,自分の面接を振り返り,さらにはそれを題材に仲間とディスカッションするなどして,認知行動療法の臨床家としてのスキルアップを続けてほしい.
 なお,ビデオ動画の会話が本文中に多く使われていて,ビデオと本文が融合して作られていることがわかる.訳出にあたっては,ビデオの日本語字幕には表示秒数に限りがあるため,動画を見ながらスムーズに読み取れるように文章を調整した.一方,本文は会話の内容を正確に反映できる形で訳出した.
 最後になるが,改訂版の翻訳にあたっては,トヨタ自動車株式会社の統括精神科医の奥山真司先生とそのスタッフに全面的に協力していただき,英語版の出版からあまり時間をおかずに出版することができた.認知行動療法を活用しているすべての臨床家に本書を活用していただくことを心から願っている.

 2018年9月
 監訳者を代表して
 大野 裕

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1 認知行動療法の基本原則
 CBTの起源
 認知行動モデル
 基本概念
 うつ病と不安症にみる情報処理
 治療法の概要
 まとめ

2 治療関係治療における協働的経験主義
 共感性,温かさ,そして誠実さ
 協働的経験主義
 CBTにおける転移
 逆転移
 まとめ

3 アセスメントと定式化
 アセスメント
 CBTにおける事例の概念化
 まとめ

4 構造化と教育
 CBTの構造化
 CBTのコース全体を通じたセッションの構造化
 心理教育
 まとめ

5 自動思考に取り組む
 自動思考の同定
 自動思考の修正
 まとめ

6 行動的手法 I 気分の改善,活力増加,課題遂行および問題解決
 行動的アクションプラン
 活動スケジュール作成
 段階的課題設定
 行動リハーサル
 問題解決
 まとめ

7 行動的手法 II 不安の抑制および回避パターンの打破
 不安症および関連した状態の行動分析
 行動的治療法の概要
 不安症状に対する行動的介入の順序づけ
 段階的暴露のためのヒエラルキー作成
 イメージ暴露
 現実暴露
 反応妨害
 報酬
 まとめ

8 スキーマの修正
 スキーマの特定
 スキーマの修正
 成長志向的CBT
 まとめ

9 自殺のリスクを軽減するための認知行動療法
 絶望的になっている患者にCBTに取り組んでもらう
 CBTの情報を提供する
 治療に対するコミットメントを強める
 自殺リスクのスクリーニングとアセスメント
 安全対策
 生きる理由
 希望キットを作り出す
 自動思考と中核信念を修正する
 自殺のリスクを軽減させる行動的な手法
 スキルの強化と再発予防
 自殺する危険のある患者を治療する苦しさへの対処
 まとめ

10 重度,慢性または複合的な障害を治療する
 重度,反復性,慢性および治療抵抗性うつ病
 双極性障害
 パーソナリティ障害
 物質使用障害
 摂食障害
 統合失調症
 まとめ

11 CBTにおけるコンピテンシーの向上
 CBTにおけるコアコンピテンシー
 有能な認知行動療法家への道
 進捗状況の評価
 CBTにおける継続的な経験の蓄積およびトレーニング
 治療者の疲労または燃え尽き
 まとめ
 第11章の付録 認知療法尺度

付録1 ワークシートおよびチェックリスト
付録2 認知行動療法のリソース

索引

Troubleshooting Guide
 1.アジェンダに取り組む際の課題
 2.セッションのペース調整の難しさ
 3.ホームワークの実施に伴う問題
 4.暴露療法における問題
 5.服薬アドヒアランスの問題
 6.燃え尽きを回避する

Learning Exercise
 1-1.自動思考の認識:3つのコラム思考記録表
 3-1.CBT事例定式化ワークシート
 4-1.CBTの構造化
 4-2.CBTにおける心理教育
 5-1.自動思考の同定
 5-2.根拠の検証
 5-3.思考変化記録の利用
 5-4.合理的な別の考えを作り出す
 5-5.脱破局視および再帰属
 5-6.認知的リハーサルとコーピングカード
 6-1.活動スケジュール作成
 6-2.課題遂行
 7-1.リラクセーショントレーニング
 7-2.呼吸の訓練
 7-3.暴露療法
 8-1.中核信念に関する質問技法
 8-2.自動思考のパターンからスキーマを発見する
 8-3.スキーマ調査票を用いた自己チェック
 8-4.個人のスキーマリストの作成
 8-5.長所と短所をあわせもつスキーマの特定
 8-6.スキーマの修正
 9-1.自殺リスク軽減のためにCBTの手法を使う
 11-1.CBTにおけるコンピテンシーの自己評価
 11-2.認知療法尺度の使用
 11-3.事例定式化の練習

video
 1.治療開始―実際の認知行動療法の様子 ライト医師とケイト(12:26)
 2.自動思考の修正 ライト医師とケイト(8:47)
 3.アジェンダ設定 ウィッチマン医師とメレディス(3:25)
 4.アジェンダ設定の難しさ ブラウン医師とエリック(2:52)
 5.自動思考を引き出す スダック医師とブライアン(9:15)
 6.思考記録に伴う困難 ブラウン医師とエリック(6:38)
 7.心的イメージを用いて自動思考を明らかにする ブラウン医師とエリック(6:53)
 8.根拠の検証 スダック医師とブライアン(12:06)
 9.合理的な考えを生み出す スダック医師とブライアン(8:48)
 10.合理的な考えを見つけ出す難しさ ブラウン医師とエリック(10:41)
 11.認知的リハーサル ライト医師とケイト(9:40)
 12.行動的アクションプラン ウィッチマン医師とメレディス(3:43)
 13.活動スケジュール作成 ウィッチマン医師とメレディス(9:41)
 14.活動スケジュール作成を用いる際の問題 チャップマン医師とチャールズ(8:14)
 15.段階的評価課題を展開する チャップマン医師とチャールズ(7:48)
 16.パニック発作に対する呼吸の訓練 ライト医師とケイト(7:48)
 17.不安に対する暴露療法 ライト医師とケイト(10:04)
 18.強迫症のイメージ暴露 ヘンブリー医師とミア(9:38)
 19.強迫症に対する現実暴露治療 ヘンブリー医師とミア(8:35)
 20.非適応的スキーマを明らかにする スダック医師とブライアン(12:19)
 21.非適応的スキーマの修正 スダック医師とブライアン(12:22)
 22.修正したスキーマを行動に組み込む スダック医師とブライアン(10:45)
 23.安全対策 ブラウン医師とデヴィッド(8:33)

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臨場感を持って認知行動療法の一連の流れを理解できる
書評者: 岡本 泰昌 (広島大教授・精神神経医科学)
 日本の精神医学・医療のレジデント教育において精神療法のトレーニングは,熟練した上級医の診療に陪席した際の経験,その道に秀でた精神療法家が執筆した書物や講演会・研修会を通じて蓄えられ知識をもとにして,目の前の患者さんに向き合った実際の自己の精神療法の体験を積み重ねによって行われていることが多い。一部のレジデントは幸運にも熟練した上級医によるスーパービジョンといった系統立ったトレーニングを受けているかもしれないが,多くのレジデントにそのような機会は与えられていないのが現実であろう。これに対して,米国における精神科レジデントの精神療法の研修内容をみると,施行できる技法として,支持的精神療法に加え,認知行動療法も要求されており,研修方法として上級治療者の治療への陪席,逐語,録音テープ・録画ビデオを利用したスーパービジョンが明確に規定されている。

 本書が米国で刊行されるきっかけは,この精神科レジデントの精神療法のトレーニングの中で認知行動療法が必須化されたことである。第一線の認知行動療法の治療者でもあると同時に,さまざまな認知行動療法の効果検証を行っている一流の研究者でもある本書の著書らは,「認知行動療法の中心的なスキルを学ぶことができる使いやすい手引き書を提供し,読者がこの治療法を実施する能力を獲得できるように手助けすること」を目的として本書を出版した。そのため本書は米国精神医学会の出版局による認知行動療法の教科書的な書籍と考えられている。

 本書の特筆すべき点は,認知行動療法の重要なエレメントや治療技法が,単元ごとにまとめられ,それぞれの単元に対応するビデオ動画が収められていることである。しかもビデオ動画での会話の様子が本文中にも多く使われ,会話の意図やその背景がすんなり理解しやすい形式となっている。ビデオ動画には監訳者・訳者の工夫により適切な日本語字幕がついているため,海外のこの手のビデオ動画にありがちな違和感を感じることがなくスムースに視聴することができる。まさに熟練した認知行動療法の治療者の診療場面を,詳細なわかりやすい解説付きで陪席している感覚に近い(しかも何度も見返すこともできる)。

 米国とは異なり,実際に認知行動療法の診療場面に同席できない多くのわが国の精神科レジデントにとって,ビデオ動画を通して認知行動療法の診療場面を伺い知ることや臨場感を持って認知行動療法の一連の流れを理解することは,極めて有用な機会となるであろう。また,ビデオ動画には,認知行動療法に詳しい方ならよく名前を知っている米国の認知行動療法家も出演しており,彼らの診療の様子や治療工夫を見ることができる。したがって本書は精神科レジデントだけでなく,すでに認知行動療法を活用している全ての臨床家にとってもスキルアップにつながる機会を提供してくれる良書である。
全編新作の付録動画で治療者の基本姿勢が身につく
書評者: 川﨑 康弘 (金沢医大主任教授・精神神経科学)
 認知行動療法はうつ病や不安障害をはじめとした精神障害の治療として優れていることが国内外で証明されてきており,欧米では精神障害の治療において認知行動療法は第一選択の治療のひとつと位置付けられている。わが国でもうつ病において診療報酬請求が認められるなど,精神科医や看護師,臨床心理士が身につけておくべき,または提供可能な重要な治療法として位置付けられるようになってきた。本書は,米国精神医学会が研修医の教育で必須としている認知行動療法の教科書として企画されたものであり,認知行動療法を学びたいと考えている初心者だけでなく,すでに経験を積んだ専門家にも役に立つ貴重で実践的な知識や技法が紹介されている。初版から10年ほどで改訂された第2版は,完成された内容を持つ初版に,認知行動療法をめぐる最近の動向や時代の要請を反映して加筆修正がなされており,例えば自殺リスク軽減を扱った章などはそれに相当するものであろう。

 本書の特に優れている点は面接場面のビデオが提供されていることである。治療法を理解するために,テキストから得られる治療法に関する知識と,実際に行われている治療場面を結び付けることは,極めて効果的な学習法である。初版では19の診療場面が収録されており,治療のカギとなるような特徴を扱った短い診療場面から構成され,関連する解説を読んでからビデオを視聴することが勧められていた。第2版でも臨床家と患者とのやり取りが全く新しい23編のビデオとして収められており,同様の学習法により理解が深まるように作られている。精神療法の修得に不可欠と考えられる面接場面への同席の機会はごく限られているのがわが国の現状であり,初版を購読された方々には第2版のビデオを視聴して経験を深めていただくことをお薦めする。

 ビデオで役割を演じているのは趣旨に賛同した臨床家たちであり,選択された場面もまさに臨床で遭遇する場面である。そして,単なる言葉のやり取りだけではない治療者の視線や表情,間合い,言葉遣いなどから,患者の話を傾聴し,共感し,治療標的とする問題を言葉にしていく作業が繰り返され,診療の基本が実践されている様子を確認することができる。治療関係の構築から始まるビデオの診療場面は,認知行動療法の中心的な技法を習得できるように配列されており,後半ではより高度な技法に関する紹介もなされている。

 今後わが国でも認知行動療法が広まり,さらに精神医療が成熟していくためには,本書に示されたような治療者としての基本的姿勢が広く浸透することが望まれる。すなわち,専門的な認知行動療法の技法を有効に実施できるためには,良好な治療関係を形成できる精神療法の基本的な知識や技術の修得が必須であることを,米国の認知行動療法の第一人者たちのビデオが示しており,そのことを実感させる貴重な機会を与えてくれる優れた著作である。
『精神療法』誌(金剛出版)の書評欄より
書評者: 下山 晴彦 (東京大学)
 絶対にお買い得の本です。その理由は,以下の通りです。

 1)何といっても,認知行動療法のマスターセラピストによる面接場面の200分の動画付きであることです。読者は,本書の解説を読んで技法のポイントを学びます。そこには映像教材のどの部分を視聴するかが示されています。読者は,その映像を観ることで,マスターセラピストの臨床に陪席して技法を学ぶのと同一の体験ができるのです。翻訳はわかりやすい日本語となっているので,実践場面でのコミュニケーションを具体的に学ぶことができます。これは,読者にとっては,とてもありがたい学習経験となります。

 2)認知行動療法の基本から応用までが,無駄なく,しかも読みやすく解説されています。まず1章で認知行動療法の基本原則がまとめられています。これから認知行動療法を学ぼうとする人にとっては,この章があることで学習ガイドを得ることができます。2章では治療関係として協働的経験主義が説明されます。共感性,温かさ,そして誠実さの重要性が示されます。そして,3章でアセスメントと定式化,4章で構造化と教育,5章で自動思考に取り組む,6章で行動的手法Ⅰ:気分の改善,活力増加,課題遂行および問題解決,7章で行動的手法Ⅱ:不安の抑制および回避パターンの打破,8章でスキーマの修正,9章で自殺のリスクを軽減するための認知行動療法,10章で重度,慢性または複合的な障害を治療する,11章でCBTにおけるコンピテンシーの向上,となっています。目次だけ読んでも,ここに認知行動療法のすべてが整理されて解説されていることがわかります。

 3)痒いところに手が届くような,読者に親切な解説がされています。本書は,米国精神医学会出版局の認知行動療法の教科書の第2版です。第2版ということで,読者の疑問に丁寧に応えるように内容が改善されるとともに,マインドフルネスや弁証法的行動療法といった最新の動向も踏まえての改訂がなされています。ですので,既に認知行動療法を実践している中堅以上のセラピストの皆さんにとっても学ぶことの多い内容となっています。

 4)認知行動療法の技法を実践するためのマニュアルとツールが豊富に記載されています。たとえば242頁には,ソクラテス的質問法と関連してスキーマに対する根拠を検証する方法の手順が10項にわたって具体的に記載しています。しかも事例付きで触説されるので,すぐに使えるマニュアルとなっています。また,事例定式化ワークシート等,すぐに臨床で使えるツールがたくさん巻末に付録として掲載されています。

 5)最後に,ベテランの認知行動療法セラピストにとって役立つ情報です。それは,本書で解説され,例示されている方法は,あくまでも米国における認知行動療法の典型例であるということです。日本で多くの臨床経験をもつセラピストは,面接映像を観て日本とは少し違うなということも感じると思います。その少し違うという感覚を手掛かりに,日本文化に適した認知行動療法を発展させる契機を確認できます。認知行動療法を日本の文化に根ざして発展をしていくことを意識するためのヒントを得る資料として活用できるのが本書の素晴らしさです。ぜひ,多くの方が本書を読み,本書の動画教材を観て真の認知行動療法を習得できることを期待しています。

初出:『精神療法』誌(金剛出版)第45巻第3号(2019年)112~113頁

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