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実践!皮膚病理道場2 バーチャルスライドでみる炎症性/非新生物性皮膚疾患[Web付録付]

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日本皮膚科学会総会の好評教育講演の書籍化第2弾! 今回は、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹、薬疹、天疱瘡、乾癬、ガングリオン、ヘルペスウイルス感染症、白癬、疥癬など、炎症性/非新生物性の皮膚疾患を収載。本書で観察すべきポイントを把握したうえで、Web付録のバーチャルスライドを観察することにより、病理診断のプロセスを身につけることができる。ビギナーからエキスパートまで必読の1冊。
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編集 日本皮膚科学会
発行 2018年05月判型:A4頁:248
ISBN 978-4-260-03533-0
定価 13,200円 (本体12,000円+税)

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(島田眞路)/刊行のことば(土田哲也)/制作責任者のことば(山元 修)/本書の特徴と使い方(安齋眞一)



 『実践! 皮膚病理道場 バーチャルスライドでみる皮膚腫瘍』に引き続き,『実践! 皮膚病理道場2 バーチャルスライドでみる炎症性/非新生物性皮膚疾患』の刊行に際しごあいさつ申し上げます.
 皮膚病理学は皮膚科臨床医にとって最も重要な分野の1つです.皮膚病理を理解することなく皮膚科の臨床を修得するのは不可能です.そのため,日本皮膚科学会専門医試験でも皮膚病理の問題は必ず出題されます.また面接試験でも重要な位置を占めています.
 このように皮膚病理は重要ですが,いざ学ぶとなると,また教えるとなるとなかなか困難を伴うのも事実です.実際,顕微鏡をみながら1対1で習うのが理想ではありますが,この理想にできる限り近づけたのが本書だと思います.
 バーチャルスライドで各疾患を十分に学べるのが本書の特徴です.難易度別にA,B,Cと段階を踏んで,できる限り平易に,しかも深く・楽しく学べるように工夫されています.
 第112回日本皮膚科学会総会(川島眞会頭)の際に道場が開講し,第113回岩月啓氏会頭に引き継がれ,それらの内容をまとめた皮膚腫瘍編が2015年に完成しました.そして第114回古川福実会頭,第115回中川秀己会頭,第116回相場節也会頭のもとに開かれた道場での講義内容をまとめてでき上がったのが本書,炎症性/非新生物性皮膚疾患編です.いずれも埼玉医科大学 土田哲也教授,日本皮膚病理組織学会理事長の鳥取大学 山元修教授,日本医科大学武蔵小杉病院 安齋眞一教授が制作責任者を務められ,日本皮膚病理学会会員の多くの先生方が参画されています.
 1冊目で皮膚腫瘍を,2冊目の本書で炎症性/非新生物性皮膚疾患を学べば皮膚病理の真髄をつかんだことになるものと思います.
 これから学ぶことになる専攻医の先生方にも,また,教える側の専門医にとっても貴重な2冊となるものと考えます.

 平成30年4月
 日本皮膚科学会理事長 島田眞路


刊行のことば

 『実践! 皮膚病理道場』シリーズ第2弾がいよいよ刊行となりました.第1弾で皮膚腫瘍を学んだ皆様には,待望の炎症性/非新生物性皮膚疾患編だと思います.あるいは,わかりにくい炎症性皮膚疾患の病理をやさしく学べる本はないかと探していた方にも福音をもたらす1冊です.
 「実践! 皮膚病理道場」は,2013年の第112回日本皮膚科学会総会(川島眞会頭)において,実際に病理標本を観察しながら学ぶ双方向性の皮膚病理診断実習の場として始まりました.他人の技をみるばかりでなく,自分で実践することで初めて技を身に付けることができるという意味で名づけられたこの道場には多数の方が入門してくださいました.その後,歴代の会頭の皮膚病理に対する深いご見識とご高配により,この道場は現在も総会のたびに開かれています.その会頭から道場運営を一任されてきたのが,道場の師範である日本皮膚病理組織学会理事長の山元修教授です.皮膚科診療に必須の皮膚病理を若い皮膚科の先生方にぜひ学んでもらいたいという強い使命感をもった師範の考えに共鳴し,日本皮膚病理組織学会スタッフが一丸となって道場の運営に携わってきました.道場では実際に病理標本をみている若い先生方に,多くの皮膚病理専門家が寄り添い,マンツーマンで教授する光景が毎回繰り返されています.そういった道場をマネージメントし,取り仕切ってきたのが,師範代の安齋眞一教授です.道場で実施してきた学習は,すべて安齋教授が企画立案してきたものです.
 実際に道場に参加された先生方は,その選び抜かれた教材の見事さに感銘を受けたのではないかと思います.今回も11名の先生方から素晴らしい教材を,しかも無償でご提供いただきました.その志の高さに敬意を表したいと思います.道場で使用した教材を使って,さらに多くの皮膚病理を学ぼうと志す先生方に,臨場感あふれる皮膚病理の学習をしていただきたいという執筆者の願いがこもっているのが本書です.PCで病理標本のバーチャルスライドを実際にみて自分で考えながら,ツボを心得た絶妙の解説で所見を確認することで,間近で技のアドバイスを受けているような気持ちにさせられます.この書では,その繰り返しによって,気付いたら,炎症性疾患について一端の剣豪になっているという仕掛けがふんだんに組み込まれています.
 炎症性疾患の皮膚病理は,皮膚科医が最も精通すべき領域です.というのも,炎症性皮膚疾患は,臨床所見と合わせて初めて正確な判断ができる領域だからです.診断能力が最も試される場といっても過言ではありません.とはいえ,つかみどころのなさから,避けてしまう方も多いかもしれません.しかし,そのようにみえる炎症性疾患の皮膚病理も,逃げずに手合わせしてみると,意外と相手の様子がわかるようになるものです.この書は,魅力的なバーチャルスライドに惹かれて自然にその手合わせができるように仕向けてくれます.まずは,懐に飛び込んでみることです.様子がわかれば,面白さもわかってきます.
 本書は,皮膚病理に苦手意識をもっていらっしゃる先生,これから皮膚病理を極めようとする意欲満々の先生,いずれの方にも目から鱗の経験を積み重ねていただける,稀有な書です.取り組んだ後には,これが免許皆伝書であったのかと実感してもらえるはずです.多くの先生方が,道場の門を叩いてくださることを心より願っています.

 平成30年4月
 土田哲也


制作責任者のことば

 いよいよ待望の『実践! 皮膚病理道場』の書籍化第2弾が刊行されます.第1弾は皮膚腫瘍に焦点を絞ったものでしたが,今回は非腫瘍性疾患(主に炎症性皮膚疾患)に焦点を絞っております.この2巻にわたる画期的な書籍の刊行までの経緯については,既刊の皮膚腫瘍編で述べておりますので詳細は割愛いたしますが,日本皮膚病理組織学会の若手育成事業の一環として,バーチャルスライドを用いた学習プログラムである「実践! 皮膚病理道場」が第112回日本皮膚科学会総会にて川島眞会頭のリーダーシップにより初めて実現し,その後の年次総会でも各会頭に連続してプログラムに取り入れていただき,いずれも盛況であったことを受け,書籍化が実現しました.
 本書は,第114回(古川福実会頭),第115回(中川秀己会頭),第116回(相場節也会頭)の3回にわたる日本皮膚科学会総会での内容をまとめております.執筆陣である,阿南隆,大迫順子,浅井純,田中麻衣子,栁原茂人,石河晃,小川浩平,古賀佳織,鶴田大輔の各先生にはまったくのボランティアで素晴らしい内容に仕上げていただいており,この場を借りて厚く御礼申し上げます.なお,本書には,日本皮膚病理組織学会若手育成事業の担当理事であり,次期理事長に就任される安齋眞一先生,ならびに不肖山元も執筆陣に名前を連ねていることを申し添えておきます.さらに,本書刊行に際し,日本皮膚科学会の全面的バックアップをいただいており,その点で島田眞路理事長に深謝申し上げます.
 本書では,病理組織診断が苦手という初心者にも取り組みやすいよう,わかりやすい解説に徹し,またできる限り美麗な標本を厳選しております.ぜひとも若い皮膚科医は本書を手にとっていただき,画面上で典型的な病理組織標本を実体験し,その美しく緻密な世界を体験していただきたいと思います.

 平成30年4月
 山元 修


本書の特徴と使い方

 『実践! 皮膚病理道場』の書籍化第2弾,炎症性/非新生物性皮膚疾患編を上梓する.第1弾の皮膚腫瘍編と同様,本書の最大の特徴は,ネット上で観察できるバーチャルスライドデータが付属していることである.各標本データをみながら本書に記載されている病理組織所見を確認し,各疾患の病理診断のポイントを修得することが本書の基本的な使い方である.
 第1弾同様,本書は,さまざまな疾患を網羅的に解説するいわゆる教科書ではないため,取り上げている疾患に若干の偏りがある.学習対象とする疾患の選定基準として,皮膚病理初学者が知っておくべき疾患,そして日常診療で比較的目にすることの多い疾患を第一に考えた.また,比較的稀なものであっても,病理組織診断を学ぶうえで,重要な所見や考え方を含む疾患については取り上げている.そのため,本書に述べられている各疾患の病理組織学的所見は,各疾患の最大公約数的所見ではなく,バーチャルスライドで実際に観察してもらう標本における所見を記載している.すなわち,教材として使われている標本は,各疾患の定型的な病理組織像をもつものであるが,必ずしも各疾患で出現が予想される所見をすべて備えているわけではない.したがって各疾患の病理組織診断のポイントについてさらに理解を深めるためには,いわゆる教科書的な書籍も併用するとよい.次頁には,各疾患において有用と思われるいわゆる“教科書”を列記しておくので,参考にしてもらいたい.
 さらに,本書では,疾患を難易度別にA,B,Cの3段階に分けている.レベルAは,基本的かつ日常診療でよく遭遇する疾患を並べている.初学者は,ここから順序よく観察し,理解していくことをお勧めする.レベルBは,レベルAの応用編とでもいうべきランクの疾患である.レベルAほどの頻度で遭遇するわけではないが,比較的遭遇する機会の多い疾患や,レベルAで取り上げた疾患の亜型などが含まれている.レベルCには,さらに難易度の高い疾患が含まれ,専門医試験受験直前程度の実力をもった皮膚科医が身に付けておくべき疾患が含まれている.ただし,これらの疾患の病理診断の理解が,専門医試験の受験に必要にして十分であるという意味ではないので,誤解のないようにされたい.
 また,標本によってはその疾患の診断とは直接関係のない正常組織に関する説明が,各項目の末尾に挿入されている場合がある.これらの所見に関しても,標本を観察して確認し,自分のものにしていただきたい.
 以上,簡単に本書の企画意図と制作責任者らの想定した使い方について説明した.これはあくまで制作責任者らの想定であり,皆さんは個人個人の方法で本書を十分に活用し,皮膚病理学あるいは皮膚病理診断学に関して,少しでも理解を深め,さらには興味をもっていただければこれに過ぎる喜びはない.

 平成30年4月
 安齋眞一

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レベル A
 1 境界部皮膚炎
  空胞型境界部皮膚炎,薬疹・ウイルス性発疹症
    interface dermatitis, vacuolar type, drug or viral eruption
  多形(滲出性)紅斑 erythema (exudativum) multiforme
 2 脂肪織炎
  結節性紅斑 erythema nodosum
 3 肉芽腫性炎症
  サルコイドーシス(結節型) sarcoidosis, nodular type
  サルコイドーシス(瘢痕浸潤型) sarcoidosis, scar infiltration
  サルコイドーシス(皮下型) sarcoidosis, subcutaneous type
  環状肉芽腫(palisaded type) granuloma annulare, palisaded type
  壁の断裂した毛包嚢腫 suppurative granulomatous inflammation, secondary
    to ruptured follicular cyst
  異物肉芽腫(棘に対する異物反応) foreign body granuloma(foreign body
    reaction to the splinter)
 4 血管炎とその類症
  小血管の白血球破砕性血管炎 small vessel leukocytoclastic vasculitis
  コレステロール塞栓 cholesterol embolism
 5 海綿状態を呈する・血管周囲のみ炎症細胞浸潤がある炎症性疾患
  アレルギー性接触皮膚炎 allergic contact dermatitis
  貨幣状湿疹 nummular dermatitis
  汗疱 pompholyx
 6 乾癬様パターンをとる炎症性疾患
  尋常性乾癬,最盛期病変 psoriasis vulgaris, fully developed
  慢性単純性苔癬 lichen simplex chronicus
  結節性痒疹 prurigo nodularis
 7 水疱症または棘融解をきたす疾患
  尋常性天疱瘡 pemphigus vulgaris
  落葉状天疱瘡 pemphigus foliaceus
  水疱性類天疱瘡 bullous pemphigoid
 8 膿疱症および好中球・好酸球浸潤を特徴とする疾患
  膿疱性乾癬 pustular psoriasis
  好酸球性膿疱性毛包炎(太藤) eosinophilic pustular folliculitis (Ofuji)
  蕁麻疹(いわゆる蕁麻疹様紅斑を含む) urticaria (urticarial erythema)
 9 脱毛症
  先天性皮膚欠損(続発性瘢痕性脱毛症) aplasia cutis congenita of the scalp
    (secondary cicatricial alopecia)
  禿髪性毛包炎(瘢痕性脱毛症) folliculitis decalvans (cicatricial alopecia)
  円形脱毛症(非瘢痕性脱毛症) alopecia areata (noncicatricial alopecia)
 10 沈着症・代謝異常症
  ガングリオン ganglion
  指趾粘液嚢腫 digital mucous cyst
  眼瞼黄色腫 xanthoma palpebrarum (xanthelasma)
  表皮下石灰化結節 subepidermal calcified nodule
 11 皮膚感染症(細菌・ウイルス)
  ヘルペスウイルス感染症 herpes virus infection
  伝染性軟属腫 molluscum contagiosum
 12 皮膚感染症(真菌)
  皮膚糸状菌感染症(白癬) dermatophytosis (tinea)
  癜風 tinea versicolor
  急性表在性カンジダ感染症 acute superficial candida infection
 13 寄生虫性皮膚疾患
  虫刺症型反応(虫刺症) arthropod reaction (insect bite)
  疥癬 scabies
  マダニとマダニ咬症反応 tick and tick bite reaction

レベル B
 1 境界部皮膚炎
  扁平苔癬 lichen planus
  円板状紅斑性狼瘡 discoid lupus erythematosus (DLE)
 2 脂肪織炎
  外傷性脂肪壊死(外傷性脂肪織炎) traumatic fat necrosis
    (traumatic panniculitis)
  深在性エリテマトーデス(ループス脂肪織炎) lupus erythematosus profundus
    (lupus erythematosus panniculitis)
 3 肉芽腫性炎症
  リウマチ結節 rheumatoid nodule
  リポイド類壊死症 necrobiosis lipoidica
 4 血管炎とその類症
  慢性色素性紫斑(Schamberg病) persistent pigmented purpuric dermatitis
    (Schamberg’s disease)
  血栓を伴う静脈 thrombosed vein
  リベド血管炎 livedo vasculitis
 5 海綿状態を呈する・血管周囲のみ炎症細胞浸潤がある炎症性疾患
  遠心性環状紅斑 erythema annulare centrifugum
  Gibertバラ色粃糠疹 pityriasis rosea, Gibert
  自家感作性皮膚炎 autosensitization dermatitis
 6 乾癬様パターンをとる炎症性疾患
  尋常性乾癬,早期病変 psoriasis vulgaris, early lesion
  脂漏性皮膚炎 seborrheic dermatitis
  慢性苔癬状粃糠疹 pityriasis lichenoides chronica
 7 水疱症または棘融解をきたす疾患
  蕁麻疹様紅斑主体の水疱性類天疱瘡 bullous pemphigoid, urticarial erythema
  Hailey-Hailey病 Hailey-Hailey disease
  Darier病 Darier disease
 8 膿疱症および好中球・好酸球浸潤を特徴とする疾患
  掌蹠膿疱症 palmoplantar pustulosis
  急性汎発性発疹性膿疱症 acute generalized exanthematous pustulosis
    (AGEP)
  Sweet病 Sweet’s disease
 9 脱毛症
  毛包扁平苔癬(瘢痕性脱毛症) lichen planopilaris (cicatricial alopecia)
  円板状紅斑性狼瘡(瘢痕性脱毛症) discoid lupus erythematosus (cicatricial
    alopecia)
 10 沈着症・代謝異常症
  アミロイド苔癬 lichen amyloidosis
  結節性黄色腫 tuberous xanthoma
  皮膚石灰沈着症(陰嚢石灰沈着症) calcinosis cutis (scrotal calcinosis)
  脛骨前粘液水腫 pretibial myxedema
 11 皮膚感染症(細菌・ウイルス)
  化膿性毛包炎 suppurative folliculitis
  伝染性膿痂疹 impetigo contagiosum
 12 皮膚感染症(真菌)
  スポロトリコーシス sporotrichosis
  クロモブラストミコーシス chromoblastomycosis
 13 寄生虫性皮膚疾患
  皮膚爬行症 creeping disease
  マダニ咬症反応 tick bite reaction

レベル C
 1 境界部皮膚炎
  線状苔癬 lichen striatus
  急性痘瘡状苔癬状粃糠疹 pityriasis lichenoides et varioliformis acuta (PLEVA)
 2 脂肪織炎
  Bazin硬結性紅斑(結節性血管炎) erythema induratum Bazin (nodular
    vasculitis)
  皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫 subcutaneous panniculitis-like T-cell lymphoma
    (SPTCL)
 3 肉芽腫性炎症
  顔面播種状粟粒性狼瘡 lupus miliaris disseminatus faciei (LMDF)
  環状肉芽腫(palisaded typeとinterstitial type) granuloma annulare,
    palisaded and interstitial type
 4 血管炎とその類症
  苔癬型慢性色素性紫斑(Gougerot-Blum type) lichenoid persistent pigmented
    purpuric dermatitis, Gougerot-Blum type
  結節性多発動脈炎 polyarteritis nodosa
  血栓性静脈炎 thrombophlebitis
 5 海綿状態を呈する・血管周囲のみ炎症細胞浸潤がある炎症性疾患
  多形慢性痒疹 prurigo chronica multiformis
  アトピー性皮膚炎 atopic dermatitis
 6 乾癬様パターンをとる炎症性疾患
  尋常性乾癬,遷延性病変(掻破による修飾) psoriasis vulgaris, old lesion
    (scratched)
  毛孔性紅色粃糠疹 pityriasis rubra pilaris
  梅毒2期疹 secondary syphilis
 7 水疱症または棘融解をきたす疾患
  線状IgA水疱性皮膚症 linear IgA bullous dermatosis
  腫瘍随伴性天疱瘡 paraneoplastic pemphigus
  表皮水疱症 epidermolysis bullosa
 8 膿疱症および好中球・好酸球浸潤を特徴とする疾患
  壊疽性膿皮症 pyoderma gangrenosum
  Wells症候群 Wells’ syndrome
 9 脱毛症
  円形脱毛症(非瘢痕性脱毛症) alopecia areata (noncicatricial alopecia)
 10 沈着症・代謝異常症
  結節性皮膚アミロイドーシス nodular cutaneous amyloidosis
  浮腫性硬化症 scleredema
  痛風結節 tophus
 11 皮膚感染症(細菌・ウイルス)
  敗血症 sepsis
 12 皮膚感染症(真菌)
  生毛部急性深在性白癬 trichophytia profunda acuta in downy hair skin
  マラセチア毛包炎 Malassezia folliculitis
 13 寄生虫性皮膚疾患
  多形慢性痒疹 prurigo multiforme chronica

索引

コラム
 サルコイドーシスの診断基準
 組織傷害の修復過程とその関連疾患(1)
 肉芽組織,肉芽腫,肉芽腫性炎症の用語としての違いを理解しよう
 好酸球性海綿状態(eosinophilic spongiosis)について
 組織傷害の修復過程とその関連疾患(2)
 花瓶サイン(vase sign)
 脱毛症診断のための組織の切り出し
 ホルマリン以外の固定液を使う場合
 深在性真菌症の原因菌について

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皮膚病理ビギナー必読の一冊
書評者: 山本 明美 (旭川医大教授・皮膚科学)
 この本は「皮膚科専門医認定試験をこれから受験するために皮膚病理組織学の基本を短時間で身につけたい」と考えている皮膚病理ビギナーにうってつけの一冊です。編集が日本皮膚科学会ということは,個人的な意見ですが,この本の画像が専門医認定試験問題に使われる可能性があると考えます。もちろん用いられている画像はどれも病理所見がわかりやすい典型的なものばかりですから試験用としても最適なものです。

 この本の最大の特徴は難易度順に疾患を分類し,容易なものから順にA,B,Cの3つのレベルで疾患がまとめられている点です。そしてそのレベルごとに中身は組織のパターン別,あるいは病因別に疾患が並んでいます。このことが初心者の学習を大いに助けると思います。なぜかというと,皮膚病理を勉強する上で障害となるのは次のような事実があるからです。すなわち多くの教本に掲載されているのは目がくらむように膨大な数の皮膚病で,しかもおのおのが疾患の形成時期,すなわち早期,最盛期,治癒期なのかによって所見が異なるときては勉強する意欲が損なわれます。その点,この本ではまずレベルAにある厳選された少数の疾患をマスターすることでいったん達成感が得られます。そして心に余裕ができたところで,次のレベルに進むことができるのです。いきなりヒマラヤの頂上をめざすのではなく,近くの小山でハイキングから始めるような感じでしょうか。

 この本のもう一つの特徴はほとんどの画像をバーチャルスライドで拡大や位置を自在に調整しながら観察することができる点でしょう。バーチャルスライドに込められている無限に近い情報量込みで定価1万2000円は大変お買い得な価格と言えます。本に掲載されている図の中に矢印や点線などで所見の部位が明示されているので,読者は迷うことなく病理所見を理解できます。しかしこれは受動的な学習なので知識の定着には不十分です。そこでその後にバーチャルスライドにより自分自身でその所見を能動的に探し出すことでしっかりと知識を定着させることができます。

 またこの本には比較的広い余白があり,メモを書き込みたい読者への配慮が感じられます。自筆のメモを書く,という作業も知識を定着させるよい手段となります。さらに個々の疾患についての解説が短く端的なことも特徴的です。そのため,自分で余白に情報を追加し,マイブックとして活用することができます。もちろん日々の診療で出合う疾患の中には本書に掲載されていないものも多くあります。したがってまずこの本で基本をマスターしたら,より分厚い成書をそばに置いて学習レベルを深化させていくことをお勧めしたいと思います。
隙間の時間で皮膚病理を学べるありがたい自己学習ツール
書評者: 清島 真理子 (岐阜大教授・皮膚病態学)
 『実践! 皮膚病理道場―バーチャルスライドでみる皮膚腫瘍』に続いて『実践! 皮膚病理道場2―バーチャルスライドでみる炎症性/非新生物性皮膚疾患』が発刊されました。

 この本の特徴は,(1)バーチャルスライドを操作して自分のペースで学べる点と(2)難易度別に基本的レベルのA,応用レベルのB,難易度のやや高いCの3段階に区分されている点です。
 バーチャルスライドの閲覧方法は実に簡単で,標本の全体像をみたり,任意の倍率に拡大したり,また縮小したり,画面を移動したり,容易に操作できます。

 この本では各疾患の病理診断のポイントが2~9項目で簡潔にまとめられています。次に病理の全体像が示され,その中でポイントとなる部分が四角で囲まれており,みるべき点に間違いなく,ロスタイムなく到達できます。個々の病理写真の中で理解すべき重要ポイントが矢印や囲み線によってわかりやすく示されています。また必要な特殊染色写真も各所に加えられていて理解しやすい構成になっています。

 顕微鏡がない自宅や出先でも,ほんの少しの時間を見つけて繰り返し皮膚病理を学べるありがたい自己学習ツールです。また,病理標本の隅から隅まで観察するという習慣付けにも適しています。読者自身の到達度によりステップを踏んで学べるように工夫されており,既に理解している部分は確認の意味でさらっと読み,詳しく学ぶべき点は時間をかけてじっくりと読むことができます。

 症例は日本皮膚病理組織学会の精鋭メンバーの先生方によって厳選されたスライドであり,レベルの高い,充実した内容がコンパクトにまとめられています。このようなコンセプトの本としては「皮膚腫瘍」に次ぐ,2冊目として「炎症性/非新生物性皮膚疾患」が発刊されたわけですが,炎症性皮膚疾患こそが,実臨床を日々経験し,臨床所見を知る皮膚科医が最も力を発揮すべき分野です。皮膚病理の勉強は,派手さはないですが,こつこつと楽しみながら学んでいると皮膚疾患やその病態に対する疑問が湧き出してきたり,病理から逆に臨床像を想像できたりするようになるなど,皮疹のみかたに深みが出て,そして皮膚科の世界が広がります。

 この本は皮膚科を研修中の専攻医の皆さんが自学自習する際に頼りになるテキストであるとともに,専攻医を指導する皮膚科指導医にとっても指導のポイントを示した書として有用です。また,既に皮膚科専門医を取得している方にとっても病理の新しいみかた,気付きが各所に散りばめられており,読んでいて楽しい一冊です。
バーチャルスライドで標本を子細に観察してみよう!
書評者: 照井 正 (日大教授・皮膚科学)
 本書は,第114~116回日本皮膚科学会総会にて行われた教育講演「実践! 皮膚道場」の内容を書籍化したものです。前作『実践! 皮膚病理道場―バーチャルスライドでみる皮膚腫瘍』は腫瘍性疾患がテーマでしたが,今回は非腫瘍性疾患がテーマで日常診療において遭遇する可能性が高い炎症性疾患ならびに非炎症性皮膚疾患が取り上げられています。これまでの病理組織診断学の成書と異なる点はバーチャルスライドを使って標本を弱拡大から強拡大に子細に観察できることであり,そのバーチャルな標本を見ながら段階的に自己学習できる点です。

 病理診断は顕微鏡を見ながら指導医と1対1で学習することが理想ではありますが,必ずしも全ての方がそのような恵まれた環境にいるわけではありません。本書のような教材を使うことで,単なる病理診断当てクイズにするのではなく,弱拡大から強拡大で観察すべき所見を的確に読み取る能力と,それらの情報を統合して他の疾患と鑑別する能力を養うことができます。また,難易度としてレベルAからレベルCまで設定されています。段階を踏みながら平易に,より深く病理の面白さを実感できることでしょう。

 日本皮膚科学会の専門医試験でも皮膚病理が出題され,面接試験において皮膚病理をみる能力が試されます。また,日常の診療において遭遇する疾患が網羅されていますので,前作と併せて読めば,通常の診療では痛痒は感じない実力がつくことでしょう。ぜひ,ページを開いて内容を見て,本書の特徴を体験して欲しいと思います。

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