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皮膚病理診断リファレンス 第2版

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皮膚疾患の病理診断を行うためには、疾患の本質および定義と、それを反映する病理所見の理解が欠かせない。本書では「病理診断の決め手」という項を設けてこれを端的に示し、診断上の疑問に明確に答えている。皮膚疾患診療では臨床診断がわかったうえで病理診断を下すことが多いという実情に即し、疾患名から病理像を検索できる構成とした。美しい病理写真を多数収載した、皮膚科医、病理医必読の1冊、内容充実の改訂第2版。

安齋 眞一
執筆協力 福本 隆也 / 阿南 隆
発行 2025年05月判型:A4頁:552
ISBN 978-4-260-05980-0
定価 24,200円 (本体22,000円+税)

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  • 序文
  • 目次
  • 書評

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第2版 はじめに

 初版に引き続き本書を手に取っていただいた方,誠にありがとうございます.同様に本書を初めて手に取っていただいた方にも,感謝申し上げます.
 本書の初版を執筆していたのは,2018年の秋から2019年の秋にかけてでした.ちょうどそのころは,公私ともに非常に辛い時期で,本書の執筆に没頭することで,なんとか日々暮らしていました.そして,校正が始まったころには,新型コロナウイルスが猛威を振るい始め,出版されたのは,まさに感染真っ盛りの2020年6月でした.本当は,日本皮膚科学会総会で大々的にお披露目されるはずだったのですが,総会も開催されず,地味な出発になってしまいました.しかし,その後は私の想像を越えてさまざまな方から好評をいただき,非常に多くの方の手に取っていただけたと自負しています.おかげさまで,自身で初めて,2度の増刷を経験することができました.初版の刊行から5年が経過して,数多くの改善点を自覚し,改訂させていただくことになりました.今回は,私の環境も公私とも激変しており,心安らかに作業することができたと思っています.
 初版の序文でも書いたとおり,この本のコンセプトは,「皮膚病理検体を前にして診断が決まらないとき,あるいは,『この疾患ってこういう病理組織像だっけ?』とか,『こういう所見ってこの疾患であってもよいんだっけ?』とか,『この病理組織像は,この疾患に似ている気がするんだけど,鑑別すべき類縁疾患や類似疾患にはどういうものがあるんだっけ?』などという場面で役に立つ本を目指しました」ということであり,「教科書に載っている各疾患の病理所見は,どれとどれが診断のために必要なのか」という疑問にできるだけ答えようとしたものだと思っています.つまり,本書は,実際の病理診断の場で直接的に役立つことを目指しており,初心者に手取り足取り教えるというコンセプトでは書かれていません.再度になりますが,この点はご了承ください.
 初版の刊行から5年が経過して,改訂版を出したわけですが,それにはいくつかの理由があります.1つめは,初版で記載が漏れていた重要疾患がいくつかあったことです.執筆時には万全を期したつもりでしたが,やはり漏れがあったということで,そのような疾患を新たに書き加えました.また,いくつかの疾患に関しては,その重要性に鑑みて,他の疾患の関連疾患あるいは鑑別疾患としてのみ記載していたものを独立した項目としました.
 2つめは,初版執筆時あえて入れなかった項目である表皮水疱症と爪母腫を加えたことです.これらに関しては,特に大原國章先生や安齋理先生にご協力いただきました.謹んで御礼を述べさせていただきます.
 3つめは,初版の刊行後に明らかになった新知見や新しい疾患概念を紹介することです.特に腫瘍領域での遺伝子異常に関する知見は,できるかぎり掲載するようにしました.
 最後に,初版ではコントラストの低い写真が多かったと反省し(初版作成時は,あのような写真が上品でよいと思っていたのです),全面的に組織写真を撮り直しました.今回の写真は大幅にわかりやすくなった(見やすくなった)のではないかと思っています.
 今回の改訂にあたっても,私の独りよがりなところや乏しい知識を補っていただくため,福本隆也先生(福本皮フ病理診断科)と阿南隆先生(札幌皮膚病理診断科)に強力なバックアップをしていただいたことは言うまでもありません.お二方には,いくら感謝しても足りないくらいお世話になりました.本当にありがとうございました.また,今回の改訂にあたり追加で病理組織像をご提供いただいた諸先生方にも深謝いたします.
 最後に,私にこのような書籍の執筆の機会を与えてくださり,それがかたちになるように全面的にバックアップしてくださった医学書院の天野貴洋さんにも再度心から御礼を述べさせていただきます.

 2025年3月
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第2版 はじめに
初版 はじめに
参考図書
略語一覧

非腫瘍性疾患
  炎症性疾患総論
 炎症性疾患
  湿疹・皮膚炎/蕁麻疹/痒疹
  紅斑症
  薬疹
  血管炎/血管炎類似疾患
  膠原病および類症
  水疱症
  遺伝性角化症
  炎症性角化症
  非炎症性角化症
  肉芽腫性疾患
  物理化学的皮膚傷害
  色素異常症
  皮下脂肪組織疾患
  付属器疾患
  感染症
 代謝異常症(沈着症)

腫瘍性疾患および類症
  皮膚腫瘍病理診断総論
 上皮性腫瘍および類症
  表皮腫瘍
  汗器官腫瘍
  脂腺器官腫瘍
  毛器官腫瘍
  その他
 色素細胞腫瘍
 軟部腫瘍
  脂肪細胞腫瘍
  線維芽細胞/線維組織球性腫瘍
  末梢神経腫瘍
  筋組織腫瘍
  周皮細胞腫瘍
  脈管系腫瘍
  その他
 造血器系腫瘍
  悪性リンパ腫
  その他
 転移性腫瘍

診断の手がかり
用語集
索引

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病理診断初心者の皮膚科医の思考経路に寄り添った“かゆいところに手が届く”参考書
書評者:渡邉 玲(順大主任教授・皮膚科学)

 私は20年以上皮膚科医をしていながらも,大変恥ずかしながら病理診断については初心者同然です。さすがにこれだけの年数診療を行っていれば,典型的な臨床像,典型的な病理組織像は大体刷り込まれてきますが,いつも困るのは,生検組織の多くを占める「非典型的な病理組織像」です。

 本書は,「似ているけれど異なる疾患ではどのように病理組織像が異なり得るか」「なぜそのような違いになるか」といった,実臨床でしばしば抱く疑問に対する答えを見つけやすい構成となっています。臨床診断ありきで病理組織像を理解しようとしがちな病理診断初心者の皮膚科医の思考経路に寄り添った,まさしくかゆいところに手が届く参考書です。

 「病理診断の決め手」からは,どんな組織像からこの診断につながるかが明示され,生検の時期や病態のバリエーションから考え得る「非典型的な病理組織像」へのヒントが得られます。炎症性疾患を主に診察している私にとって,例えば角層の変化,表皮分化の特徴,基底層の変性の程度,真皮上層のリンパ球浸潤のパターンなどの観点から,疾患の組織所見の何が,どのように違うのか,実際の組織像や図表を交えて,視覚的・言語的に明確にまとめられていることは,改めて疾患を系統立てて理解する上でとても役に立ちます。また,腫瘍についても(特に付属器腫瘍の鑑別はいつも苦行ですが),本書では,腫瘍細胞の由来,その配列,腫瘍としての構造の特徴がわかりやすく解説されています。各腫瘍の病理学的な相違を病態の相違に結び付ける形で理解が進みます。

 実は,教室運営の立場になって,より一層病理診断に困窮した私は,著者の安齋眞一先生に頼み込んで,定期的に皮膚病理学を講義していただいています。先生の,系統的かつ実践的で,皮膚科医の視点を大切にしてくださる素晴らしいご講義のおかげで,少しずつ皮膚病理学の整理が進んできています。病理に少しポジティブになった段階で本書を拝読すると,改めて先生が皮膚病理学の高みを極めつつ,その内容を一般の皮膚科臨床医に理解してもらえるようにさまざま工夫され,試行錯誤を重ねてこられたかがひしひしと伝わってきます。

 第2版では,もともと豊富であった病理組織の写真がさらに充実し,特徴的な組織像を非常に鮮明に読み取ることができます。免疫染色の特徴のまとめ方も,目に留まりやすいように工夫されています。遺伝子異常とのかかわりについても解説が加わり,個々の病態への理解が深まります。

 本書は外来にも病棟にも各皮膚科医の机にも常備して,いつでも気軽に開いて勉強したくなる一冊,中から安齋先生が飛び出してきそうな一冊です。


困ったときに支えてくれる「顕微鏡の傍らの師匠」
書評者:奥山 隆平(信州大教授・皮膚科学)

 皮膚病理標本を前にして,「これは一体,何の疾患だろう?」と悩んだ経験はありませんか? そんなとき,心強い味方になってくれるのが『皮膚病理診断リファレンス 第2版』です。

 本書は,日本の皮膚病理学を代表する安齋眞一先生が執筆した,まさに“決定版”と呼ぶにふさわしいリファレンスブックです。初版から約5年を経て,内容・図版ともに大幅にアップデートされた本書は,診断に必要な知識と視点を余すことなく網羅し,実践的なアプローチで読者を導いてくれます。

◆パターンで整理,写真で理解―迷わず進める診断の道しるべ
 本書の大きな魅力は,皮膚病理所見のパターン分類が非常にわかりやすく整理されている点です。診断のアプローチが明確に示されており,組織像と向き合うときに「何を見て,どう考えるべきか」が自然と見えてきます。また,豊富に掲載された病理組織写真(弱拡大~強拡大)も大きな特長です。文章と写真を行き来しながら読み進められる構成は,視覚的な理解を助け,学習効果をぐっと高めてくれます。

◆著者の“コメント”ににじむ経験と温かさ
 ここには,安齋先生が長年の診療と教育の中で培ってきた視点や,臨床現場での気付きが惜しみなく盛り込まれています。診断の決め手となるポイントや,よく迷いやすいところが,実践的なアドバイスとともに丁寧に解説されており,まるで隣に経験豊富な師匠がいて,そっと背中を押してくれるような心強さがあります。教科書ではなかなか得られない「現場の知恵」が詰まったコメントは,読むたびに学びがあり,読むたびに支えられる,そんな存在です。

◆重厚なのに使いやすい。皮膚病理を学ぶすべての人に
 550ページを超える大作でありながら,情報は的確に整理されていて,何度も参照したくなる構成です。安齋先生自身も「顕微鏡のそばに置いて,かわいがってもらえたら」と語っており,日常診療のパートナーとして使い倒すのにぴったりな一冊です。

◆診断力に自信が持てるようになる一冊
 『皮膚病理診断リファレンス 第2版』は,皮膚病理を専門とする医師はもちろん,研修医や診断を学ぶ全ての人にとって,頼れる「道しるべ」となる一冊です。「この本のおかげで,自信を持って診断できるようになった」―そんな声がきっと広がっていくことでしょう。

 皮膚病理に真摯に向き合いたい全ての方に,この“師匠のような一冊”を心からお薦めします。そして,安齋先生の情熱が続く限り,今後も第3版,第4版と進化し続けることを期待せずにはいられません。


痒いところに手が届く―皮膚病理診断にかかわる医師必携の一冊
書評者:山本 明美(旭川医大名誉教授)

 この度,安齋眞一先生の名著『皮膚病理診断リファレンス』第2版が刊行されました。安齋先生とは長年の友人関係にありますが,それにとらわれることなく,この本が本当に役立つものであることを実感しましたので,書評をお届けします。

 皮膚病理組織学の分野では,『Lever’s Dermatopathology:Histopathology of the Skin』などの成書を手元に置き,迷った際に参考にしている方も多いでしょう。しかし,安齋先生の著書は日本語で書かれているため,私たち日本人にとって圧倒的に短時間で内容を把握できるという利点があります。特に,総論的な記載が少なく,すぐに疾患各論が始まる構成となっているため,見た目の厚さや重さから想像する以上に幅広い疾患が網羅されています。このため,本書を辞書代わりに利用することができます。

 さらに,最新の疾患分類や遺伝子変異,転座などの情報が加えられており,いまだ意見の一致を見ていない疾患概念についても丁寧に説明されています。厳選された典型的で分かりやすい病理組織の図が使用されている点も魅力の一つです。

 日々病理組織診断に携わる先生だからこそ可能な,診断や鑑別診断に役立つ知識が満載で,初学者からベテランまで幅広い読者層に有益な内容となっています。日ごろ,疑問に感じていたことにも的確に答えてくれる点が本書の特長です。例えば,「リポイド類壊死の『類壊死』とは何なのか?」という疑問には,「変性と表現すればよい」と簡潔に説明されています。また,「最大径が4 cmを超えるBowen病で,基底膜をわずかに破った真皮内浸潤がみられた場合,TNM分類ではT3として扱われるがどうすべきか?」という問題については,「真皮網状層にまで及ぶものを浸潤性有棘細胞癌として考える」との記載があり,実用的で納得のいく内容です。

 巻末の用語集も充実していてとても便利です。「縁取りサインって,言葉から連想するとアイライナーサインと同じような印象だけど,どう違うの?」といった疑問もすぐ解決できます。あるいは,ときどき学会で大御所の先生が「Kogoj海綿状膿疱では海綿状態はみられない」,という発言をされるのを聞いたことがあるけど,これはいったいどういうことなのかよくわからない,でも,大御所本人に聞くのはためらわれる,と思っている若手にわかりやすいように答えてくれています。皮膚病理診断にかかわる方にとって,本書はまさに“痒いところに手が届く”一冊と言えます。ぜひ一度手に取って,その有用性を実感していただきたいと思います。

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