標準皮膚科学 第12版
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2025.04.23
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序文
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第12版 序
生成AIの登場により,コンピュータが利用者のあらゆる要望に回答し,現状の総括から検討すべき課題に至るまで示唆してくれるようになった.AIが学習することで,人は学修せずとも世の中の一般的な考え方を瞬時に入手できる時代がやってきたといえる.では,生成AIは人間の学修をどのように考えるか,「皮膚科学を体系的に学修するにはどうしたらよいか?」と問うてみた.すると以下のような非常にまっとうで,的を射た回答が返ってきた.
- 基本的な皮膚科学の教科書を熟読する
- 専門分野ごとに深掘りする
- 実践的な知識・技能(臨床経験の強化・診断スキルの向上・治療の実践)を修得する
- 研究活動に参加し基礎と臨床の両面を深める
- 学会やセミナーを活用し最新の研究成果や治療法について学ぶ
- 国際的な情報(論文や学会)を活用し,最新情報に触れる
- 教えることを通じて自身の知識を再確認し,新たな疑問を深める
- 常に学び続け,皮膚科学の進化について行くマインドセットを維持する
体系的に学修するには教科書を熟読することを一番に行うべきであるとAIも考えている.また,分野ごとの専門的な学修が2番目にランクされた.
本書は基本的な皮膚科学と専門分野の入り口までをカバーしている.したがって医学生はもちろんのこと,初期臨床研修医,皮膚科専攻医,あるいは皮膚科専門医にとって有用な最新情報を提供するものである.そのため,本書は現役の教授により専門分野を分担執筆していただくことを原則とし,1983年の初版以来,40年あまりの間に11回もの改訂を加えていることからわかるように,皮膚科学の進歩に合わせて比較的短い周期で改訂を積み重ねている.すなわち,執筆陣も新陳代謝しながら改訂を重ねることで,常に最新の内容が盛り込まれていることが本書の最大の特色である.
前回の第11版では判型,レイアウトを刷新し,写真を増量しWEB付録をつける大改訂を行ったが,今回の第12版では前版の39名の執筆者のうち18名が降板し,18名の新進気鋭の教授が著者に加わった.内容は最新情報を加えつつ,文章は極力コンパクトにまとめ,バリエーションのある写真を加えた.また,JAK阻害薬,PDE4阻害薬,Tyk2阻害薬などの新薬が相次いで発売されたため,第8章「治療」の記載を充実させた.さらに,新しい疾患概念として「自己炎症性疾患」の項目を第13章「膠原病とその類症」に新設した.
本書が皮膚科学の最新の基本的知識の集大成として幅広い方にご利用いただけたらこのうえない幸せである.
最後に編者からの要望に快く応じて改訂作業をしてくださったすべての執筆者の先生方,そしてこれまで本書を育て上げていただいた歴代の執筆者に心より御礼を申し上げる.
2025年2月
編者 識す
目次
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第I編 総論
第1章 皮膚科学序説
第2章 皮膚の構造と機能
A 皮膚表面の構造
B 皮膚の組織構造と役割
C 表皮
D 真皮
E 皮下脂肪組織
F 脈管および神経
G 皮膚付属器
第3章 皮膚の免疫学と病態生理
A 皮膚の免疫応答の多様性
B 免疫応答におけるバリアの役割
C 皮膚の自然免疫
D 皮膚の獲得免疫としての「アレルギー」
E 皮膚における腫瘍免疫
F 免疫応答における皮膚構成細胞の役割
第4章 皮膚科症候学
A 発疹の分類
B 発疹の観察
第5章 皮膚疾患の診断
A 病歴の聴取(問診)
B 身体診察(視診,触診)
C 嗅診
D 補助的診断法(検査)
E 遺伝学総論と皮膚疾患
■皮疹の形状と配列から想定すべき疾患
第6章 ダーモスコピー
A ダーモスコピーとは
B 偏光モードと非偏光モード
C ダーモスコピーの所見の取り方
D ダーモスコピーの2段階診断法
E ダーモスコピーの所見
第7章 皮膚病理組織学
A 皮膚生検と標本作製
B 皮膚病理組織診断法
C 皮膚病理診断の進め方
第8章 治療
A 外用療法
B 全身療法
C 理学療法および外科療法
D その他の治療法
第II編 炎症性皮膚疾患
第9章 湿疹および皮膚炎
A 化学物質との関連が明確な疾患
B 化学物質との関連が不明瞭な疾患
第10章 紅皮症
第11章 物理・化学的皮膚障害
A 光線性皮膚疾患
B 放射線皮膚障害
C 温熱による皮膚障害
D 寒冷による皮膚障害
E 機械的刺激による皮膚障害
F 化学的皮膚障害
第12章 紅斑症および毛細血管拡張症
A 紅斑症
B 毛細血管拡張症
第13章 膠原病とその類症
A エリテマトーデス
B 強皮症
C 皮膚筋炎
D その他の類症
E 自己炎症性疾患
第14章 血管・リンパ管の疾患および紫斑
I 血管・リンパ管の疾患
A 血流障害により生じる症候
B 閉塞,血栓,うっ血による疾患
C 大型血管炎
D 中型血管炎
E 小型血管炎:ANCA関連血管炎
F 小型血管炎:免疫複合体血管炎
G 皮膚のみの血管炎
H 全身性疾患と関連した血管炎
I 推定病因を有する血管炎
J 血管炎を伴う皮膚疾患
K リンパ管の疾患
II 紫斑
A 血小板・凝固異常による紫斑
B その他の紫斑
第15章 蕁麻疹,痒疹,皮膚瘙痒症
A 蕁麻疹
B 痒疹
C 皮膚瘙痒症
第16章 中毒疹,薬疹,移植片対宿主病
A 薬疹の病型,診断,治療
B 重症薬疹
C 日常的に遭遇する薬疹
D 分子標的薬,免疫チェックポイント阻害薬による薬疹
E 移植治療に伴う皮疹
第III編 皮膚特異的疾患
第17章 水疱性・膿疱性疾患
A 自己免疫性水疱症
B 先天性水疱症
C 膿疱症
第18章 角化症
A 遺伝性角化症
B 炎症性角化症(自己炎症性角化症を含む)
C その他の角化症
第19章 色素異常症
A 低色素性疾患
B 色素増加性疾患
C 異物沈着,薬剤,代謝異常による色素異常症
第IV編 腫瘍・母斑性皮膚疾患
第20章 真皮の疾患と肉芽腫症
A 真皮成分の増加を示す疾患
B 真皮成分の減少を来す疾患
C 先天性結合組織疾患
D 穿孔性皮膚症
E 非感染性肉芽腫症
第21章 母斑および皮膚良性腫瘍
A 上皮系母斑と腫瘍
B 支持組織系母斑と腫瘍
C 筋系母斑と腫瘍
D 神経系母斑と腫瘍
E メラノサイト系母斑と腫瘍
F 脈管系母斑と腫瘍
第22章 母斑症
第23章 皮膚悪性腫瘍
A 上皮系皮膚悪性腫瘍
B 悪性黒色腫(メラノーマ)と神経外胚葉系悪性腫瘍
C 間葉系悪性腫瘍
D 悪性リンパ腫とその類症
第V編 細菌・真菌・ウイルス性皮膚疾患
第24章 細菌性皮膚疾患
A 急性表在性膿皮症
B 急性深在性膿皮症
C 全身感染症
D 特異な感染症
第25章 皮膚結核および皮膚非結核性抗酸菌症
A 皮膚結核
B 非結核性抗酸菌症
第26章 ハンセン病
第27章 皮膚真菌症
A 皮膚真菌症の診断法
B 皮膚真菌症の治療
C 皮膚真菌症
第28章 昆虫や動物が媒介する皮膚疾患
A リケッチア,オリエンチア感染症
B スピロヘータ感染症
C 原虫感染症
D 昆虫による皮膚疾患
E 寄生虫による皮膚疾患
F 動物による皮膚障害
第29章 ウイルス性皮膚疾患,急性発疹症
A ウイルス性皮膚疾患
B ウイルス性発疹症
C 輸入感染症としてのウイルス性発疹症
第30章 性感染症
第VI編 様々な皮膚疾患と関連領域
第31章 皮下脂肪組織・筋膜の疾患
A 皮下脂肪織炎
B 筋膜の疾患
C 皮下脂肪萎縮症
第32章 皮膚付属器の疾患
A 脂腺の疾患
B 毛髪疾患
C 汗腺の疾患
D 爪の疾患
第33章 皮膚代謝異常症
A アミロイドーシス
B クリオグロブリン血症
C 痛風・痛風結節
D ヘモクロマトーシス
E ムチン沈着症
F 微量元素,アミノ酸,ビタミン欠乏症,その他
G 黄色腫
H ポルフィリン症
第34章 粘膜疹とその関連疾患
A 口唇炎・口角炎
B 口内炎・歯肉炎
C 口腔内潰瘍
D 舌の変化・舌炎
E 腫瘍など
F その他
第35章 全身と皮膚
I ライフサイクルと皮膚疾患
A 妊娠にみられる皮膚病変
B 新生児の皮膚疾患
C 高齢者の皮膚疾患
II デルマドローム
A 皮膚病変を伴う全身病
B 内臓悪性腫瘍と皮膚病変
C 糖尿病と皮膚病変
D その他の障害と皮膚病変
III 皮膚と心身医学
代表的な遺伝性皮膚疾患
代表的ながん遺伝子
和文索引
欧文索引
症例提供