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第3337号 2019年9月9日


【interview】

インシデント報告で医師としての実力を養おう
遠山 信幸氏(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長/医療安全・渉外対策部長)に聞く


――インシデントを報告しやすい組織を作るために必要なことは何でしょうか。

遠山 報告システムの利便性を高めたり,報告すべきインシデントを定めたりするなどのシステム上の工夫がまず考えられます。当センターでは責任の所在によらず,「診療経過中に起きた患者さんにとっての不具合な事象」を全て報告してもらうようにしました。「起きたインシデントを報告するまでが診療行為の一環」との意識を持つことも大切です。

 それ以上に大切にしているのは,インシデント報告にポジティブなイメージを持ってもらうことです。

――「インシデント報告」というと,始末書など負のイメージを持つ人が多いですね。

遠山 ええ。ですがインシデント報告は始末書ではありませんし,報告することで責められるべきものでもありません。特に研修医は失敗して当然です。むしろそれを糧にして成長するのです。インシデント報告は,いわば復習/振り返りの場です。報告画面と向き合うことで,当該事象への反省点はないか,どうすれば防げたかを振り返り,改善策や再発予防策を考える機会となります。安全講習会は寝ていたら終わるかもしれませんが,インシデント報告はそうではありません。講習を1回受講するよりもずっと効果的に,個々人の「医療安全力」を高める教育ツールになると思うのです。

 医療安全への意識を高めるだけでなく,自身の診療手技を振り返り,技術を向上させるため,効果的な報告の仕方を学ぶためにもインシデント報告は有用です。当センターを巣立った初期研修医に対して「腕が立つし,安全管理の意識が高い。報・連・相をしっかり行い,コミュニケーション能力も高い」と,他施設から褒めていただくことがあります。

――報告文化をつくることで,副次的に医師としての実力もついてくるのですね。

遠山 はい。さらに,組織の風通しのよさにもつながります。自分の報告が,他者に対する気付きにもなるのです。特に研修医はローテーションによって複数の科を経験するため,各科のいいところ,悪いところを比較できます。そうした比較で見えたささいな気付きも研修医からは多数報告してもらっており,改善へ働き掛けることができます。ですから「報告してくれてありがとう」という気持ちで,研修医には接します。

――医療安全の要になる研修医に対してメッセージをお願いします。

遠山 研修医のインシデントや気付きの報告が施設の医療安全文化を高めるだけでなく,組織全体にも,研修医自身にもプラスの影響を与えます。日々の診療だけでも大変だと思いますが,今後はさらに積極的な報告を期待したいです。

(了)