医学界新聞

2019.06.24



Medical Library 書評・新刊案内


介護施設の看護実践ガイド 第2版

公益社団法人 日本看護協会 編

《評者》東 憲太郎(全国老人保健施設協会会長)

重要性を増す施設看護師の役割を果たすために

 介護老人保健施設(以下,老健施設)は,介護を必要とする高齢者の自立を支援し,家庭への復帰をめざすために,医師による医学的管理の下,看護・介護といったケアはもとより,リハビリテーション,また,栄養管理・食事・入浴などの日常サービスまで併せて提供する施設である。

 2017(平成29)年度の介護保険法の改正により,利用者の定義が「要介護者」から「要介護者であって,主としてその心身の機能の維持回復を図り,居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者」に変わった。これまで,老健施設の役割は運営基準上で在宅復帰施設とされていたが,より上位概念である介護保険法によって,「在宅支援」の役割も明示された。

 国の進める「地域包括ケアシステム」では,施設から在宅への流れを進め,在宅サービスや地域密着型サービスを拡充していく方向性が示されている。老健施設は,在宅支援施設として,地域に貢献していくことで,地域包括ケアシステムの中心的役割を担っていくことが期待されている。

 「医療提供施設」に分類される老健施設において,看護職の役割は多岐にわたる。入所者の身体・精神状態や生活機能をアセスメントし,入所者や家族の願いや希望を取り入れながら,病気が悪化しないようなケアや,自宅で暮らすための生活機能の維持,入所者の生を全うできるような最期を迎えるためのケアを提案するとともに,これらのケアをチームで取り組むことを推進する力も必要となる。

 近年では,老健施設での看取りは増加しており,今や半数近い老健施設において看取りが行われる。高齢者の多死時代を迎えるにあたり,今後看取りの需要はさらに増すことが予想される。また,施設利用者の重度化が進んでおり,医療の充実は必須であることからも看護職の役割はますます重要となっている。

 医療施設では,医師を頂点としたピラミッド形式の組織が基本となるが,老健施設では介護職,リハビリテーション専門職,ケアマネジャー,支援相談員などの各専門職が専門性を発揮しながら,職種の垣根を越えて,組織がドーナツ型のチームとなって利用者にサービスを提供する。看護職は少ない人員配置の中で,他の職種と連携・協働しながら質の高いケアの提供に貢献することが求められている。

 本書は,上記のように,介護施設で活躍する看護職に必要な倫理から,看護実践,組織体制の構築や教育方法まで掲載され,まさに,老健施設に従事する看護職の皆さまにぜひ,お読みいただきたい書である。

A5・頁272 定価:本体2,500円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03634-4

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