医学界新聞

寄稿

2018.11.26



【視点】

これでよいのか,「情報通信機器を利用した死亡診断ガイドライン」

川嶋 みどり(日本赤十字看護大学名誉教授/健和会臨床看護学研究所所長)


 法律では,死後,遺体の火・埋葬には,医師が交付する死亡診断書を添付した死亡届が必要である。医師が死亡時に立ち合えなかった場合,死後24時間以内に診察すれば例外として交付できるとしている。在宅等では死後診察ができない場合もあり,死亡直前の患者を病院に搬送したり,在宅で遺体を長時間保存したりせざるを得ないこともある。そこで政府は,「在宅での穏やかな看取りが困難な状況に対応するため」,医師の直接診察を抜きに死亡診断書交付ができる方針(規制改革実施計画)を2016年に出した。これを受けて,厚労省医政局は2017年9月12日,「情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断ガイドライン」を都道府県に通知した。

 メディアは「看護師も死亡確認ができる」と報じたが,本ガイドラインには,「穏やかな看取り」とはかけ離れた見過ごすことのできない疑義がある。死に逝く人の尊厳,死別に悲しむ近親者の立場,ならびに看取り行為の中核を担う看護師の視点から述べる。

看取りを抜きに,異常死ありき?

 ガイドラインでは死亡診断する看護師を,「法医学等に関する一定の教育を受けた看護師」としている。看護師は法医学的な机上研修の他,死体検案や解剖等の実地研修を受けなければならない。看取りのプロセスを抜きに,当初から異常死の可能性を視野に入れた「死体の検視」のガイドラインである。なお,看護では亡くなった方を死体とは呼ばない。死後もその人の人格を尊重し,「ご遺体」と称している。

外表検査なる,尊厳

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