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第3233号 2017年7月24日


Medical Library 書評・新刊案内


《がん看護実践ガイド》
見てわかる
がん薬物療法における曝露対策

一般社団法人 日本がん看護学会 監修
平井 和恵,飯野 京子,神田 清子 編

《評 者》古川 裕之(山口大大学院教授・臨床薬理学/同大病院薬剤部長/臨床研究センター長)

抗がん薬取り扱い時の不安を解消できる

 仕事の疲れを癒やすために,全国各地のひなびた温泉巡りをしている。訪れる温泉の多くは,無色透明,無臭のお湯が浴槽に注ぎ込んでいる。本当に天然温泉なのか,水を沸かしただけじゃないのか……と,心配になる。白色や茶色に濁ったお湯,硫黄臭のお湯に出合うと,安心する。におい(臭い・匂い)と色は,感覚器官を通して,人間に何らかの“気付き”をもたらしてくれる。注射用の抗がん薬は,粉末のものでも溶解すれば,ほとんどが無色透明。においはない。取り扱い中に,その一部が手指に付着しても,作業台に飛び散っても,気付きにくい。だから,不安になる。

 長い間,抗がん薬のリスクは,投与される患者側の健康被害(主に,薬物有害反応)に焦点が当てられてきた。1980年代初め,米国の臨床薬学系雑誌で,抗がん薬を取り扱っている看護師の尿から正常より有意に高い濃度の変異原性物質が検出されたという論文を見て,抗がん薬を取り扱う医療スタッフ側にもリスクがあることを知った。その後,抗がん薬の混合調製から投与に関係する医療スタッフの健康被害が注目されるようになり,さらには,抗がん薬投与を受けている患者の排泄物中に含まれる,あるいは,内部と外部から衣服に付着した抗がん薬(とその代謝物)への暴露にまで,注意の範囲が広がっている。

 医療スタッフである以上,「抗がん薬は危険(Hazardous Drugs:HD)である !!」として,抗がん薬に触れない,あるいは,抗がん薬投与中の患者には近づかない……というわけにはいかない。となると,抗がん薬暴露時の危険性,あるいは,暴露を最小限にするための対策を十分に理解することが必要になる。

 看護師を対象にまとめられた本書は,「実際にどうすればよいのかを具体的に知りたい !!」という看護師の不安に応えるために,写真やイラストを多く使用して具体的な対策について説明している。また,個人防護具(Personal Protective Equipment:PPE)の着脱,バックプライミングの方法や抗がん薬のスピル(こぼれ)処理などの基本的な技術については,出版社の専用サイトにアクセスすることで動画を参照できるので,とても理解しやすい。

 不安を取り除くには,正確な知識を持つことが一番。感覚的ではなく,正確な知識が,自分を守ってくれる。

B5・頁152 定価:本体3,400円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02494-5


がん疼痛緩和の薬がわかる本 第2版

余宮 きのみ 著

《評 者》鈴木 知美(静岡県立静岡がんセンター副看護師長/緩和ケア認定看護師)

“やさしさ”と看護師へのメッセージが込められた一冊

 本書では,がんの痛みの原因,特徴,そして薬剤の特徴を理解した上で行う薬剤選択に加え,余宮きのみ先生が実践しているマネジメントのポイントと思考のプロセス,診察の場で実際に使用しているツールや具体的な方法も紹介されている。

 初版では,がん疼痛・薬剤について学ぶことが患者さんのアセスメントにつながることを強く実感した私は,待ち望んだ第2版を手にし,「看護師にやさしい本」という思いを抱いた。ここで言う“やさしい”には,3つの意味合いがある。

 1つ目は“難しいことを易しく理解できるように”(「第2版の序」より)という本書のコンセプトの通り,「がん疼痛緩和」や「薬の本」に苦手意識を持つ看護師も理解できるように一つひとつ丁寧に説明されていること。2つ目は,生活支援者である看護師を信頼し,看護師へのエールとともに,観察やケアの視点がたくさん盛り込まれていること。3つ目は,表紙の「けしの花」のイラストも変わり,オピオイドの原料とは思えないほどの美しさと温かさが表されている点。本書の内容にピッタリのやさしさが感じられる仕上がりになっている。

 本書は,「第1章 がんの痛みとがん疼痛治療の基本がわかる」「第2章 非オピオイド鎮痛薬がわかる」「第3章 オピオイドがわかる」「第4章 鎮痛補助薬がわかる」という流れで構成されている。2013年の初版から3年が経ち,その間にがん疼痛を緩和する新たな薬剤が増え,「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」が改訂されているが,本書でもフェンタニル口腔粘膜吸収剤,タペンタドール,トラマドール徐放性製剤など新たな薬剤に関する詳細な説明が加えられている。また,新たな用語であるオピオイドスイッチング,速放性製剤の説明に加え,簡易であるフェンタニル貼付剤の半面貼付の方法も紹介されている。

 さらに,トピックスや詳細な説明である「NOTE」が38項目挙げられ,「CASE」として26の症例がちりばめられている。NOTEでは,「これはどうなっているの」「どう対応すればよいの」「このメカニズムが難しくて理解ができない」という疑問や思いをキャッチしてくれたかのように応えてくれている。読み終わると,大事なことを理解し“なるほど”と感じ,知識の深まりと広がりも認識できる。CASEには,難渋した症例の薬剤調整の場面や投与経路の変更の具体的な場面など,私自身が緩和ケア病棟で出会った患者さんと同じ境遇も紹介されており,その対応や大切にしたいポイントが非常にわかりやすく解説されており,実践をイメージすることができる。

 あらためて,痛みを抱える患者さん・ご家族の的確で多角的なアセスメントと,それぞれの患者さんの生活に合わせた評価が重要であると学ぶことができる。そして,明日からの実践に活かしたい ! 患者さんが満足する疼痛治療のために,患者さん・ご家族・医療スタッフが協働して取り組んでいきたい ! と心から思える,たくさんのメッセージが込められた一冊である。

A5・頁280 定価:本体2,200円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02778-6

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