医学界新聞

インタビュー

2017.01.16



【interview】

リハ部門の実践を高める,自分と組織のマネジメント
澤田 辰徳氏(東京工科大学医療保健学部作業療法学科准教授/日本臨床作業療法学会会長)に聞く


 医療現場では,質の高い実践を“組織的に”行うことが求められる。そのためには,個人の知識・技術の研鑽に加え,その知識・技術を発揮できる組織を現場に築くことが重要だ。この両方を着実に進めていく上で欠かせないのが「マネジメント」である。

 本紙では,新規開設病院でリハビリテーション科技士長として,いかにリハビリテーションを効果的に提供するかを追求した経験を持つ澤田氏に,リハビリテーション専門職が持つべきマネジメントの視点と能力について聞いた。


――先生がマネジメントを意識し始めたのはいつでしたか。

澤田 リハビリテーション専門職(リハ職)が70人いる新規開設病院の技士長に着任したときです。在職中に140人まで増えました。それまで私は,作業療法士や職員が少ない施設と,30人弱の作業療法部門の管理者を経験していました。それらの施設ではマネジメントを特別意識しなくても職員はまとまってくれましたが,大人数で新規立ち上げの組織ではそうはいきませんでした。

コミュニケーションと実績が周囲からの信頼を生む

――現場では作業療法のニーズが高まり,作業療法士の数は増えています。

澤田 はい。人数が増えるほど,リーダーとして組織をマネジメントする能力の重要性は高まります。例えば,労務管理では,定時に帰る,妊婦支援などの環境作りを行う。求人のために魅力ある職場,経営計画を作る。すべき課題について整理・分配して部下と共に成果を出す。そういったマネジメントは当然必要です。

――それまでのやり方が変わることに反発する職員もいると思いますが,職場で意識をそろえるために何をしていましたか。

澤田 コミュニケーションです。全員と密に話すのは不可能なので,自分に近い上司・部下と中心に話しました。将来のビジョンをきちんと説明し,意見を聞きつつ,具体的な事例で何が大切かを語ることで組織の方針を共有しました。そして,その部下に周囲に説明してもらうという構図です。

――リハ部門のリーダーとして,医師や他部門の長とはどのように付き合ったのでしょうか。

澤田 医師とは,自分の担当患者について相談していました。私の取り組みが対象者の成果に結び付いたこともあって,医師からリハビリテーションの包括的指示をもらい,専門職としての視点から患者さんの状態に合わせた具体的な提案もできていました。

 院長や事務長,診療部長や他職種の長ともよく連絡を取りました。ここで重要なことは,リハ部門以外の業務も自分から率先して行うことです。作業療法士は作業療法だけを実践すればいいわけではありません。リハ部門も病院の組織の一部である以上,部門の利益だけでなく,患者さんも含めた全体でwin-winの関係になることをめざすべきだと考えています。

 そして,管理者としても作業療法士としても結果を出す。部下には「過程も大事だ」と言いましたが,個人的にはやはり結果を出して周囲からの信頼を得ることを重視していましたね。

――先生は他のリハ職の上司も務めていました。専門性の違う部下を持つ難しさがあったと思います。

澤田 理念や方針に反する態度に関しては強く指導しましたが,専門的な部分は基本的には信頼して任せていました。私は作業療法以外の専門性については詳しくわかりません。「餅は餅屋」ですから,組織の方針に則って,個人や各部門がやりたいことや,やるべきことの実践,支援をしていました。

――先生はどのような理念を持ってマネジメントに取り組みましたか。

澤田 「対象者の生活に焦点を当てた作業療法」を“組織的に”実践することです。

――具体的にはどのようなものですか。

澤田 対象者にとって意味と目的のある活動を獲得することに留意した作業療法です。約...

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