医学書院

検索
HOME週刊医学界新聞 > 第3198号 2016年11月07日



第3198号 2016年11月7日


Medical Library 書評・新刊案内


加齢黄斑変性 第2版

吉村 長久 編

《評 者》北岡 隆(長崎大大学院教授・眼科・視覚科学)

内容が一新された待望の第2版

 待望の『加齢黄斑変性』の第2版が出版されました。

 加齢黄斑変性という疾患は「狭義加齢黄斑変性」と「広義加齢黄斑変性」という用語がある一方で,ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)の病気の本態は新生血管か,異常血管かといった議論があり,ある意味体系立てて理解しにくいという問題がありました。そんな中『加齢黄斑変性』初版では,PCVに多くのページが割かれ,通読しても面白く,一部を読んでいくだけでも加齢黄斑変性の理解が深まりました。しかしその後,新生血管の研究が進み,抗VEGF薬治療も新しい局面を迎え,pachychoroid neovasculopathyなどの概念が出てきて,加齢黄斑変性の概念も変わりつつあります。

 また初版では時代的背景もあり使用されたOCT画像がtime-domainのものも多く,解像度の点で粗い画像が多かったという問題がありました。第2版では画像が圧倒的にきれいになっており,さらに加齢黄斑変性の概念図が大きく変わっています。分担執筆が多い昨今にあり,編集の吉村長久先生の考えで貫かれた一貫性のある内容で,通読しても面白く,一部を読んでいっても理解が深まるという点はそのままですが,第2版というよりも別の本かと思えるほど内容が一新されており,継ぎはぎ感がありません。初版では,PCVは新生血管か血管異常かという議論があったという歴史的な背景から,PCVに多くのページが割かれており,読み物としても興味の尽きない内容で,第2版が出版されたことの,最も惜しむべき点は初版が手に入らなくなったことかもしれません。

 第2版の特徴を列挙しますと,今後欧米ほどでないが日本でも多くなることが予想される萎縮型加齢黄斑変性に多くの記載が割かれていること,症例検討が豊富に用意されていること,これまでに行われてきた抗VEGF薬治療の大規模臨床試験に多くの記載があり,よく理解できることが挙げられます。

 しかし何と言っても最大の特徴は,ややもすればわかりにくい加齢黄斑変性の概念が容易に理解できることです。「検査と診察」の項では,眼科医の基本姿勢と眼底疾患全般の診察の仕方がしっかりと書かれている点は変わりなく,日頃の忙しい診療に流されがちな自分自身を反省させられるとともに,若い眼科医にも通読して基本として身につけてもらいたい部分です。

 本書は,混乱した,理解しにくい加齢黄斑変性の分類の歴史,概念が,吉村先生の頭脳というフィルターを通して整理されて頭に入ってくるという点が特筆すべきところです。「序」にもありますようにOCT angiographyについてはまだ使用が始まったばかりであり本書では扱いがありませんが,本書を読めば,吉村先生の編集によるOCT angiographyについての本も早く読みたいと切望する気になるはずです。

A4・頁352 定価:本体18,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02448-8


術者MITSUDOの押さないPCI

光藤 和明 著
倉敷中央病院循環器内科 執筆協力

《評 者》山下 武廣(心臓血管センター北海道大野病院副院長)

PCIが存続する限り名著であり続ける

 本書は,2015年10月に急逝された光藤和明医師が書きためた原稿を,倉敷中央病院循環器内科スタッフが加筆・整頓して書籍化したPCIの大書である。光藤医師が「PCIのFinal frontier」としたCTO(Chronic Total Occlusion),分岐部ステント術を中心に据え,加えて右冠動脈入口部,左主幹部へのステント術,さらには光藤医師がPCIの本質とした「押さないPCI」を,あえて「押してよい」場面を例示しながら詳述している。

 直面し得る陥穽を前もって予測し,リスクを可及的回避しながらいかに確実に手技を完遂するか,通常の技術書ではちりばめられる「パール」が,本書では惜しげもなくオンパレードで教示されている。一語一句全てが,膨大な経験と深い洞察に基づいたパールと感じられ,ベテランインターベンショニストであっても1ページ読み進む間に何度もハッとさせられるのではないだろうか。さらにPCIのテクニック論にとどまらず,PCIを用いて医療を行うプロフェッショナルとしての人生哲学が随所に染み出ており,これぞ光藤流PCIの神髄と感じられる。

 これからを担う若き医師たちに,めざすべきインターベンショニスト像を見いだし,見据える機会を与える必読の書であろう。中堅以上のインターベンショニストは,本書の内容をどこまで正確に理解し自身で実行し得るか,キャリア史上最大の到達目標を得るかもしれない。

 通読後は,本書がPCIという治療法が存続する限り永遠の名著となることを確信させる。

B5・頁264 定価:本体8,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02527-0


DSM-5®ガイドブック
診断基準を使いこなすための指針

Black DW,Grant JE 原著
髙橋 三郎 監訳
下田 和孝,大曽根 彰 訳

《評 者》須田 史朗(自治医大教授・精神医学)

臨床現場での使用に即したDSM-5解説書の決定版

 本書はBlack DWとGrant JEによる“DSM-5 Guidebook”の全訳であり,数あるDSM-5解説書の中でもAmerican Psychiatric Association(APA)が出版した本家本元の“公式ガイドブック”である。

 1990年代以降,科学は目覚ましい発展を遂げ,さまざまな技術革新が多くの生命現象を可視化することに成功した。精神医学もその恩恵を受け,分子生物学や神経画像,疫学研究によるデータの蓄積が新たな知見と洞察を生み,なおも発展を続けている。ことに臨床研究においては,DSMによる疾病分類が果たしてきた役割は計り知れない。

 2013年5月,APAはおよそ20年の時を経てDSMを全面改訂し,DSM-5を世に送り出した。DSM-5では作成の基本指針に「DSM-IV出版以来蓄積されたエビデンスを,変更を行う指針として用いる」という項目が含まれており,これまでの研究成果により提唱,あるいは変革された新たな疾病概念が反映されている。本書の冒頭は「科学とは経験を体系的に分類することである」というイギリスの哲学者George Henry Lewesの言葉の引用に始まり,「新しい知識に応じて精神疾患の分類――そして,その診断基準――は進化していかなければならない」という一文で締めくくられており(「はじめに」より),このガイドブックを記した筆者のDSMに対する考えと科学的姿勢が示されている。

 DSM-5は現代精神医学の発展を反映したいわば「正常進化」の形を取ってはいるが,とりわけDSM-IIIから続いていた多軸診断システムの廃止とディメンション方式による評価の新たな導入や,児童精神医学領域,神経症性障害における変更箇所の多さなどが臨床現場の混乱を招いたことは記憶に新しい。本書はそのような臨床家の疑問や戸惑いに答えるべく構成されており,Chapter 1ではDSM開発の歴史や変遷,Chapter 2ではDSM-5の使用法とDSM-IVからの変更点のまとめ,Chapter 3~19では各疾患,症候群におけるDSM-5診断基準の解説とtips,Chapter 20ではディメンション方式で使用される評価尺度,Chapter 21~22ではパーソナリティ障害群の代替モデル,今後の研究のための診断基準案の解説が要領よく記載されている。

 本書は滋賀医大髙橋三郎名誉教授の監訳のもと,獨協医大精神神経医学講座の下田和孝主任教授を中心としたグループにより翻訳が行われた。Chapter 1~2のDSM開発の経緯やDSM-IV-TRからの主要な変更点の記述は近代精神医学の発展の歴史を理解する上で大変興味深く,読み物としても面白い。Chapter 3以降の診断基準の解説では日本語版『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』や『DSM-5精神疾患の分類と診断の手引』の該当項目の記載ページが参照できるようになっており,症例検討会などの現場での使用にも配慮されたものとなっている。文章は平易で大変読みやすく,かなりuser-friendlyな内容である。タイトル通り,まさに「診断基準を使いこなすための指針」であり,臨床現場での使用に即したDSM-5解説書の決定版として,研修医・コメディカルスタッフからベテランの精神科専門医まで多くの諸氏に自信を持ってお薦めしたい。今からでも遅くありませんよ。

B5・頁464 定価:本体9,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02486-0


外来診療ドリル
診断&マネジメント力を鍛える200問

松村 真司,矢吹 拓 編

《評 者》鈴木 富雄(阪医大病院総合診療科科長)

『外来診療ドリル』完全制覇への道

 『外来診療ドリル』。「ドリル」と名前がついたこの本は,気軽に読めるようで実は極めて骨太の本である。今回書評の依頼をいただいたので,ひとまず問題を解きながら全て通読してみた。最初は「1日20問,10日で終了できる。これは軽い」と思っていたが,大きな間違いであった。問題を解き始めてみると,「う~ん,なるほど!」「そ,そうだったか……」の連続で,なかなか先に進めない。1回目を終了するまでに結局2か月近くもかかり,しかも正答率は大学の進級試験であれば,「なんとか合格点は取れたが……」という体たらく。得点の公表は私も立場があるので,どうかご容赦を……。

 あまりの不出来ぶりに自分自身もショックを受け,「このままでは終われない」と,再度挑戦。もう一度初めから終わりまで問題を解いてみた。「今度は2回目だからスイスイ行くだろう」と思っていたが,これまた今一つで,やはり同じところを間違える(笑)。結局2回目も1か月以上かかってしまった。ただし,1回目はとにかく問題をこなすだけであったが,2回目は疑問に思った部分に関して,記載文献を参考に自分でも調べてみる余裕ができた。その上で解説を読み直してみると,コンパクトにまとめられたその記載の素晴らしさにあらためて納得することができた。

 この本の持ち味は,その問題の多様性と,臨床家の隙を突くような絶妙な難易度にある。また問題と解説がそれぞれ1ページの表と裏に収められ,非常に使いやすい。記載文献の数と選択も適切である。

 比較的簡単に正解できたとしても,ぜひ解説文を一読いただき,興味を持たれた部分やあやふやな分野に関しては,記載文献を参考に自分で少し調べてみることをお薦めする。ある程度余白もあるので,書き込みもできる。ドリルはドリル。下線と付箋と書き込みで自分だけの一冊にしてこそ価値がある。

 このドリルは,総合診療医や家庭医などのジェネラルな分野の専門医をめざす後期研修医のトレーニングにも最適であるが,腕に覚えのあるベテランの臨床家の先生にこそ,ぜひチャレンジしてほしい。まずはその鼻っ柱が折られること間違いない。7割取れれば素晴らしい。8割取れればトレビアン。9割取れればレジェンドの域といえよう。

 ちなみに私は,「ここまできたら」との思いで3回目にチャレンジしてみた。今度は1週間で終了し,ようやく全問正解。書評の依頼をいただいてから,4か月目にしてようやく完全制覇。下線と付箋と書き込みで手垢にまみれたこのドリルは,私の大切な一冊となった。

B5・頁212 定価:本体4,200円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02505-8


高次脳機能障害のリハビリテーション[DVD付]
実践的アプローチ 第3版

本田 哲三 編

《評 者》花山 耕三(川崎医大教授・リハビリテーション医学)

高次脳機能障害者の病態から日常生活までを現場目線で解説した入門書

 本書は,2005年の初版刊行以来好評を博している高次脳機能障害リハビリテーションの実践的テキストの改訂第3版となる。

 他の障害が主と思われていた患者が,実は高次脳機能障害を併せ持っていたということは,リハビリテーションの現場では少なくない。もちろん現場では,高次脳機能障害が主となる患者もその認識の高まりから増加しているのが現状である。本書は,このような患者に対する疑問,例えば「どのような症状がみられるのか」「どのように診断・評価するのか」「その病態は何か」「訓練場面では何をするのか」「生活場面ではどのような問題が起こり,どう対処するのか」「薬物をどう使うのか」などについて,その類型である10の障害おのおのに対し,多くの具体例を引きつつ網羅的に述べられている。また,患者への訓練の場で用いる課題シートがおのおのの障害で掲載されており,その障害の欠けている点を知るために有効である。

 本書は,構成や色使いといった要因もあるだろうか,前版より読みやすくなった印象を受ける。さらに今回の版から新たに,脳画像所見,若年脳外傷者のアプローチ,自動車運転の章が追加されたことは意義深い。特に自動車運転については,生活上のニードが高い障害者が多い一方で,事故の危険を伴うだけに,どのように対処すべきかわれわれ医療者の頭を悩ませる問題であり,近年の高次脳機能障害におけるホットなトピックスとなっている。また,付録のDVDは,患者の行動や家族の話から,その障害のイメージを形成するのに有用である。

 失語・失認・失行といった古典的な高次脳機能障害から行政的定義による高次脳機能障害に至るまで,その全てを現場目線で解説した良書である。編集の本田哲三氏はリハビリテーション科専門医であり,本書を通して,病態から生活までを全て見通して対処すべきという姿勢が貫かれ,それらの要点が簡潔にまとめられている。医師,療法士のみならず,看護,介護分野のスタッフの入門書として手元に置いて活用することをお薦めする。

B5・頁336 定価:本体4,200円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02477-8

関連書
    関連書はありません