医学界新聞

2016.07.11



第7回日本プライマリ・ケア連合学会開催


 第7回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会(大会長=台東区立台東病院・山田隆司氏)が2016年6月11~12日,浅草ビューホテル,他(東京都台東区)で開催された。「地域医療と総合診療医――みんなでつくる地域医療,みんなで育てる総合診療医」をテーマに掲げた今回,延べ5800人を超える参加者が集まり,各会場で活発な議論がなされた。

総合診療と他領域との連携を考える

山田隆司大会長
 2017年4月開始予定の新専門医制度において,19番目の基本領域として新たに加わることとなった総合診療。研修制度の内容はもちろんのこと,専門医資格取得後のキャリア選択についても高い関心が寄せられている。シンポジウム「総合診療専門医制度から広がる多様な領域との連携」(座長=北海道家庭医療学センター・草場鉄周氏,医療福祉生協連家庭医療学開発センター・藤沼康樹氏)では5学会から演者を招き,総合診療を核とした多領域との連携の方向性や課題などが共有された。

 日本在宅医学会の木下朋雄氏(コンフォガーデンクリニック)は,現行の在宅医療専門医制度について概説。在宅医療の重要性が高まる中,専門医数がまだ十分でないこと,研修プログラムが都市部に偏っていることなどを課題に挙げた。現在新制度を作成中である同学会では,在宅医療専門医のあるべき姿を明確にし,関連領域と整合性,客観性のあるプログラム・認定制度を整備する方針だという。また,総合診療を含むいくつかの基本領域において,今後は在宅医療の研修が必要になるとの見通しから,研修資源の提供方法についても考えていきたいと述べた。

 「総合診療医のサブスペシャルティの一つとして,緩和医療は重要な領域」。日本緩和医療学会の立場からこう語った山本亮氏(佐久総合病院)は,緩和医療の特殊性として基本領域が限定できないこと,他領域で研修を積んだ後に緩和医療の道を志す医師が多いことを指摘。こうした特殊性を踏まえ,キャリアの途中で緩和医療を志した医師も進むことができるようなプログラムを設計していきたいと語った。さらに氏は,緩和医療と総合診療は患者・家族の「苦痛」に焦点を当てるという類似性を持つことから,総合診療の選択研修中に緩和ケアの研修を行うことで,苦痛緩和のための知識・技能・態度を身につけることができるのではないかとの考えを示した。

 地域の総合病院で総合診療科・救命救急センターの責任者として専門医養成に携わる福岡敏雄氏(倉敷中央病院)は,総合診療と集中治療の関係性について解説した。集中治療医は麻酔科医が多い,狭い範囲しか扱わないといった誤解を受けがちであるが,近年は重症患者を一貫して管理する立場として継続医療の重要性が高まっていると話した。もともと総合診療と集中治療は,多様な臓器・病態・患者層を対象とする点で似た立場にあり,幅広い診療領域と視点を持つ総合診療医が集中治療専門医となることで,社会復帰までを見据えた集中治療体制構築に寄与すると期待を寄せた。

 輸血医療に関する知識を身につけることの重要性を訴えたのは,日本輸血・細胞治療学会の田中朝志氏(東医大八王子医療センター)。現在日本では,小規模病院や診療所を含む1万以上の医療機関で輸血が行われているという。安全性の確保,血液製剤使用の妥当性の判断といった観点から,血液製剤の多様な機能・特徴を理解し,使用法に習熟しておくことは現代医療において不可欠であると述べた。今後さらに進む超高齢社会を視野に入れ,地域医療の中で安全かつ適正な輸血体制を構築していくために,輸血医療に対する総合診療専門医の積極的な関与を呼び掛けた。

 最後に登壇した内藤俊夫氏(順大)は,総合診療医のサブスペシャルティの一つとして現在検討が進められている病院総合診療医(仮称)の制度について報告した。日本病院総合診療医学会は日本プライマリ・ケア連合学会と合同で,「病院総合診療医養成プログラム認定試行事業」を開始しており,この事業をもとに新たなプログラム認定制度の整備を両学会合同で進めていく方針。病院を,総合診療医の活躍する重要な場として位置付け,後期研修修了者が病院でより高度な役割を担う能力を修得できるプログラムにしたいと語った。

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