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第3179号 2016年6月20日


第112回日本精神神経学会開催


 第112回日本精神神経学会学術総会(会長=慈恵医大・中山和彦氏)が,6月2~4日,幕張メッセ,他(千葉市)にて開催された。「まっすぐ・こころに届く・精神医学」がテーマに掲げられた今大会では,90を超えるシンポジウムに加え,数多くの講演やワークショップが企画され,熱い議論が交わされた。

精神障害者の自動車運転をどのように考えるべきか

中山和彦会長
 2014年施行の「自動車運転死傷行為処罰法」により,疾患や服薬の影響で運転事故を起こした場合の厳罰化が規定された。患者の運転可否の判断や,添付文書で運転禁止が明記されている薬剤の多さなど,精神科医を悩ませる問題は多い。シンポジウム「精神障害と自動車運転――運転事故新法および添付文書の現状を踏まえた今後の方向性」(司会=名大大学院・尾崎紀夫氏,東女医大・石郷岡純氏)では,法施行後の現況や問題点が議論された。

 各国の研究結果を概説したのは,名大大学院の岩本邦弘氏。疫学研究において,向精神薬と運転事故の関連は報告されているものの,疾患の重症度や服薬状況といった他の要因が関与している可能性も否定できないこと,精神障害自体のリスクを検討した研究は乏しいことなどから,精神障害と運転事故の直接的な因果関係は明らかとなっていないと話した。また,運転技能に影響を与えるとされる向精神薬についても,種類によって影響の程度は異なり,一様かつ持続的に影響を与える証左はないと指摘。患者に対して画一的な指導をせざるを得ない現状に触れ,今後は個別的かつ科学的根拠に基づいた指導や情報提供が可能となるよう,制度改正の必要性を訴えた。

 続いて登壇した三野進氏(みのクリニック)は,道交法と添付文書における矛盾について問題提起。現行法では,てんかんや統合失調症など政令で定められた疾患を有する人には,運転を行うために治療薬の服薬が義務付けられている。その一方で,こうした治療薬の多くは,副作用を理由に服薬中の運転禁止が添付文書内で一律的に明記されているという。その結果,実際には運転適性があっても運転免許の取消・停止となる患者が増えており,患者の社会生活に大きな影響を与えていると述べた。氏らは学会などを通じ,添付文書の適切な改訂・付記を求めており,参加者にも現状を変えていくための協力を呼び掛けた。

 この他,医薬品等の審査業務を行う立場から,中林哲夫氏(医薬品医療機器総合機構)が自動車運転能力の評価方法と,そこから得られたデータを解釈するための基本的な考え方について解説し,医師で弁護士でもある田邉昇氏(中村・平井・田邉法律事務所)が実際の裁判例をもとに,疾患や服薬がかかわる運転事故の法的な観点からの解釈を紹介した。