医学界新聞

インタビュー

2016.06.13



【interview】

「研修プログラムを吟味し,将来設計に適した選択を」
四宮 謙一氏(日本専門医機構専門研修プログラム研修施設評価・認定部門委員長/横浜市立みなと赤十字病院院長)に聞く


――新専門医制度に関して,研修医から専門医機構にはどういった質問が寄せられているでしょうか。

四宮 もっとも切実なのは専門研修の中断・延長に関するもので,妊娠や出産,病気,介護など事情はさまざまです。専門医機構として,中断期間が6か月以内の場合は「各領域で定められた研修期間の残りの期間で研修要件を満たしていれば,研修期間の延長をせずにプログラム修了と認定する」という指針を示しました。中断が6か月を超えた場合は,研修期間の延長が必要となります。

――育休についてはどのような扱いになりますか。

四宮 育児短時間勤務制度を利用する場合は,「雇用時間の合計」が年間1440時間(=週30時間×4週×12か月)を超えていれば,1年間の研修期間とみなします。ただし,中断の場合と同様,その期間のうちに各領域の研修要件をキャッチアップすることがプログラム修了の条件となります。

――研修カリキュラムの達成レベルを満たすことを大前提に,中断や短時間雇用は柔軟に対応するということですね。

四宮 ええ。ただ,これはあくまで専門医機構としての指針であり,領域によって休止期間など具体的な条件は異なります。希望する診療科が決まっているならその領域の整備基準を参照するか,あるいは専門医機構内の領域研修委員会に直接質問してください。

――何らかの理由で臨床研修の修了予定時期が既に遅れている場合はどうなりますか。

四宮 例えば,通常なら2017年3月末修了のところ,2017年6月末修了予定の研修医がいるとします。その場合,2018年4月からの専門研修を待つのではなく,2017年4月からの専攻医として応募できるような措置を検討中です。

――2017年4月から3か月間の扱いは?

四宮 プログラムに在籍した上での中断期間として扱うことを考えています。理事会で承認を得て,正式に発表できる見込みです。

――そもそも,なぜ新専門医制度が必要なのか。研修医の理解が深まっていません。

四宮 これまでは学会が独自に専門医制度を運用してきたため,運用基準が統一されていませんでした。しかも,専門医の認定は主に試験による合否判定で行われており,専門医としての知識・技能・態度が十分に保証されているとは言い難かったと思います。そこで,2011年より厚労省「専門医の在り方に関する検討会」(座長=日本医学会長・髙久史麿氏)にて議論を重ねた結果,第三者機関である専門医機構が2014年に設立された経緯があります。

 ですから新制度では,試験という“出口”だけではなく,研修プログラム制度による研修の過程と実績評価を重視しています。研修プログラムは領域ごとに研修内容の標準化が行われ,到達目標達成のための形成的/総括的評価が求められます。また,基幹施設と複数の連携施設で施設群を形成することになりました。これにより,地域医療のなかで経験を積み,超高齢社会において求められる知識や技能も獲得することができます。

――連携施設となる地域の中小病院を経験することは,医師の地域偏在・診療科偏在を緩和するための策というわけでもないのでしょうか。

四宮 医師の偏在は確かに重要な課題であり,「在り方検討会」でも優れた専門医制度と地域医療に配慮した制度設計の両立が提言されたところです。しかし,新専門医制度の本来の役割は,専門医としての標準的な能力を持ち,社会から信頼される専門医を輩出することに間違いありません。

――研修医に向けてのメッセージをお願いします。

四宮 新制度では,アカデミックな研修から地域完結型医療を経験できる研修まで,プログラムごとの特徴が明確に出るはずです。それらをよく吟味した上で,施設の場所や便利さではなくて,自分の将来設計に適した研修内容のプログラムを選んでほしい。専門医機構としては,専攻医を含む関係者らと力を合わせて,若手医師にとって魅力的な専門医制度へと発展させていきたいと考えています。

(了)

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