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第3175号 2016年5月23日


医師事務作業補助者の役割を問う

第18回日本医療マネジメント学会開催


 第18回日本医療マネジメント学会学術総会が4月22~23日,田中二郎会長(飯塚病院名誉院長)のもと「明るい病院改革――改善とイノベーションで切り拓く明日の最適医療」をテーマに福岡国際会議場,他(福岡市)にて開催された。本紙では,導入施設が右肩上がりの増加を続けている「医師事務作業補助者」の役割について議論されたシンポジウムの模様を報告する。


田中二郎会長
 2007年12月の厚労省医政局長通知「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」(医政発第1228001号)では,医師による診療録等の記載を一定の条件下において事務職員が代行することが,初めて認められた。

 翌08年度の診療報酬改定においては,勤務医の負担軽減を目的に「医師事務作業補助体制加算」を新設。医師事務作業補助者の業務として,①文書作成補助(診断書・指示書・意見書など),②診療録の代行入力(診療録記載,オーダリング作業),③医療の質の向上に資する事務作業(データ整理,カンファ準備など),④行政上の業務(救急医療情報システムの入力など)が位置付けられることになった。

診療報酬新設から8年,業務標準化と質向上に向けて

 加算の届け出数は08年の730施設に始まり,現在は2500施設を超える。16年度診療報酬改定においても点数の引き上げや要件緩和が盛り込まれており,当面は増加傾向が続く見込みだ。 シンポジウム「医療の質向上のために医師事務作業補助者の果たすべき役割」(座長=松本市立病院・中村雅彦氏)の冒頭では,座長の中村氏が今回のシンポジウムの趣旨を説明。「今や医師事務作業補助者は病院にとって不可欠な存在であり,他業種との役割分担や連携も進んでいる」と評価した上で,「診療報酬の新設から8年を経て,次のステージを考えるべき時期」と提言した。

 さらに氏は,“質の高い事務作業補助”の提供に向けて,①インシデント/アクシデント事例の分析,②インシデント/アクシデントを防ぐ対策,③標準化された業務を提供するための方策,を論点として提示した。これらについて,日本医療マネジメント学会が行っている講習会の現状を説明するとともに,自施設での取り組み事例を紹介。今年度からは,院内の医療安全管理委員会のメンバーに医師事務作業補助者を入れたことを明らかにした。

 医師事務作業補助者の矢口智子氏(浅ノ川金沢脳神経外科病院)は,実務者の立場から現状と課題を述べた。病院の特性や規模によって業務内容が多様化・高度化しており,医師事務作業補助者のスキルに差が生じていることを指摘。質の管理には業務の標準化が不可欠であり,業務マニュアルの整備やリーダー育成,組織内での医師事務作業補助部門としての確立が必要ではないかと提言した。さらに,氏が立ち上げたNPO法人日本医師事務作業補助研究会での活動内容をもとに,経験年数に応じた到達目標の設定や教育プログラムの策定,多様な雇用形態を踏まえた人材の活性化につなげていきたいと展望を語った。

シンポジウム「医療の質向上のために医師事務作業補助者の果たすべき役割」

補助者の有効活用のために医師の意識をどう改革するか

 医師事務作業補助者の配置による負担軽減は多くの勤務医が実感しているものの,病院管理者としては,現行の診療報酬点数を踏まえるとさらなる増員には慎重にならざるを得ない実情がある。西澤延宏氏(佐久総合病院)は,「経営対策として戦略的に,医師事務作業補助者の業務内容や配置を考えるべき」と説いた。

 佐久総合病院は,従来の総合案内や地域医療連携室,医事課,持参薬管理室などの機能を集約した「患者サポートセンター」を運営。多職種が連携して患者サービスの中核的役割を担う部門となっている。そのうち入退院支援業務においては,看護師と共に医師事務作業補助を複数人配置。“各科外来ではない場所で,専任者が全ての予約入院患者に対応する”というシステムを構築した。術前検査やクリティカルパスのオーダーは医師事務作業補助者が代行入力を行うなど入院前マネジメントが効率化され,「医師は入院適応と日程を決めるだけ」で済むようになったことを明らかにした。

 斎藤恵一氏(国際医療福祉大大学院)は,医師事務作業補助者が介在することによる医療安全上のリスクと対策について考察。「医師の指示→代行入力→確認・承認」という事象発生モデルを学術的な観点から分析するとともに,想定被害の大きい事務作業の取り扱いについてはさらなる研究が必要であると結論付けた。

 その後の討論では会場から,「医師事務作業補助者をチームの一員として活用する上で,医師の意識改革が難しい」という意見が出された。これに対して矢口氏は,医師事務作業補助部門の確立が重要であると指摘。中村氏は,「医師および診療科の個別の事情に配慮して対応することで,“助かっている実感”が得やすくなる」と助言した。西澤氏は,補助者の活用には医師の業務の標準化が不可欠であることから,「負担が軽減される代わりに,クリティカルパスを用いるなどして業務を標準化するように強く要求した」と経験談を述べた。

 また,医師事務作業補助者の業務範囲にも議論は及び,「処方・注射オーダーの代行範囲はDo処方に限定する」「手術オーダーは不可」など,直接的な医療行為に関しては院内でルールを設け,線引きをしていくことが肝要であるとの意見が出された。

平成28年熊本地震を受け緊急報告会開催

本学術総会は,4月14日以降に熊本県・大分県で相次いで発生した地震の直後に開催された。開会式では田中会長が,「予定通り開催すべきか否か悩ましかったが,一堂に会して被災地に向け支援・応援のメッセージを送るべきと考えるに至った」と経緯を説明。会場で義援金を募るとともに,懇親会はチャリティ形式で開催すると述べた。また,総会後には「平成28年熊本地震緊急報告会」が実施された。冒頭,同学会理事長で熊本市在住の宮崎久義氏(写真)が自らの被害状況と経験談を説明。その後,飯塚病院の医師らが,災害派遣医療チーム「DMAT」および日本プライマリ・ケア連合学会内の災害医療支援チーム「PCAT」の活動報告を行った。