第89回日本薬理学会開催
2016.04.11
ノーベル賞受賞の大村智氏が講演
第89回日本薬理学会の話題より
講演後に花束を贈呈される大村智氏 |
「実学の精神」が生んだ産学連携
大村氏は,長年にわたる微生物由来生物活性物質の探索により約480種の新規化学物質を発見。そのうち26種が,医薬,動物薬,農薬,研究用試薬として実用化されている。中でもエバーメクチンは,メルク社との共同研究によりイベルメクチンの開発につながり,当初は家畜用薬として発売された後,現在はオンコセルカ症(河川盲目症)やリンパ系フィラリア症などの治療薬として広く普及している。
化合物の特許を取得した上で製薬会社に使用権を渡し,薬剤の開発・販売後は売上高に応じて特許ロイヤリティを得るという共同研究契約は「大村方式」とも呼ばれ,産学連携の先駆者として知られる。これは,当時“弱小研究室”だった北里研究所にとっては必然であり,動物薬の開発に着目したのも,製薬会社のニーズに合致したからであるという。「金がないから何もできないという人間は,金があっても何もできない人間である」という実業家・小林一三の言葉をひもとき,北里柴三郎の掲げた「実学の精神」の重要性を訴えた。
講演の最後には,華道家・勅使河原蒼風の著書『花伝書』にある次の一節を紹介し,次世代の薬理学者に向け,研究を実地応用に結び付ける心構えを説いた。「求めていなければ授からない。だから,いつでも求めていなければならない。自分にだけ授かるものが,どこかにある。それを授かるのはいつなのか。ついに授からないかもしれないが,求めていなければ授からないのだ」。
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