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第3147号 2015年10月26日


Medical Library 書評・新刊案内


看護教育へようこそ

池西 靜江,石束 佳子 著

《評 者》荒川 眞知子(日本看護学校協議会会長)

学生の可能性を信じ,自ら学び続けるための看護教員の心得書

 超高齢社会を迎え,今後より一層,保健医療福祉の充実が求められる。中でも看護職員の質・量の確保は大きな課題であり,厚労省は「2025年には看護職員を50万人増やす必要がある」と,具体的な数値を打ち出している。そのためには,これまで以上に看護職養成に携わる教員の質・量の確保が重要となる。しかし,われわれが行った「看護師養成所の管理運営等に関する実態調査」でも,多くの養成所において「慢性的な教員不足」の状態が続いている。看護教育を通して,学生と共に成長する喜び,その仕事のやりがいや魅力を次の世代の人々に伝えたい――。そう思いながら,看護教育に携わってきた者として,本書の誕生を心から喜び,感謝している。

 本書は,全18章で構成されており,看護教育実践に必要な全てが網羅されている。この領域の書籍として,方法論に関するもの,教育カリキュラムに関するもの,学校管理や学校経営に関するもの等それぞれについては数多く出版されているが,本書のように一冊にまとめられているものは見当たらない。

 著者は,「百年を思うものは人を育てよ」と古の言葉を引用しながら,すぐに答えの出ない“教育”に対して決してあせらなくてよいこと,また学ぶ人を「発達可能性を秘めた人」ととらえ,なにげない些細なことが「やりがい」となると示す。この教育観は,悩みながら手探りで看護教育に携わっている人たちに「教育の本質」を見いだすための道しるべとなるであろう。

 本書では,著者たちの30年以上にわたる実体験が事例やエピソードとして,惜しみなく余すことなく紹介されている。その内容は教員としての喜びにつながる成功体験をはじめ,「辞めてしまおう」と思うほどの辛い体験や,良かれと思って行った指導が学生を傷つけてしまっていたことに気付いたときの恥ずかしく悲しい体験等である。読む人それぞれが自分の体験と重ねながら,自己を振り返り,また看護教育の面白さに気付き,「頑張って続けよう」と前向きになり,自信を取り戻すことができる。看護教育が「面白い」「やりがい」となるために,教員は,学生と共に在ること,何よりも学生の可能性を信じ,学び続けること,探究心を失わないことが大切であることを示唆している。19ページの「看護教員の『心得十か条』」は,著者の体験から導かれたものだけに説得力がある。

 コラムや丁寧な用語解説が,本書をより理解しやすいものにしている。「もっと深く知りたい」と学習意欲を喚起させる。「看護基礎教育の実務に戸惑う教員を応援したい,看護教育の道を選んでくれた人たちが,これからも教員であり続けられるように」という著者の願いが本の構成・内容に反映されている。

 新任教員だけでなく,彼らを導き支える中堅,管理的な立場にある人の今を,そしてこれからの歩みに力を与え,次世代の人への指導書としても役立つ本である。看護教育に携わる全ての人に本書を活用されることを勧めたい。

B5・頁216 定価:本体2,800円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02121-0

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