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第3130号 2015年6月22日


スキンテア予防・管理指針を作成


西村かおる会長
 第24回日本創傷・オストミー・失禁管理学会(以下,WOC学会)が2015年5月30-31日,西村かおる会長(NPO法人日本コンチネンス協会)のもと「排泄ケアの本質と革新――変わらぬケアと進化するケア」をテーマに開催された(会場=千葉市美浜区・幕張メッセ)。今学会では,2013年に行われた事前調査(第3081号参照)に続き,2014年に実施されたスキンテア全国実態調査の結果と,それを基に作成された予防・管理の指針案が示された。本紙では,コンセンサスシンポジウム「テアの状態と管理の実態」(座長=東大大学院・真田弘美氏,前・宮城大大学院・徳永惠子氏)の模様を報告する。

老人の脆弱な皮膚を守る

 テアは,「主として高齢者の四肢に発生する外傷性創傷であり,摩擦単独あるいは摩擦・ずれによって,表皮が真皮から分離(部分層創傷),または表皮および真皮が下層構造から分離(全層創傷)して生じる」(註1)。テアが発生しやすい背景には,高齢者の皮膚は,表皮の菲薄化と表皮突起の平坦化,真皮乳頭層の毛細血管係蹄の消失が生じ,皮脂分泌や天然保湿因子が減少しバリア機能が低下していることが挙げられる。安部正敏氏(札幌皮膚科クリニック)は,これまではテア発生メカニズムに基づくケア指針がなかったため,医療従事者は予防や対応に難渋していたと現状を分析した。

 スキンテア全国実態調査の結果は,紺家千津子氏(金沢医大)から報告された。全体の粗有病率は0.77%,75歳以上では1.65%と褥瘡有病率より低かった。しかし,本調査はWOCナース所属施設で行ったため,通常施設の実態より有病率が低い可能性もあると指摘。テアハイリスク患者(註2)を中心に皮膚の観察を実施し,予防ケアに重点を置くように注意を促した。有病率が高い診療科・病棟には,皮膚科,アレルギー・リウマチ科,ICU・救急と後期高齢者の割合が多い病棟が挙げられた。テアは,テープ剝離時に発生しやすく,上肢に多発,1患者の保有数は1-8部位,皮弁欠損創傷が多いことなどが明らかになったという。

 間宮直子氏(大阪府済生会吹田病院)と大桑麻由美氏(金沢大)は,テア発生と再発の予防ケアを紹介した。予防は大きく分けて,①栄養管理,②外力保護ケア,③スキンケア,④医療・介護メンバー教育,⑤患者・家族ケアの5項目。②はさらに「安全な環境の整備」「安全なケア技術」「安全な医療用品などの使用」に分けられ,柵にカバーを装着するなどのベッド環境,車いす移乗時には四肢を守るレッグカバーやアームカバーを装着,医療用リストバンド装着時は皮膚保護帯などを着用,四肢は下から支えるように保持,医療テープや被膜剤の選択への留意など多くの提案がなされた。③では「皮膚の保湿」「皮膚の洗浄方法」「寝衣の選択」について,低刺激の保湿剤を1日2回以上,摩擦が起こらないように塗布,高水圧のシャワーは避ける,ファスナーや縫いしろが皮膚に擦れない寝衣を選ぶなどの例が挙げられた。

 形成外科医の大浦紀彦氏(杏林大)は,テアの管理方法を紹介。①止血,②洗浄,③皮弁を元の位置に戻す,④創傷被覆,⑤創傷部の疼痛確認という手順を示した。氏は自身の実践例を基に,③で皮膚を可能な限り完全に元の位置に戻すことを推奨した。

 最後に座長の二氏が,①患者と家族の痛みからの解放と安心した療養生活の継続,②看護師のスキンテア発生に伴う罪悪感の軽減,③企業によるスキンテア発生につながる用品の改善という,スキンテア回避のケア方法確立による効果に期待を寄せた。

註1:日本創傷・オストミー・失禁管理学会 学術教育委員会.テアについて.2014.
http://www.jwocm.org/pdf/about-tea.pdf
註2:テアハイリスク患者:テア既往患者のほか,13項目の「個体要因」(75歳以上の超高齢,認知機能低下,皮膚の乾燥など)と9項目の「外力発生要因」(不随意運動などの患者行動,体位変換・移動介助,医療用テープ貼付などの管理状況)のうち1項目でも当てはまる患者。