医学界新聞

2014.04.21

第18回日本在宅ケア学会開催


 第18回日本在宅ケア学会(会長=千葉大大学院・長江弘子氏)が,3月15-16日,一橋大学一橋講堂学術総合センター(東京都千代田区)で開催された。「多職種で共に考え,支えるエンド・オブ・ライフケア――その人の最善とは何かを語り合おう」を掲げた今回,延べ1000人を超える在宅看護学教員や,訪問看護師を中心とした在宅医療関連職種の参加者が集まり,さまざまな地域の先進的な試みを共有し,在宅ケア実践の在り方の考察を試みた。

チームアプローチの成否が在宅ケアの質を決める

長江弘子会長
 シンポジウム「『その人らしさ』を支えるチームアプローチ」(座長=ライフケアシステム/水道橋東口クリニック・辻彼南雄氏,株式会社ケアーズ白十字訪問看護ステーション・秋山正子氏)では,医師,訪問看護師,ケアマネジャー,薬剤師,理学療法士と5人の異なる専門職が,それぞれの立場から多職種チームによる患者とのかかわり方の理想像を考察した。

 医師の平原佐斗司氏(梶原診療所)は,作業療法士や臨床心理士の参加により,患者と家族の希望を実現できた実践例を紹介。独居高齢者に代表されるような家族機能の量的・質的な低下や,そうした人々を支える社会基盤の脆弱化が見られる現代において,多職種協働が鍵となって患者・家族にとっての最善を実現できたケースがほとんどであった経験から,氏は「チームアプローチの成否が在宅ケアの質を決めると言っても過言ではない」と強調した。この他,訪問看護師・福田裕子氏(まちのナースステーション八千代),ケアマネジャー・杉田勝氏(船橋市新高根・芝山,高根台地域包括支援センター),薬剤師・高橋眞生氏(カネマタ薬局),理学療法士・松川基宏氏(船橋市訪問看護ステーション)が実践例を交えながら,自職種がチーム内で果たす役割と,患者の「その人らしさ」を支えるためのポイントについて考えを述べた。

 会場を交えた総合討論では,多職種連携の力を引き出す方法について議論が及んだ。杉田氏はそれぞれの専門職によって視点が違い,気付くポイントも異なることから,「会議の場では他職種の意見を引き出すことを心掛けている」と発言。福田氏も「他職種とのかかわりの中で彼らの専門性をようやく理解できた。それが自分の成長につながり,ひいては利用者さんのケアを充実させることにつながっている」と,他職種の意見の重要性を支持した。一方で,高橋氏と松川氏から,訪問を行う薬剤師や理学療法士の役割について,他職種から十分に認知されていない点や,同職種内においても明確化できていない点が課題として挙げられた。演者間の対話を受け,座長の秋山氏は「ケアの受け手である利用者さんは相対する職種ごとに違う顔を見せている。個々の職種が力を合わせなければ,利用者さんの本来の姿が立体的に見えてこない」と発言し,職種間の違いを認識した上で,互いの専門性を活かす連携を図っていくことが在宅ケアを充実させると訴えた。

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