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第2984号 2012年7月2日


第13回日本言語聴覚学会開催


 医療や福祉領域に,年々活躍の場を広げる言語聴覚士(以下,ST)。ニーズの多様化に応え,近年では専門性の向上や,他職種との連携力強化が求められつつある。6月15-16日に福岡国際会議場(福岡市)にて開催された第13回日本言語聴覚学会(会長=国際医療福祉大福岡リハビリテーション学部・深浦順一氏)では,「言語聴覚療法の専門性を追究する」というテーマを掲出。発達障害,認知症,摂食・嚥下障害の各領域で,STがより高い専門性を発揮してチーム医療を牽引する方策を探るべく,シンポジウムが設定された。


深浦順一会長
 摂食・嚥下障害のリハビリテーション(以下,リハ)は,多くの専門職種がかかわり,チーム医療の代表例とも言える領域。STの主要な臨床業務の一つでもあり,チーム内で中心的役割を担うことが期待されている。シンポジウム「摂食・嚥下障害における言語聴覚士の専門性の追究」(座長=東北文化学園大・長谷川賢一氏)では,三人のSTにより,急性期・回復期・維持期の各期の特性を踏まえた摂食・嚥下リハの在り方が議論された。

STが中心的役割を担う,摂食・嚥下領域のチーム医療

 急性期の摂食・嚥下リハについて口演したのは,慶大病院の羽飼富士男氏。同院では,ほぼ全診療科から言語聴覚療法部門へ摂食・嚥下リハの依頼があり,全件数の約7割に上るという。氏は急性期においては,摂食・嚥下機能を早期に正しく評価したうえで,適切な栄養管理を行い,誤嚥性肺炎・窒息といったリスクを回避すべきと指摘した。

 現場では,STは吸引や頸部聴診などのスキルを駆使して嚥下反射や唾液の嚥下状態などを調べ,経口摂取の可否をスクリーニング。気管切開の患者には着色水を嚥下させ,誤嚥の有無を確認するなど工夫している。氏はこうしたSTの専門的手法が,安静度の面などから医療機器を用いた嚥下検査が困難な急性期の患者の機能評価に大いに有用であることを強調した。また,チーム医療においては情報共有に加え,"情動"の共有も重要と示唆。回復期・維持期の医療機関との連携,リスク管理のさらなるスキルアップを課題として挙げた。

 森淳一氏(湯布院厚生年金病院)は,同院回復期リハ病棟での取り組みからSTの専門性を論じた。氏は,嚥下チーム内で共通の目標を掲げ,業務にも重なりを設けることで,協働が促進されたと述懐。嚥下機能の改善で,在宅復帰がよりスムーズに進むことも示した。昨年度からは,STを中心に運営される「ゆふ医科歯科連携システム」を立ち上げ,かかりつけの歯科医師による訪問診療を実施。口内環境を改善することで,患者が「口から食べる」喜びを実感できる一方,歯科医師も「患者のADL向上」という視点を持つようになったという。

 これらの経験から氏は,STがチームの橋渡し役となって連携を円滑化すべきと提言。生活機能を改善し,地域での暮らしにつなげるまでを回復期リハの目標として掲げ,STは専門性の高さと裾野の広がりを備えた"ジェネラリスト"であるべきと結んだ。

 最後に山口勝也氏(在宅総合ケアセンター元浅草たいとう診療所)が,維持期のリハについて,在宅リハ(訪問・通所サービス)を中心に語った。氏は維持期を,介助方法を模索する「生活混乱期」から,「生活拡大期」および「終焉期」の3期に分類。各期のニーズに即した支援の重要性を示唆した。

 また急性期・回復期との違いとして,訓練回数の減少や,チームでかかわること,機器を用いた嚥下検査の実施の困難さなどを列挙。環境調整や自主トレーニング支援を通じての,介護負担の軽減,機能低下の予防が主なかかわりである現状を報告した。専門性向上における課題としては,①検査の充実と手技のスキルアップ,②他期医療機関,他職種との連携の充実,③運動や栄養管理を含む医学的知識,日常生活動作,口腔ケアなどの理解度向上,の3点を挙げた。

 最後に座長の長谷川氏が「摂食・嚥下領域でSTが中心的役割を果たすには,障害のアセスメント力,生活機能改善までを視野に入れた訓練スキルに加え,他職種とのコミュニケーション力や,関連領域の知識の習得が必要」と結論付け,シンポジウムは盛会のうちに終了した。

シンポジウム「発達障害児の早期発見・早期対応におけるSTの役割――他職種からみた言語聴覚士」(座長=聖隷クリストファー大・足立さつき氏)のもよう。浜松市での,STと保健師,障害児療育施設,作業療法士が連携した育児支援の試みが紹介された。