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第2953号 2011年11月14日


MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


《標準作業療法学 専門分野》
作業療法学概論 第2版

矢谷 令子 シリーズ監修
岩崎 テル子 編

《評 者》古川 宏(神戸学院大教授/総合リハビリテーション学部長)

学生の目線に立ってまとめられた良書

 作業療法士をめざす学生の道案内である『《標準作業療法学 専門分野》作業療法学概論 第2版』が,初版から6年,社会情勢の変化と法制度の改正に合わせ,理解しやすいように章の構成も改めて出版された。執筆者は臨床経験・教育経験が豊富なベテランばかりであり,学生の目線に立ったわかりやすい文章で解説してある。また,教科書としてシリーズの統一を図るために,学習内容の到達目標を一般教育目標(General Instructional Objective; GIO),行動目標(Specific Behavioral Objectives; SBO)ごとに明確にし,修得チェックリストで学習者が確認できるような方式になっている。学生,教員が編集者の意図をくんで有益に利用することで教育効果も上がるものと考える。

 「作業療法」とは,「身体又は精神に障害のある者,またはそれが予測される者に対し,その主体的な生活の獲得を図るため,諸機能の回復,維持及び開発を促す作業活動を用いて,治療,指導及び援助を行うこと」(日本作業療法士協会)と定義され,対象,目的,方法が明確に定められている。残念ながら「作業活動」の解釈が受け手によって違うため,一般社会,学生,専門職の間でも「何となくわかり難い」と言われてきた。地域リハビリテーション施設の施設長から「理学療法士がいなかったので初めて作業療法士を採用したら,私たちの施設では作業療法士のほうが利用者・患者のニーズに合っていることがわかった。来年は複数採用します」といった話を聞く機会が多い。実際体験して初めて作業療法の良さを理解してもらえた例である。しかし,これでは困る。学生は在学中に作業療法を他人に説明できるようになっていること,臨床現場では対象者にわかりやすく説明できること,作業療法士協会は関連職種,一般社会に作業療法を正しく伝えること,それによって評価される必要がある。そのためにも本書が必要である。

 第2版の内容を紹介すると,序章では学習マップを用いて,第5章および終章までのSBOを列挙し,学生に対し内容説明,知識などを100字程度で解説している。第1章「作業療法とは」では,作業の意味と作業療法の歴史,原理・理論,サービス適応範囲,国際生活機能分類(ICF)について必須知識を解説している。第2章「専門職としての作業療法士」では,専門職の心構え,必要とされる人間性,知識,技術,チームアプローチ,研究法,EBM,法制度を解説している。第3章「作業療法の過程」では,資料収集,面接,評価,問題点の抽出,治療・指導計画の立案,実施の具体的な内容をまとめている。第4章「作業療法の実際」では,身体,精神,発達,高齢期,地域の各分野における作業療法の実例を学ぶ。第5章「作業療法部門の管理・運営」では,部門の管理運営,診療報酬など,および医療経済学を学ぶ。最後に,作業療法教育と今後の展望を解説している。

 本書は,編者の岩崎テル子氏の緻密(ちみつ)で隅々まで配慮された気配り,情熱でまとめられた良書であり,作業療法関係者はもちろんのこと,関係専門職者にもぜひお薦めしたい。

B5・頁288 定価3,990円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01210-2


介助にいかすバイオメカニクス

勝平 純司,山本 澄子,江原 義弘,櫻井 愛子,関川 伸哉 著

《評 者》石井 慎一郎(神奈川県立保健福祉大准教授・リハビリテーション学)

エキスパートの英知を結集し生み出された,比類なき洗練された書籍

 介助の方法論を力学的にそれらしく解説している書籍は,これまでにも多く出版されている。しかし,必ずしも力学が正しく理解されていなかったり,紹介されている介助動作が実際的でなかったりと,いま一つ納得のいく本がなかった。とかくバイオメカニクスの書籍は解説が難解であり,内容を理解するために専門的な知識が必要になる。一方,介助技術の書籍は,経験則だけで解説されていて,理論的な裏付けが乏しかったりするものだ。

 経験則を理論的に説明したり,ヒトの身体運動を力学的に説明したりするには,豊富な臨床経験とバイオメカニクスの知識が必要になる。この両者を兼ね備えた著者と言えば,国内をくまなく探しても,そう多くは居ないだろう。本書の著者に居並ぶ面々は,介護,バイオメカニズム,理学療法,義肢装具の各分野におけるエキスパートたちだ。表紙を見ただけで,おのずと期待感が高まってくる。

 本書を読み進めていくうちに,「こりゃー期待以上の本だ!」と驚かされた。介助技術のHOW TOを,バイオメカニクスを使って説明している内容と思いきや,バイオメカニクスの基礎から応用までが系統立てて解説されており,身体運動のメカニズムや各種症例の異常動作の力学的解釈が的確に解説されているのだ。その上で,介助の方法を提示している。まぁーその道のエキスパートが集まって書いているのだから,当然と言えば,当然のことなのだが,その洗練された内容は類似書を凌駕する充実度合いであると言っても過言ではない。「すごい本が世に出たものだ……」とついつい溜息が出てしまう(実は,私もこんな本が書きたかったのだ……)。

 本書『介助にいかすバイオメカニクス』は,介助の技術論を記した書籍というよりも,バイオメカニクスの臨床応用を基礎から解説したバイブルと言っても良いだろう。バイオメカニクスを基礎から学び,それを臨床に応用したいと考えている専門職にはお薦めの書籍だ。

 「その道のエキスパートの英知が結集して生み出された比類なき洗練された書籍」

 それが私の本書に対する認識である。

B5・頁216 定価4,095円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01223-2


臨床心臓構造学
不整脈診療に役立つ心臓解剖

井川 修 著

《評 者》平尾 見三(東京医歯大病院不整脈センター長)

心臓構造学の習得に大いに役に立つ名著

 待望の本が出版された。井川教授の心臓解剖の講演会が開かれると,まず満席になり講演後の質疑応答も活発で時間が足りなくなる。それだけ人気がある。書評子も例外ではなく,臨床的見地から入って精緻(せいち)を極めた心臓解剖学へ導く井川講演のファンの一人で,この本の登場を心待ちにしていた。多くの解剖図と解説文,それらを体系的に構築・解析する独自のシェーマが加えられて,このたび『臨床心臓構造学』という珍しいタイトル名の本書が上梓された。

 目次を俯瞰すると,通常の解剖学の教科書でないことがわかる。これまでの解剖書があくまでも解剖専門家の視点で書かれたことを思うと,不整脈臨床家としての視点で本書が書かれていることが斬新であり,うれしい驚きでもある。不整脈が先にあり,それに関連した解剖学が展開される構成で,これは臨床医にとって大変ありがたい。それぞれの項目を開くと,解剖学の本であるにもかかわらず,心腔内電位図や心臓の3Dmapping像・X線造影写真・透視像がふんだんに取り入れられ,それに関連したマクロ解剖図が示される。この解剖図が素晴らしい。われわれが見たい,知りたいと思うものに回答すべく心臓に割が入れられ,ある時は裏から光を当てた鮮明な写真が掲載されている。推察するに,著者は自分が日常不整脈診療において抱いた心臓解剖・構造上の疑問について,多くの病理解剖を積み重ねながら明晰(めいせき)な洞察力をもって一つ一つ粘り強く,かつ徹底的に研究を継続されたのだと思われる。本書はまさにそれらの集大成である。

 1990年代初頭より本邦に導入されたカテーテルアブレーションは,症例数が漸増して今や3万人を超える。特に,日本にも約70万人以上存在するといわれる心房細動に対する肺静脈隔離術の有効性が知られて以来,この数年間はその実施件数が年間30%以上伸びている。それに伴い,アブレーション手技に不可欠な心臓画像の技術革新は目覚ましい。いまでは数十秒で心腔内の3D像が得られ,また先に撮影しておいた心臓CT像上に心臓各部位の電位高,伝導様式などが可視化できる。非常に有用な診断支援装置が使える時代になった。しかし,マッピングにより得られる心臓構造情報は解像度,大きなゆがみなどの補正などにやはり限界がある。症例ごとに足りない部分は補い,また修正を要することも出てくる。その作業においては臨床医の知識・経験・臨床センスが問われるが,その意味で本書は心臓構造学の習得に大いに役に立つ名著であると確信している。自分自身,手元において日々のアブレーション診療の道しるべとしたい。

 不整脈診療にかかわる医師のみならず,循環器疾患診療に携わるすべての医療関係者,臨床心臓解剖学を学ぶ医学生にも自信を持ってお薦めできる一冊である。

B5・頁184 定価12,600円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01121-1


ここからはじめる研究入門
医療をこころざすあなたへ

Stuart Porter 著
武田 裕子 訳

《評 者》網本 和(首都大東京大学院教授・理学療法学)

研究の壁を越えてゆくために必携のコンパス

研究のカベ
 看護師や作業療法士,あるいは理学療法士をめざし,医療系の専門学校や大学に籍を置いて日々勉学にエネルギーを費やしている学生は,いまや日本ではかなりの数になっている。その多くの教育課程で,「卒業研究」が必修あるいは推奨の単位とされている。つまり大変多くの学生が卒業するための「卒業研究」を積極的に行う場合もあるが,強制的に参加させられている場合も少なからずあり,この単位修得に喜びよりも苦しさを感じた学生は「研究」を卒業してしまうことになる。

 研究のカベである。このカベに悩むのは学生ばかりでなく,指導する教員もまた,どのようにカベを乗り越えその先の「おもしろさ」を伝えることができるか思い煩うことになる。そんなカベを見上げるとき,本書『ここからはじめる研究入門』を手に取ったあなた(読者)は幸いにもそのカベを越えてゆくための道筋を発見するだろう。

パンの生地
 本書の著者Stuart Porter先生は理学療法士で大学教員でもあり,学部学生への卒業研究指導の過程でこのテキストを著したという。全体の構成は,1.最初の一歩,2.研究者はどう考えるのか:研究におけるパラダイム,3.文献レビューと学術的小論文(レポート)の書き方,4.どのようにデータベースを用いて論文を探すか,5.研究における倫理,6.サンプリング,妥当性,信頼性,7.研究成果の発表とプレゼンテーション,8.質的研究,という8章から成っている。

 本書の特徴として随所にわかりやすい比喩が用いられており,例えば第1章において,「研究プロジェクト」を進める過程は「パンの生地」をこねるのに似ていて,アイディアを固める前にはしっかりと考えを練って絞る必要がある,という。さらに,研究課題についての記述はなるほどと思えるもので,例えば研究テーマの選択・決定において,いくつかの失敗例が挙げられている。すなわち「自分ではできないテーマを選ぶ」「現実離れした研究内容を選ぶ」など,このような場合の解決法について触れられているのはかなりうれしい。極端な例として,「何を研究したらよいかわからない」学生への対処法も掲載されているが,紙数が尽きそうなので詳細は本文をぜひ参照されたい。

学生にはもちろん教員にも
 第3章以降は基本的かつ不可欠な,研究を具体的に進めてゆく方法について述べられている。特にプレゼンテーションの章では,いくつもの「成功の秘訣」が惜しげなく提供されている。またこのような入門書ではあまり扱われない第8章「質的研究」もまさに入門編として適している。

 ロンドン大学大学院留学中の武田裕子先生の軽妙洒脱な訳出が,醸し出すユーモアを余すところなく伝えている本書は,学部学生,大学院学生だけでなくその指導教員にとっても,研究という峰々をゆくための必携のコンパスになるであろう。本書を読破したとき(それほど長くないが),目の前にあったカベが,実は緩やかな丘に思えてくるに違いない。

B6・頁256 定価2,625円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01181-5

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