第57回日本臨床検査医学会開催
2010.09.27
第57回日本臨床検査医学会開催
未来の臨床検査を担う新技術・測定法を展望
第57回日本臨床検査医学会が9月9-12日,京王プラザホテル(東京都新宿区)にて宮澤幸久会長(帝京大)のもと開催された。今回のテーマは「臨床検査の価値――その評価・そして未来に向けて」。科学技術の進歩とともに飛躍的に発展した検査機器や検査試薬の適正な評価をめざし,臨床検査の各分野を網羅する13のシンポジウムが並んだ。
本紙ではそのなかから,未来の臨床検査分野を担う新技術を6人の演者が紹介したシンポジウム「臨床検査の新技術・測定法」(司会=熊本大・安東由喜雄氏,浜松医大・前川真人氏)のもようを報告する。
宮澤幸久会長 |
宮村和宏氏(堀場製作所)は手で持って使える小型の血球計数装置について解説。氏らはμTAS技術を用い2μLの指頭血で白血球の測定を可能にする装置の開発に成功。性能評価では同時再現性,希釈直線性,相関性ともに良好な結果が得られたという。これにより患者の自宅等での白血球計測が可能となり,G-CSF製剤の自己注射への道が開けると主張した。
さまざまな分野で応用が進む遺伝子検査
子宮頸癌を引き起こすHPVには,リスクが異なる約100種類の型があると報告されている。佐藤宰氏(積水メディカル)は,PCRダイレクトシークエンス法によりそれらの型を簡便に判別できる,クリニチップ®HPVについて紹介した。16型,18型などのハイリスク型のHPVの持続感染者は,前癌状態である子宮頸部上皮内腫瘍が癌へと進展するリスクが高いことから,氏はHPVの型を判別するタイピング検査の重要性を指摘。HPVの型と細胞診の両方を判別することが,子宮頸癌の予防・治療には有用であると説明した。
感染症治療における最適な抗菌薬選択には,起因菌を同定しかつ薬剤感受性の判定が必須だが,起因菌の培養には時間がかかり最適な薬剤の選択には数日を要するという課題がある。仁井見英樹氏(富山大病院)は,2時間以内の起因菌同定,4-6時間での感受性判定をめざして構築に取り組む感染症迅速検査法について報告した。氏らは,真核生物を宿主とした耐熱性のDNA polymeraseを開発し,感染症の原因細菌のDNAを高感度・高特異的に検出することに成功したという。また,液相を利用する薬剤感受性試験により,迅速な薬剤感受性の判定を行うことができたことを報告した。
浜松医大では,「CYP2C19遺伝子多型に基づくテーラーメードのH.pylori除菌療法」を先進医療として実施。患者の遺伝的背景に合わせた個別化治療が,除菌の成功率向上に寄与しているという。同大の古田隆久氏は,この除菌療法に今年度より導入した迅速PCR機器を用いた遺伝子検査について発言した。本検査では,胃液を検体とすることにより抗血小板療法中のITP患者でも実施可能となり,また,検査結果も検査当日に判明するようになったという。これにより患者負担が軽減するとともに,適応患者の範囲も広がったと強調した。
内場光浩氏(熊本大)は,AL-アミロイドーシスの診断に線溶系検査を応用した手法を紹介した。従来,診断には侵襲性の高い組織生検や特異度の低い免疫グロブリン軽鎖の測定法が用いられてきたが,氏はAL-アミロイドーシスの出血傾向に着目。AL-アミロイドーシス患者の線溶系検査データを解析した。その結果,特にプラスミン・α2-プラスミンインヒビター複合体で,AL-アミロイドーシス群と対照群との差が顕著にみられたという。以上から,氏は線溶系検査を応用することで,簡単迅速かつ非侵襲的にAL-アミロイドーシスを診断可能との見解を示した。
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