医学界新聞

2010.02.01

第5回21世紀漢方フォーラム開催


フォーラムのもよう
 2009年12月10日,第5回21世紀漢方フォーラム「漢方・鍼灸を活用した日本型医療を考える」が慶大医学部北里講堂(東京都新宿区)で開催された。

 漢方・鍼灸を含む東アジアの伝統医学は,2014年に改訂が予定されているWHOの国際疾病分類(ICD)に新たに加えられる計画が進んでおり,漢方の国際的な位置付けがなされようとしている。一方で昨年末には,政府の事業仕分けにおいて漢方薬を保険適用から除外する方針が一時示されたが,3週間で92万通以上の反対署名が集まり方針転換の原動力となるなど,漢方に対する国民の関心の高さもあらためて示された。

 そのような中行われた今回のフォーラムでは,パネルディスカッション(司会=国際医療福祉大大学院・黒岩祐治氏)に鈴木寛氏(文部科学副大臣),土屋了介氏(国立がんセンター中央病院),三潴忠道氏(日本東洋医学会),渡辺賢治氏(慶大漢方医学センター),塚田信吾氏(伝統医療大学院)らが登壇。西洋医学では時として,病因を取り除く過程において患者の身体への負担も強めてしまう場合があるが,漢方は全人的医療であり,生体反応をアシストして病を治癒に導くものであること,しかしそのオーダーメイド性故にこれまでエビデンスの確立が難しく,統計学的な結果を求める西洋医学と相容れない部分があったことなどが語られた。また,現在では医学部・医科大学の9割以上において漢方医学を学べるカリキュラムが設定されているものの,医師国家試験には漢方に関連する問題は採用されていないという制度の歪みも指摘された。しかし先進的なデータマイニングにより,漢方の新たなエビデンスが解析されつつあるとのこと。西洋医学と東洋医学とを,これまでの二項対立から,相互に影響しつつ発展する縦糸と横糸のような関係に昇華させ,より国民の健康に資するよう行動していくことで議論は結した。

 その後,足立信也氏(厚生労働大臣政務官)が登壇し,東洋と西洋,二つの文化圏の融合点である日本が,医学においても双方の長所を取り入れ,世界に向けて独自の医療を発信してほしいと発言。

 最後に,平成21年度厚生労働科学研究費補助金による特別研究事業,「漢方・鍼灸を活用した日本型医療創生のため調査研究」(班長=黒岩氏)の発足が発表され,漢方・鍼灸医学の課題を洗い出すとともに,これらを活用した新たな医療を創り出していくことが確認された。

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