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第2793号 2008年8月11日


“皆が安心できるお産”を語る
――日本医療学会による市民シンポジウム開催


 昨年9月,“国民による国民のための医療を実現する”という趣旨のもと,「日本医療学会」が設立された。本学会の特徴は,医療職者だけでなく,医療・健康に関心を有する人であれば誰でも参加できる点である。また,参加者が一堂に会する集会だけでなく,インターネット上での討論会(eシンポジウム,e会議室)や,議論の根拠資料などを自由に閲覧できる電子図書館(eライブラリ)を設けるなど,さまざまな試みを行っている。

 その活動の一環として,さる7月19日,市民シンポジウム「みんなが安心できるお産を目指して――役割分担と協調」(座長=愛育病院・中林正雄氏,日本小児科学会小児医療改革・救急プロジェクト委員長・中澤誠氏)が,日本教育会館(東京都千代田区)において開催された(写真)。本紙では,そのもようを報告する。

お産をめぐる現状の共有から

 シンポジウムではまず,座長の中林氏が基調講演を行った。そのなかで,2007年に行われた日本産婦人科学会の調査結果を提示。非常に安心・安全だと認識されているわが国のお産について,実際には妊産婦250人に一人が死に至る危険性をはらんでいると述べた。

 また,産科医不足がもたらしている現状について触れ,愛育病院における産科オープンシステムの構築を紹介。同院の設備とスタッフを地域の診療所に開放しているという。さらに,東京都が作成した地域連携をスムーズに進めるための「共通診療ノート」を例に挙げ,基幹病院と診療所の機能分担による地域連携の重要性を強調した。

 続いて助産師の立場から,遠藤俊子氏(山梨大大学院)が,助産師の役割と現状の課題を提示。医師との連携・協働をより密に行い,正常分娩に積極的に関わるための院内助産所の開設など,助産師の活躍の場を広げたいと述べた。また,安全性,快適性などさまざまな利用者のニーズに応えるために,さらなる専門性の追求を目指すとした。

 2005年に『にんぷ読本』(集英社)を発刊した女優の水野真紀氏は,自らの出産の経験から,医療機関のサービスの向上を求めるだけでなく,妊婦が正しい情報を得て,医療機関の適切な選択を行うことや,医療職者との相互理解を深めることの重要性を述べた。

 出産専門のジャーナリストとして産科医療の問題を追う河合蘭氏は,医療機関の集約化が,妊産婦に不安をもたらしていると指摘。その上で,産科医不在の地域における開業助産所の取り組みを紹介した。女性にとっては,高度医療による安心だけでなく,どんな事態になっても一緒に伴走してくれる助産師との精神的なつながりも大切だと強調した(河合氏は『助産雑誌』にて,「チャレンジ! 自立と責任」を連載中)。

 最後に産科医の立場から海野信也氏(北里大)が,妊産婦や助産師が産科医に求めていることは「いつでも必ず対応できること」だと指摘。これを実現するためには,地域における連携体制の整備が不可欠だと説いた。また,産科医不足を打開する対策として「プロジェクト500」を提案。若い研修医に産婦人科医になってもらうための仕組みづくりや,年々増加している女性医師が勤務し続けられる労働環境の改善を行っていくとの抱負を述べた。

 本シンポジウムはインターネット上へ場所を移し,引き続き議論を展開していくという。