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第2785号 2008年6月16日


MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


内科診断学 第2版 [CD-ROM付]

福井 次矢,奈良 信雄 編

《評 者》永井 良三(東大大学院教授・循環器内科学)

内科学を動的座標からみる内科診断学

 内科診断学は臨床実習の最初の段階で学ぶ重要なコースである。多くの臨床医にとって,内科診断学が始まったときの緊張感は,一生の思い出となるものであり,それだけに優れた教科書との出会いは重要である。

 内科学が専門分化するなかで,患者の全体像を把握して,個別に対応することは決して容易ではない。特に大学病院をはじめとして大規模な病院では臓器別診療体制がとられた結果,内科学全体を俯瞰した指導が困難になりつつある。

 近年,患者中心の医療が叫ばれ,EBMが大きなインパクトをもたらしたことを考慮すると,新しいスタイルの内科診断学のテキストが求められてきた。内科診断学の教育の在り方は,個々の学生だけでなく,指導者にとっても内科学における分化と統合をどのように進めるかという重要な課題である。

 本書は福井次矢聖路加国際病院長と奈良信雄東京医科歯科大学教授の編集によるもので,2000年に初版が刊行され,大変好評であった。豊富な臨床と教育の経験をもつ執筆陣によることもその理由と思われる。今回,読者からの意見や指摘を取り入れて改訂された。改訂版では記載をより系統的にするとともに,画像診断に関する情報が追加された。全体は4章から構成され,それぞれ「I診断の考え方」「II診察の進め方」「III症候編」「IV疾患編」に分けられている。1200ページと大部であるが,患者と対面した状態を想定し,臨床現場のロジックで記載されているために,どこからでも読むことができ,退屈しない。

 内科学の教科書は病因論から始まり疾患の体系を記述する,いわば静止座標系からみた内科学である。一方,内科診断学は動的座標系からの内科学である。疾患の考え方や内科学の在り方だけでなく,患者との関係も大きく変化する。新しい時代の教科書として,学生だけでなくベテランの臨床医や医学教育者に推薦したい好著である。

B5・頁1,328 定価9,975円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00287-5


呼吸器診療シークレット
Pulmonary/Respiratory Therapy Secrets, 3rd Edition

Polly E. Parsons,John E. Heffner 著
八重樫 牧人,田中 竜馬 監訳

《評 者》岩田 健太郎(神戸大教授・感染治療学)

臨床上の疑問と,それに対する回答の結晶

 疑問を抱き,その回答を得る。事物の理解を深めていくのに大変有効なやり方である。だから,臨床上の疑問と,それに対する簡潔・明瞭な回答を集めた結晶である「シークレット・シリーズ」が魅力的な教科書であるのは別段不思議ではない。

 そのシークレット・シリーズに新たな仲間が参入した。『呼吸器診療シークレット』。これまでのシリーズ同様,普段疑問に思っていながら調べ切れていなかった点について,大量の有益な情報にあふれている。訳者の人選も素晴らしく,正確な英語読解と理解しやすい日本語のおかげで,翻訳本にありがちな理不尽な難解さを感じさせない。薬の国内商品名がさりげなく付記され,実質的かつユーモアにあふれた訳注があるのも魅力である。米国ならではの緻密でわかりやすい教科書が,日本の訳者の気遣い,心配りでグレードアップされた感がある。これだけの訳者を集めることができた監訳者たちの人徳のなせる業でもあろう,たぶん。

 この翻訳本では,原著にはないが,各設問を,A:医学生レベル,B:卒後臨床研修医から後期研修中の医師・専門医試験を目指す医師,C:専門医・指導医の3つのレベルに分類している。「気管支鏡とは何か?」「非侵襲的人工呼吸とは何か?」といった基本的な履修事項は,医学生でも知っておけよ,とAにランクされている。専門医,指導医レベルのマニアックな事項はCとされる。個々の専門性とニーズに応じて読み進めていけばよいだろう。

 非専門家である評者には,目新しい情報もいっぱいだ。「緑のマニキュアだとSpO2は低く表示されるが,赤だとされない」(97頁)。そもそも緑のマニキュアというものすらなじみがない。自らのイマジネーション不足で,想起すらしてみなかった疑問もちゃんと準備してくれている。「胸膜癒着術の薬剤投与後,患者を回転させるべきか?」(510頁)。恥ずかしながら,そんなこと今まで考えたこともなかったよ。教科書と「対話」できるのはよい本の条件の1つである。

 本書の価値をさらに高めたのは「キーポイント」と「TOP100シークレット」だ。多忙な医師が短期間で疾患概念や鑑別疾患を理解するコーナーが「キーポイント」で,「シリカ関連肺疾患」(のまとめ)や「好酸球性肺疾患の鑑別疾患」を秒の単位で読むことができる。TOP100シークレットは,広大な呼吸器内科の世界で特に厳選された100の箴言集である。「指にタバコの染みのある男性の女性化乳房は,肺癌を強く疑わせる」「肺炎を繰り返し,骨痛があり,血清蛋白質が上昇している患者をみたら,常に多発性骨髄腫を疑うべきである」。

 気軽に読めて面白くて役に立つ。医学生から専門医の先生まで,ぜひご一読を!

B5変・頁748 定価8,820円(税5%込)MEDSi
http://www.medsi.co.jp/

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