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第2769号 2008年2月18日


早く,正確に,患者にくすりを届けるために

「国際共同治験推進会議」開催
アジアと連携した治験の推進,審査の迅速化などを議論


 患者に早く,正確にくすりを届けるために求められているものとは何か――さる1月26日,アクトシティ浜松(静岡県浜松市)において「国際共同治験推進会議in Hamamatsu」(主催:日本医師会治験促進センター)が開催され,わが国における国際共同治験の現状と課題が議論された。


 国際的な合意を背景に,1997年に新GCP(Good Clinical Practice:医薬品の臨床試験の実施の基準)が日本で法制化されてから10年が経過した。この新GCPはわが国で行われる治験に対し国際水準の科学性や倫理的な配慮の担保を求めている。一方で,現在のわが国は国際共同治験の流れに乗り遅れ,いわゆる「ドラッグ・ラグ」問題がクローズアップされている。

 この日は臨床薬理学関係者,治験実施医療機関の医師やCRC,製薬企業,審査当局などが,それぞれの立場から発言を行った。

 楠岡英雄氏(国立病院機構大阪医療センター),木村路子氏(浜松医大附属病院・CRC)は国際共同治験実施における医療現場での問題点について,言葉(英語)の壁や海外との医療慣習の違いから混乱を生じることが多いと指摘した。医療慣習の違いに起因する問題は経験して初めてわかることも多く,楠岡氏は「改善に向けて治験実施医療機関間の情報共有が必要」と述べた。

 また,国際共同治験においては症例の集積にスピードが要求され,日本には課題が残されている。前川平氏(京大)は「日米欧による症例集積というよりも,米欧亜とするためのシステムづくりが求められている」と述べ,人種差の少ないアジア諸国と連携し国際共同治験に参画する必要性を指摘した。

 楠岡,前川両氏の発言に関連し,大分大を中心とする治験推進のための国内の大学病院間ネットワーク,J-CLIPNETが昨年発足した。同組織はアジアの大学との連携も視野に入れており,本会議で紹介された。

 国は創薬・育薬両面から国際共同治験の推進を後押ししており,昨年,厚労省・文科省から「新たな治験活性化5カ年計画」,厚労省から「国際共同治験に関する基本的な考え方」が相次いで公表されている。

 この日は複数のグローバル製薬企業のトップマネジメントも登壇し,日本で治験を実施する際のコスト・スピード・質の問題を指摘した。この問題点は企業側にとっては開発リスクであり,日本で行われる国際共同治験数に直結していく。また,すでに海外で行われた治験データの提出・活用方法についても意見,要望が出された。

 これらに対し,承認審査当局の立場から,医薬品医療機器総合機構(PMDA)の森和彦氏は「日本人患者の安全性の考慮が大前提」としたうえで,合理的根拠や考え方に基づき柔軟に個別ケースに発展・応用されることが望ましいと今後の方向性について言及。また審査の迅速化のため審査員の増員を計画し,審査員の意識統一も図っていきたいとした。

 閉会にあたり,本会議実行委員長の渡邉裕司氏(浜松医大)は「グローバル製薬企業が日本,アジアの重要性を意識し,国内企業も海外に治験をもっていくのではなく,国内に踏みとどまって,日本の治験を活性化していく必要がある。そのためには経験と実績を積むことが推進への一歩となる」と総括した。国際共同治験に向けたPMDAへの相談も抗がん剤を中心に増加傾向にあり,関係各機関の連携のもと,より一層の推進が期待される。