MEDICAL LIBRARY 書評特集


掛橋 千賀子,真嶋 由貴恵,奥山 真由美 著
《評 者》山内 一史(岩手県立大教授・看護情報学)
テキストと映像とが完全に連動した画期的教科書

具体的には,テキストで身体侵襲を伴う看護技術のスキル実践に特化して書かれており,具体的な手順が「方法」の欄に書かれるとともに,並行して「根拠」の欄が設けられ,はっきり根拠を意識しながら実践技術を身に付けることができます。各技術にチェック表が付いていることも,身に付けた技術を学生自らがチェックし,自信を得る手段として,効果的な工夫だと思います。また,テキストの中で読んだだけではわかりにくい動作の部分も,DVDのどこを見ればよいか明示されているため,しっかり目で見て納得して確認することができます。
DVDでは,実際の臨床場面で応用して用いられる方法や物品などが示され,テキストで写真やイラストが多用されていることもあり,DVDを見た時,基本的な技術・動作の理解から臨床での実習場面での実践まで,学生の思考が途切れることなく連続して入っていけるよう配慮されています。細かい部分では,必要以上に顔のアップが長すぎると思われる場面や,現在の大学病院レベルの現場ではほとんど用いられない物品が見られると感じる箇所もありますが,教科書では往々にしてある傾向で,今後の改訂のなかで改善されてゆくものと思います。
さらに,この本のキャッチフレーズである,「身体侵襲を伴う技術の反復確認には,何度でも再生できるDVDのようなメディアが最適である」ということも,言われてみれば当然と納得させられます。多くの点で,なぜ今までなかったのか反省させられる,コロンブスの卵が本書であると言えるでしょう。


吉岡 成人 編
《評 者》金井 千晴(日看協看護研修学校専任教員・糖尿病看護学)
糖尿病患者に関わる全ての医療従事者に

病態のチェックシートでは,診療録を読みこなすためのポイントがおさえられ,治療のチェックシートでは,治療内容や患者の治療に対する取り組みが把握できる。また,療養指導のチェックシートでは患者の生活状況を知ったうえで,患者に必要な療養指導項目をピックアップできる。まさに,糖尿病療養指導士をはじめとする糖尿病患者に関わる医療者が臨床現場ですぐに使える実践書になっている。
在院日数の短縮化など社会情勢の変化によって,糖尿病は外来での療養指導にシフトしつつある。糖尿病患者は増加の一途を辿っており,臨床現場では多忙な日常業務の中での療養指導に苦慮している。このような状況下では,簡便かつ誰が見てもその患者を把握し,指導できるようなツールが必要である。本書のチェックシートを活用することによって,医療者の経験差にかかわらず,患者情報を漏れなく網羅でき,質の高いケアの提供に繋がるであろう。
患者に適した療養指導は,患者が生活の中で実践可能かつ継続できる方法を見出せることであり,患者の病態・治療・生活状況をしっかり把握することが必須となる。また,チーム医療の推進においても,患者情報の共有化を図る上で有用である。チェックシートはそのまま使用できるが,施設の実情に合わせてアレンジすることで,より実用的なものになるであろう。
解説により,チェックシートの情報をどう解釈・活用していけばよいか示唆を得られるため,療養指導時に活用するだけでなく,療養指導に携わる部所での新人教育にも活用できる。
「糖尿病療養指導士のための」という題名ではあるが,本書は糖尿病患者に関わるすべての医療者が活用できる一冊であり,本書が広く活用されることを期待する。


聖マリアンナ医科大学病院看護部 編
《評 者》細谷 亮太(聖路加国際病院小児科部長)
20年たっても色褪せない子どもたちの詩

当時の婦長さんが音頭をとって,病棟の保育士さんが退院が近づいた子どもに頼んで書いてもらい,私家版として本になったものらしい。
それから20年以上の時間が経過し,子どもたちと一緒になって病気と闘った1人の小児外科医が定年を迎え退職することになりました。本棚に大切にしまってあったこの詩集を持ってお別れの会に臨み,一部を朗読したのです。
子どもたちの作品は長い時間を経ても色褪せてはおらず,十分な力をもって,その会に出席した人々の心を揺り動かしたのでした。
その時の感動が核になって,この作品集が復刻されることになった……と私は思います。
お別れの会の主役,中田幸之介先生と音頭をとった張本人,陣田泰子師長(お2人は現在それぞれ聖マリアンナ医科大学病院の院長と看護部長の要職にある=2006年3月現在)が前書きを書いておられますが,お互いに遠慮なさったのか,そのあたりの経緯が明確に語られてはおりません。お節介とは思いながら,私めがシャーロック・ホームズ張りに推理してしまいました。
私の推測をもとにこの作品集を読んでいただくと,子どもたちの作品もより輝きを増すのではないかと勝手に思ったりしています。
いちばん最初に8歳の大介君の詩が出てきます。
にゅういんしたとき
あさ,ひる,よる
「いただきます。」
「ごちそうさま。」
っていうんだよ。
しょっぱなから,なんてかわいいんだろうと思わせてくれます。
うちよりも,びょういんのほうが
すきになってしまいました。
の7歳のゆうちゃんは退院と聞いて,
半分かえりたくて,半分かえりたくない気持ちでした。
と書いています。
15歳のけいこさんは入院した病棟はとても楽しかったと述べたあとに,
でも入院は,
やっぱり,二度はしたくありません。
そうだろうなと共感します。
最後のパートに,作品を残して14歳で天国へ旅立った並木崇典君の特集があります。
最後の入院の前の退院にあたって書いた文章の終わりに,
来月も入院してくるのでよろしくお願いします。
先生,看護婦さん,保母さんに助手さん,どうもお世話になりました。
さようなら
とあり,まだまだ私たち医療者はがんばらなければいけないと思わせてくれます。
A5・頁108 定価1,260円(税5%込)医学書院