MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


坂本 穆彦 編集
《評 者》福田 利夫(群馬大教授・応用検査学)
細胞診断学に携わる方々の必携の書

今回の改訂に携わった執筆者のうち,6名の病理医は細胞診断学に造詣が深く,細胞診専門医・指導医として細胞検査士の教育に深い経験と理解をもたれている方々です。また6名の細胞検査士は全員,癌研究会附属病院に所属し,細胞診の第一線で活躍されているとともに,細胞検査士の教育に多年の経験を蓄積されている方々です。これらの筆者の方々が編集と執筆を担当された坂本穆彦教授の意向のもとで,細胞診の基本から応用までのすべての領域について過不足なく,また初心者にも理解しやすいように解説されています。
序論に相当する細胞診の役割,現状と展望,検査体制については全面的に書き直され,細胞診の将来展望,医師,検査技師の専門資格としての細胞診の検査体制が具体的に紹介されています。
総論の部分では,先に書かれた細胞診の将来展望をふまえて,術中迅速細胞診,デジタルカメラを用いた写真撮影,判定と報告の項目が新規に追加され,検体採取器具についても新しい器具がカラー写真で紹介されています。
各論の部分では今までの大きな流れを尊重し,“癌(腫瘍)取扱い規約”や表が最新の内容で組み直されるとともに,2色刷となり,その配置もより見やすくなりました。参考文献もほぼ倍加し,現在国内で細胞診を学ぶために使われている教科書のみならず,海外での標準的なテキストも網羅されており,より深く学ぶためのガイドとなりました。さらに,カラー写真索引が今回の版から掲載され,細胞診カラーアトラスに近い使い方もできるようになりました。この点は坂本先生が著された『臨床細胞診断学アトラス』が絶版で入手困難な現在,細胞検査士をめざす人々に対する暖かい心遣いが感じられます。
現在,細胞診に関して比較的新しい内容の教科書は国内に数種ありますが,本書のように細胞検査士や細胞診専門医・指導医をめざす人々の教科書として版を重ね,最新の内容で充実感のある教科書は他に類をみないものです。編者,著者の大変なご努力によって改訂されたこの『細胞診を学ぶ人のために 第4版』を細胞診断学に携わる方々の必携の書としてぜひお勧めしたいと思います。


WM臨床研修サバイバルガイド 精神科
松島英介,大西 建 監訳
《評 者》小島 卓也(日大教授・精神神経学)
使いやすく便利な研修医に勧めたい本

第I部は「それで,あなたは精神科医になりたいのですね」という親しみと研修の動機を高める題である。1.サバイバルのための心得,ここでは精神科医としての基本的な態度・姿勢が記され,2.精神疾患患者へのアプローチでは,面接・診断・評価の具体的な手順が示されている。3.精神科へのコンサルテーションでは,依頼する側(他科)と依頼される側(精神科)の必要な事柄,相互のコミュニケーションをとるポイントが示されている。
第II部の「よく見られる精神科診断」では,4.せん妄,5.痴呆(認知症),6.物質関連障害,7.気分障害,8.不安障害,9.精神病性障害,10.身体表現性障害,虚偽性障害,詐病,11.人格障害について記載されている。各項目では,「はじめに」で概念が簡潔に述べられており,「診断カテゴリー」では,項目の細分類が記され,その項目の全体を把握できる。
「疫学」ではカテゴリーについていずれも生涯有病率が記されていて便利である。「臨床的特徴」は各カテゴリーについて簡潔に記されている。
「評価」では項目の代表的なカテゴリー(障害)について具体的に診断までの手順が記されている。面接の仕方なども記されていて初心者に役立つ。また「臨床検査」「治療」等が記され,「救急部回診」など救急部で診療する場合の要点が記されている。
第III部の「困難な状況」では,12.自殺の危険性の評価,13.焦燥がある患者,加害性がある患者,殺人の傾向がある患者,14.隔離,拘束,強制入院,判断能力,意思決定能力が要領よく述べられている。特に13では自分の身を守ること,その方法を常に考えておくことなど,日本の教科書ではまったく触れられていない重要なことが記されている。
第IV部の「付録」には,A.処方集,B.薬物による有害事象と副作用,C.電気けいれん療法,D.指示と診療録の記載,E.臨床的成果についての研究の評価,F.DSM-IV診断基準,G.標準化された評価尺度(MMSE,HAM-D,BPRS,AIMS),H.患者データ記録用紙が記載されている。
以上,実際の臨床に必要な事柄が過不足なく整理され,記されており,研修者の側からみて,知りたいことがきちんと載っており,しかも深く考えさせ,使いやすく便利である。臨床研修医に勧めたい本の1つである。
A5変・頁272 定価2,940円(税5%込)MEDSi