レジデントサバイバル 愛される研修医になるために
CHAPTER 3
君のコンサルテーションは魅力的か?(前編)
本田宜久(麻生飯塚病院呼吸器内科)
【前回からのつづき】
日常診療をまったくひとりで行なうことはほとんどない。ましてや,研修医時代はなおさらで,口頭でのコンサルテーションが日常である。他の医療者に対し与えるべき技術や知識の乏しい研修医。ならば,症例の問題点を簡潔かつ的確に伝えることは,研修医の必須アイテムといえる。与えるものがないならば,せめて,コンサルテーションそのもので相手の興味をそそってあげたい。少なくとも不機嫌にはさせたくはない。
今回は,不機嫌な指導医が多い時間帯。すなわち,眠たい夜間の電話によるコンサルト場面を想定してみた。
名をなのる
指導医「はい,○○ですが」研修医「あ,先生。60代女性なんですけど。10年前に胆嚢摘出術の既往があってですね。今日は嘔吐と腹痛で来られて,レントゲン上はですね……」
指導医「……。(誰だ,こいつ)」
コメント
自分が誰と話しているのかわからない状況は,陰性感情のきっかけになりやすい。さらに,眠い時間帯,要領を得ないコンサルテーション,実力のない研修医と,イライラは倍増していく。 最初でつまずかないために,「当直研修医の○○と申します」からはじめよう。 CAUTION
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間投詞を控え,区切りよく話す
指導医「はい,○○ですが」研修医「当直研修医の△△ですがぁ。あのぉ,60代の男性でぇ,動悸でこられたんですけどぉ。なんかぁ,今日の夕方からドキドキするみたいでぇ。そのぉ,大腸検査で下剤も飲んでるみたいでぇ。えぇと,バイタルサインは安定してるんですけどぉ。心電図は心房細動みたいでぇ。えーと,ちょっと診てほしいんですけどぉ」
指導医「……。」
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間投詞を控え,区切りよく話す
自分は間投詞でリズムをとっているつもりでも,聞く側にとっては苦痛となる |
コメント
指摘されないと気づかないのが,この余計な間投詞。多い人は1つの症例提示で50回以上言うこともある(研修医同士で数えてみよう)。自分は間投詞でリズムをとっているつもりでも,聞く側にとってはかなり苦痛である。 勉強になるのは薬剤の説明会。製薬会社の医薬情報担当者(通称MRさん)のプレゼンを研究してみよう。「あのぉ,ええと」を連発するMRさんは珍しい。 もちろん下手な人がいないわけではない。そんな,つまらない説明会に出会った時は,イライラせずにどうしてつまらないのかを研究してみるとよい。きっと今回取り上げたテーマの大切さを再発見できると思う。 その他の事例質問に対して,いきなり「だから……」と答えはじめる。質問者には,「だから」の意味がわからないし,なんだか自分がものわかりの悪い人間と言われている気がする。CAUTION
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相手の大変さを気遣う
指導医「はい,○○ですが」研修医「当直研修医の△△です。70代女性の発熱なんですけど,フォーカスははっきりしないんですけど,レントゲン上では肺炎があるかもしれないんですが,CRPは……」
指導医「今から挿管する人がいるんだ!20分後でいいか?」
研修医「わかりました。すみません」
(20分後,再度指導医コール)
研修医「先生,先ほどはすみませんでした。今,よろしいですか?」
指導医「ああ,大丈夫だ。こちらこそすまなかったね」
コメント
前々回でも紹介した内容である。 全国ほとんどの病院で,当直医師は翌日も普通に働いている。研修医よりも確実に体力が低下しつつある指導医。夜中のコールはつらいものだ。さらに,当直に専念できないことも多く,この事例のように手が離せない時もある。 電話は相手の状況にかかわりなく,有無を言わさぬ返答を要求する強制力の強いもの。陰性感情が起きやすいのだ。プレゼンの前にせめて,気遣いの言葉を付け加えてほしい。明日も普通に仕事があるお互いのために。もちろん急変時は例外である。 CAUTION
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私事ですが,4月10日に結納をすませました。「ハズバンド・サバイバル」を教えていただきたい春です。
【筆者略歴】 1973年生まれ。長崎大卒。麻生飯塚病院での研修医時代より院内でのコミュニケーションに興味を持ち,以来事例を集めている。 yhondah2@aih-net.com |