医学界新聞

 

日本看護協会 平成12年度通常総会開催


 さる5月17-19日の3日間,日本看護協会(南裕子会長,会員約50万人)の平成12年度通常総会が,東京・代々木の国立代々木競技場第1体育館を主会場に開催された(本紙6月26日付,第2393号に既報)。
 本総会では,「組織の力を強化し政策決定に看護職者の声を反映させよう」や「看護婦養成制度の一本化に向けて准看護婦養成停止を実現しよう」など4項目の平成12年度スローガンや,定款改正,原宿会館建て替え資金計画,保助看法改正に向けた協会案などを審議の上,可決させた。
 なお,本総会に先立ち「准看護婦養成停止を求める総決起集会」(詳報)を開催。また,3日目には保健婦(士)・助産婦・看護婦(士)の各全国職能集会が行なわれた。


提出議案のすべてを可決

 会長就任後初の総会を開催した南会長は,本総会を「今世紀最後の仕上げの総会」と位置づけ,永年の課題であるいわゆる「准看護婦問題」について,「究極の目標は『准看護婦制度の廃止』だが,そのための当面の目標は准看護婦の養成停止」と明言。
 また,本年春の国会で審議が予定されていた,名称を保健師,助産師,看護師と男女統一する問題に関しては,今秋の国会へ向けてさらに保助看法の改正運動を進めることを確認。さらに,原宿会館の老朽化による立て替えに関しては,資金計画案を明示し会員の協力を要請した。なお計画によると,原宿会館は,明年秋より建築に着工,2003年6月には地下1階,地上9階建ての新会館が完成する予定である。
 なお,総会審議に先立ち,全国から99名の協会長表彰が行なわれた他,中央推薦の永井敏枝氏(前聖隷学園浜松衛生短大学長)ら10名が名誉会員の推薦を受け,名誉会員証が贈呈された。
 一方,2日目に行なわれた本審議では,3号議案の「看護制度改正推進」に,(1)看護婦養成制度の統合を実現するための活動,(2)看護基礎教育の大学化の促進と臨床研修の必修化に向けての活動,(3)保助看法の改正に向けての活動,を重点項目にあげたが,会場から「3項目それぞれが内容を異にしているため,別々に採択すべき」との意見を受けて,(1)の一部を修正した上で異例の各項目ごとの採決を行なった。
 また,同議案(2)では「臨床研修必修化の促進」が注目されたが,執行部は「必修の制度化をめざして,今年より事業計画の中で検討を進めたい」との方向性を示した。「卒後臨床研修の必修化」については,医師の必修化が先の国会で先送りとなっている。看護もまた,条件整備など問題が山積しており,相応の検討が必要と思われる。
 さらに相次ぐ医療事故に関しては,6号議案の事業計画の中で,昨年の「リスクマネジメントガイドライン」の作成に引き続き,今年から「リスクマネジャーの養成」および「事故事例の収集,分析」に着手することが報告された。

 

医療事故防止に向けて

 3日目の約5900人の会員が参集した全国看護婦(士)職能集会では,午後から川村治子氏(杏林大教授)による講演「組織で取り組む医療事故防止」が行なわれた。
 氏は,医療事故の1原因となるヒューマンエラーは,必ず発生するものとの立場から,「間違うこと」を前提とした組織的な医療事故防止政策・リスクマネジメントの必要性を強調した。また,リスクマネジメントにおいては,「実際に発生してしまった事故だけでなく,未然に防止されたヒヤリ・ハットレベルのミスも含めて報告し,情報を把握・分析・公開して防止策を講じることが大切」と述べ,具体的な事例を提示し,その分析を行なった。
 なお,講演に続いて行なわれた同テーマのシンポジウムでは,神部周子氏(横浜市大病院看護部長),田中とも江氏(上川病院総婦長),田浦和歌子氏(武蔵野赤十字病院看護副部長),小島恭子氏(北里大学病院看護部長)の4名が登壇し,それぞれの実体験に基づいた医療事故防止について意見を述べた。
 特に神部氏は,昨年1月に起きた「手術患者取り違え事故」に触れ,その後の防止策として(1)リストバンドの装着,(2)患者確認の具体的方法の徹底,(3)患者移送への主治医のつきそい,(4)手術出し時間のずらし,(5)看護職の勤務時間の調整,の5つの具体的対策を提示した。