医学界新聞

 

「基礎と臨床との接点」をメインテーマに

第58回日本癌学会総会開催


 本紙第2354-2355号掲載の対談「俯瞰的に見る『癌学』-時代を見る眼を養う」(杉村隆国立がんセンター名誉総長,樋野興夫癌研実験病理部長),および2355号掲載の「第58回日本癌学会開催にあたって-基礎研究から臨床医学への統合に向けて」で既報のように,第58回日本癌学会総会が田原榮一会長(広島大教授)のもと,さる9月29日-10月1日,広島市の広島国際会議場他において開催された。
 「基礎と臨床との接点」をメインテーマとした今総会では,「がん研究の過去・現在・未来:いくつかの落とし穴を考えつつ」(杉村隆氏),ならびにAlfred G. Knudson氏(Fox Chase Cancer Center)による「Hereditary Cancer」の2題の特別講演,新しい試みである日米合同シンポジウム「New Tumor Suppressor Genes」,15の主要臓器癌にフォーカスを当てたユニークなワークショップ19題の他,シンポジウム11題,サンライズセミナー21題,市民公開講座「環境とがん,予防と診断」などが企画された(関連記事を掲載)。

  


癌研究の創造性を求めて

 田原会長の開会の辞に引き続いて開かれた最初のシンポジウム「癌研究の創造性を求めて」(司会=熊本大 山村研一氏,癌研 樋野興夫氏)では,下記の6氏が登壇。今回のメインテーマ「基礎と臨床との接点」を具現化するとともに,「21世紀への掛け橋となる学会に」という田原会長の意図を踏まえて,それぞれ異なる研究分野の視点から,今後求められるべき癌研究の創造性が眺望された。
 「細胞分化の安定性と不安定性」(江口氏),「癌研究におけるサーチ研究とリソースの開発」(山村氏),「日常に潜む発癌物質と癌予防」(長尾氏)に続いて,テロメラーゼ(本号「慶應医学賞」参照)の解明を研究テーマとして推進している石川冬木氏は,エピジェネティクス(本号;シンポジウム「エピジェネティクスと発癌」参照)に言及した。
 また「細胞癌化や転移・浸潤におけるクローディンの役割」(月田氏)の報告の後に,樋野氏は「ゲノム時代の癌研究は,始まり(起始遺伝子)を起点として多段階発癌の方向を定め,臨床癌を意味づけ,予防・治療を予告することである」と結んだ。

(1)「発生研究と癌研究」(熊本大 江口吾朗氏)
(2)「Saturation mutationと癌研究-Beyond genome時代に向かって」(山村研一氏)
(3)「焼け焦げのがん原性物質をめぐって-小さな創造」(東京農大 長尾美奈子氏)
(4)「がん細胞の悪性化機構はなにか」(東工大 石川冬木氏)
(5)「細胞間をシールする新しい細胞間接着分子群クローディンの発見-がん研究との接 点」(京大 月田承一郎氏)
(6)「ヒト多段階発癌研究の戦略-炎症による癌と遺伝による癌に学ぶ」(樋野興夫氏)