理学療法ジャーナル Vol.57 No.4
2023年 04月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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特集 理学療法の2040年

 自らが理学療法の未来を考えていくことが重要であり,2040年になったときの理学療法がどのようになりそうなのかではなく,理学療法の2040年をどのようにするのかという気持ちを込めた特集タイトルとなっています.社会構造や理学療法の歴史と特質を整理し,各領域の動向とそれぞれの領域で夢をもって取り組んでいる理学療法士の語りを掲載しています.あなたは,理学療法の2040年をどのようにデザインして社会貢献と自己実現を図りますか?

2040年を見据えた日本の社会保障の取り組み 松田晋哉
 少子高齢化の進行のために社会保障制度改革を行うことが喫緊の課題となっている.活力ある高齢社会を構築するためには生涯現役社会の実現が必要となっている.高齢者や障害者の労働参加率を高めるためには筋骨格系の機能を維持することが重要である.こうした面も含めて理学療法士の地域公衆衛生活動への参画が求められている.

2040年を見据えた理学療法の取り組み──夢と可能性に向かって進む道 半田一登
 理学療法士にとって,2040年を夢と可能性のあるものにするためには「リハビリテーション」と「チーム医療」の束縛からいったん解放され,理学療法を主体として見直すことが重要である.自らの特色を生かしながら,変化する将来に向けたストーリーをつくり上げ,それを実現するための武器であるビッグデータによって活路は見出せるだろう.

2040年を見据えた理学療法の取り組み──脳神経疾患 森岡 周
 2040年までの神経理学療法に関連するロードマップを示した.今後,神経理学療法に関連する標準的な教育システムが構築され,効果判定の主要アウトカムが明言されることで,種々のアセスメントを用いた病態把握・臨床意思決定ツールの構築や,主要アウトカムに基づくエビデンスが集積されていくだろう.そして2040年頃には,神経理学療法は旧来の診療スタイルとは異なるフォームでヘルスモーションなどに組み込まれ,新たな事業も展開されるであろう.

2040年を見据えた理学療法の取り組み──運動器疾患 加藤 浩
 2040年には,わが国における高齢者で多くみられる大腿骨近位部骨折発生数は32万人に達すると見込まれる.大腿骨近位部骨折の主たる問題は骨の脆弱性であり,理学療法士には骨強度を高めるような効果的な運動療法を提示し骨折予防に貢献することが求められる.高齢者の健康寿命の延伸に向けて,さらなる臨床力と研究力の深化が求められる.

2040年を見据えた理学療法の取り組み──循環器疾患 神谷健太郎
 循環器疾患は加齢に伴い患者数が増加する代表的な疾患であり,高齢者人口が最大となる2040年頃,循環器疾患患者は多くの理学療法士が対応する代表的な患者層となる.インターネットの高速化,医療機器や personal health recordの活用,人工知能の進歩などによって遠隔デバイスなども駆使した在宅医療が発展することが想定される.

2040年を見据えた理学療法の取り組み──呼吸器疾患 神津 玲
 この10年間で呼吸器疾患の理学療法は大きく発展した.特に,急性期から慢性安定期の呼吸障害に対する運動療法のエビデンスが確立するとともに,理学療法の各手段の意義や位置づけも明確となってきた.2040年に向けた呼吸器領域の理学療法では「予防」および「理学療法へのアクセス」が重要なキーワードになると思われ,理学療法の新たな役割や課題に取り組む必要がある.

2040年を見据えた理学療法の取り組み──がん 森下慎一郎,他
 がん理学療法は疾患別診療報酬に組み込まれ,入院中の患者を対象に約10年で大きく発展してきた.一方で,外来における実施率はまだ高くない現状にある.今後はがん治療の進歩に合わせ理学療法を適応していくとともに,小児や高齢者など世代ごとのニーズに合わせた領域横断的な展開を進め,がん患者の療養の質向上に寄与できるようがん理学療法の質の向上ならびにエビデンス構築を図る必要がある.

2040年を見据えた理学療法の取り組み──地域・在宅 小山 樹
 地域の理学療法は介護保険とともに質,量ともに充実してきた.今後は個人,地域のニーズに合った地域包括ケアの実現に向けて,保険以外のサービスの充実も行う必要がある.在宅理学療法の対象は亜急性期,ターミナルの増加が予測されるので,医療・他サービスとの連携,情報の共有が重要となる.また予防分野においても介護予防だけでなく,疾病予防,産業分野などへ職域を広げ,取り組むべきである.

2040年を見据えた理学療法の取り組み──教育 福井 勉
 高等教育の今後の流れから理学療法士養成校削減は避けられない.理系シフトの政策誘導を意識し,社会的要請に基づいて理学療法がさらに進化することが問われている.本稿では教育現場の現状と将来に向けて要求されるさまざまな事項について論じる.

エッセー 2040年への思い
 2040年の理学療法にどのような期待や不安があるのか,それぞれの視点で理学療法への思いを率直にご執筆いただいた.

座談会 2040年に向けた理学療法の取り組み
高橋哲也,佐々木嘉光,塩田琴美,徳田和宏,馬路祥子,山口良太,米田モローネ裕香

 社会構造の変化に伴い,理学療法業界にも数々の課題が顕在化した.これを変革のチャンスと捉え,理学療法の専門性を再考しさらに一歩踏み出すことで,強みを活かした新たな働き方や役割の可能性が見えてくるであろう.理学療法士として,あるいは理学療法の専門性を活かして働く7名で,日々の取り組みとその原動力,描く将来像を議論した.

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特集 理学療法の2040年

エディトリアル 理学療法の2040年──十分な供給数で国民の多様なニーズに応える
内山 靖

2040年を見据えた日本の社会保障の取り組み
松田晋哉

2040年を見据えた理学療法の取り組み──夢と可能性に向かって進む道
半田一登

■2040年を見据えた理学療法の取り組み
脳神経疾患
森岡 周

運動器疾患
加藤 浩

循環器疾患
神谷健太郎

呼吸器疾患
神津 玲

がん
森下慎一郎,他

地域・在宅
小山 樹

教育
福井 勉

■エッセー 2040年への思い
入院医療から在宅医療・介護分野への変革とその担い手の持続的な確保に向けて
安藤雅峻

新たな時代に備えて,情報技術を手段として活用していく力をもつ
岡澤和哉

2040年に向けた地域理学療法のこれから
高橋和宏

国際交流から見た,2040年への思い
永田健太郎

臨床5年目理学療法士が考える2040年への思い
奈良 猛

少しばかりの余裕
山口雅子

妊娠期・産後のトラブルを見落とさず,一生涯にわたる健康管理をめざして
吉田李沙

■座談会
2040年に向けた理学療法の取り組み──新たなる役割と働きかた
高橋哲也,佐々木嘉光,塩田琴美,徳田和宏,馬路祥子,山口良太,米田モローネ裕香


■Close-up 最新物理療法
ラジオ波療法
烏野 大

拡散型圧力波治療
大森康高,他

磁気刺激
樋口拓哉


●とびら
私版“理学療法の職場内教育”
小池朋孝

●単純X線写真 読影達人への第一歩 [新連載]
重症慢性閉塞性肺疾患
名倉弘樹,他

●「経営者」の視線 4
リハビリテーション業界の教育改革を胸に
大北 潤

●臨床研究のススメ──エビデンスを創ろう 4
コホート研究
木村 朗

●臨床に役立つアプリケーション活用術 4
スタッフの情報共有
吉井秀仁

●臨床実習サブノート 臨床実習で技術のステップアップをめざそう [新連載]
情報収集~問診,診療録記載,臨床推論
薄 直宏

●報告
デスクワーカーの慢性頸部痛有愁訴に影響を及ぼす身体機能因子──整形外科クリニック通院患者における横断的検討
平野健太,他

●症例報告
膝蓋下脂肪体に起因した疼痛が生じていたと考えられた変形性膝関節症症例に対する理学療法
河治勇人,他

●ひろば
保健医療福祉関連職の教育における連携と教養に関する考察
中村壮大,他

●学会印象記
第9回日本スポーツ理学療法学会学術大会──科学的エビデンス構築と臨床応用に向けて
小松﨑美帆

第11回日本理学療法教育学会学術大会──「効果的な教育実践」に向けた研究の発展を期待して
永野 忍

●My Current Favorite 13
ジェネラリストとしての情報収集
髙橋忠志

●私のターニングポイント
ターニングポイントは失敗談とともに
濱田和明

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