理学療法ジャーナル Vol.57 No.3
2023年 03月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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特集 システムとしての姿勢制御──メカニズムの解明から臨床応用まで
企画:森岡 周

 安定した姿勢バランスは日常生活活動の基盤となる.一方で,過度な姿勢の安定性要求は,動きの自由度の制限を来す.ヒトの活動場面では,姿勢は常に変動することから,動的な姿勢制御が求められる.したがって,日常生活においては,柔軟性を保ちながらもロバストに安定させることができる神経メカニズムが不可欠となる.安定かつ柔軟なヒトの姿勢制御には,さまざまな要因がメカニズムとして関与することから,システムとして姿勢制御を捉えたうえで,理学療法評価・実践しなければならない.本特集がその足がかりになればと願っている.

システムとしての姿勢制御戦略 宮田一弘
 姿勢制御障害は理学療法の主要な対象である.姿勢制御の理解にはいくつかの理論が適用されてきたが,現在ではシステム理論に基づく考え方が主流となっている.本稿では,システムとしての姿勢制御についてBalance Evaluation Systems Test(BESTest)の6つの制御システム(生体力学的制約,安定性,予測的姿勢制御,反応的姿勢制御,感覚機能,歩行安定性)に基づき解説する.

予測的および反応的姿勢制御戦略 萬井太規
 安定した動作を達成するためには,姿勢動揺を最小限に抑える姿勢の準備活動[予測的姿勢制御(anticipatory postural adjustments:APAs)]と姿勢動揺後に安定性を復元する反応的姿勢制御が重要となる.加齢や神経疾患に伴いいずれの姿勢制御も低下することから,両姿勢制御の制御メカニズムを理解したうえで治療アプローチを選択する必要がある.APAsは不安定な動作の反復練習,反応的姿勢制御はperturbation‒based balance training(PBT)の実施が効果的であることが示されている一方,波及効果が乏しいことも明らかになりつつある.波及効果を促進する新たなアプローチコンセプトの発展が必要である.

随意的姿勢制御戦略──随意的な身体重心位置移動の制御メカニズムと理学療法 冨田洋介
 随意的な身体重心移動は力学的な安定性を一時的に喪失させ,力学的な安定性を再獲得する過程を含む.また日常生活においては随意的な身体重心移動だけを行う場面はまれで,機能的な状況を評価・治療するためには上肢リーチ運動などの明示的な運動課題を付加することで,重心移動の制御を暗示的な運動制御課題とすることが可能となる.本稿では,身体重心移動の力学的メカニズムを概説し,その後,運動制御研究の主要な問題の一つであるposture‒movement problemを紹介する.そして上肢リーチ運動を例に神経疾患に伴う随意的姿勢制御の問題・評価・アプローチについて,特に上肢リーチ運動の準備,実行,姿勢制御戦略の適応性の観点から議論する.

姿勢制御における感覚戦略 光武 翼
 感覚戦略は,姿勢制御システムの構成要素の一つとして環境や状況に応じて視覚,体性感覚,前庭覚の比重を変化させることで姿勢を制御している.転倒は突発的な動作時に生じやすいため,感覚戦略による感覚情報の瞬時の再重みづけは姿勢を保持するために重要な役割を担う.本稿では各感覚と姿勢制御機能の関係性を示すとともに,感覚戦略の評価法,疾患特異性,および感覚機能へのアプローチを中心に述べる.

注意操作を用いた姿勢制御アプローチ 植田耕造
 どこに注意を向けるかにより姿勢制御は変調する.また姿勢脅威を惹起する高所条件を用いた研究により,姿勢脅威のある状況では注意を向ける対象が変化し内的焦点化などが起こることが明らかになっている.本稿では理学療法の際に把握しておくべき注意や姿勢脅威が姿勢制御に及ぼす影響と,注意の外的焦点化や二重課題による注意操作を用いたアプローチを解説する.

接触操作を用いた姿勢制御アプローチ 石垣智也
 固定物に軽く接触することで得られる姿勢や動作の安定化をライトタッチ効果といい,さまざまな疾患や障害を有する者にも適用可能である.しかし,バランス能力の向上を目的とした姿勢制御アプローチに,ライトタッチ効果を用いることが有用な手段となるかは明らかでない.本稿ではライトタッチ効果のメカニズムと固定物および人へのライトタッチ効果の違いを概説し,理学療法における姿勢制御アプローチへの応用可能性について考察する.

聴覚フィードバックを用いた姿勢制御アプローチ 長谷川直哉
 近年,聴覚フィードバックを用いた姿勢制御アプローチの可能性が先行研究により示されてきている.一方で,臨床で多く用いられる視覚フィードバック練習とは異なり,聴覚フィードバックを用いたアプローチはエビデンスが少なく,臨床での利用が制限されている.本稿では,姿勢制御アプローチにおける聴覚フィードバック練習の変遷や視覚フィードバック練習との効果の違いについて自験データを交えて述べる.

ニューロモデュレーション技術を用いた姿勢制御アプローチ 犬飼康人
 現在,ニューロモデュレーション技術は,幅広い領域のリハビリテーションに応用されている.姿勢制御においては,中枢神経系が重要な役割を果たすことから,近年ではニューロモデュレーション技術を用いて姿勢制御を向上させようとする試みも行われている.本稿では,中枢神経系に対するニューロモデュレーション技術である非侵襲的脳刺激法や前庭ノイズ電流刺激が姿勢制御に与える影響について,現在のエビデンスを含めて解説する.

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特集 システムとしての姿勢制御──メカニズムの解明から臨床応用まで

エディトリアル システムとしての姿勢制御──メカニズムの解明から臨床応用まで
森岡 周

システムとしての姿勢制御戦略
宮田一弘

予測的および反応的姿勢制御戦略
萬井太規

随意的姿勢制御戦略──随意的な身体重心位置移動の制御メカニズムと理学療法
冨田洋介

姿勢制御における感覚戦略
光武 翼

注意操作を用いた姿勢制御アプローチ
植田耕造

接触操作を用いた姿勢制御アプローチ
石垣智也

聴覚フィードバックを用いた姿勢制御アプローチ
長谷川直哉

ニューロモデュレーション技術を用いた姿勢制御アプローチ
犬飼康人


■Close-up リウマチ今昔物語
関節リウマチの治療──変わったことと変わらないこと
神野定男

関節リウマチの理学療法──変わったことと変わらないこと
島原範芳,他

関節リウマチの作業療法──変わったことと変わらないこと
田口真哉,他


●とびら
すべての学生は有能で能動的な学び手である
有馬慶美

●「経営者」の視線 3
心に響くサービスをめざせ
宮脇 敬,他

●臨床研究のススメ 3
尺度研究──信頼性と妥当性
楠本泰士

●臨床に役立つアプリケーション活用術 3
動画活用と編集
森尾裕志,他

●臨床実習サブノート
退院後から振り返るゴール設定──推論を事実と照合して学ぶ [最終回]
施設入所 車椅子自立
安部泰広,他

●報告
石灰沈着性腱板炎に対する超音波治療と拡散型圧力波治療の治療効果の比較
三船昴平,他

●症例報告
免荷式歩行器の前進負荷機能を用いた歩行練習により歩行能力が改善した既往症を有する腰部脊柱管狭窄症の1例──シングルケースデザインによる検討
吉川大志

●プラクティカル・メモ
骨折後の荷重量コントロールの一工夫──鉛直方向への操作を用いた軸圧荷重
眞本 匠

●私のターニングポイント
大きな影響を与えてくださった2人の理学療法士との出会い
鬼頭大輔

●学会印象記
第9回日本小児理学療法学会学術大会──今,小児理学療法に問われるもの
曽我崇大

第9回日本予防理学療法学会学術大会──予防理学療法で地域をサポートする
岡﨑陽海斗

●My Current Favorite 12
理学療法の在り方「ケアとセラピー」
廣濱賢太

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