総合リハビリテーション Vol.50 No.1
2022年 01月号

ISSN 0386-9822
定価 2,530円 (本体2,300円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 今月のハイライト
  • 収録内容

開く

リハビリテーションにおける臨床倫理と合理的配慮

 リハビリテーション医療におけるゴールの設定や,途中のさまざまな選択は本来,本人と医療者の話し合いによって決定されるべきものだが,現実には,本人の理解や意思表明の困難,予後予測の不透明性などがあって難しいことがある.また,リハビリテーションは社会参加を目的とするものであるため,医療ばかりではなく地域や社会との関係が重要であり,合理的配慮とは何かという課題,それを検討するための情報共有における個人情報保護など,広い意味での倫理的な配慮が必要である.本特集では,そのような広い意味での倫理的配慮に焦点をあて,さまざまな角度から,課題の整理とよりよい解決のための実践のステップについて解説していただいた.

リハビリテーションの臨床倫理 箕岡 真子氏
 リハビリテーションにおける臨床倫理の役割は,自立(independence)を支援するだけでなく,自律(autonomy)を支援することである.治療方針に関する意思決定プロセスでは,自己決定尊重〔自律尊重原則(autonomy)〕が重要であり,意思決定能力が低下している(=vulnerable)場合,ただ家族であるというだけでは適切な代理判断者とはいえず,本人の価値観や考え方をできるだけ反映させ,本人の真正性(authenticity)に配慮するべきである.ACP(アドバンスケアプランニング)や倫理コンサルテーションは,倫理的ジレンマの解決に役立つ.緩和ケア期には,dignity therapy が重要となる.なお,医師の職業倫理としての守秘義務は相対的義務であり,基本的な倫理原則である自律尊重原則から,人は「自分に関する情報を自分でコントロールする権利(=プライバシー権)」を持つことに由来する.個人情報保護は,目的外使用の禁止と,第三者への提供禁止を大きな柱としている.

心身障害児者の医療や生活における倫理的課題 船戸 正久氏
 障害者権利条約第19条では,たとえどのような障害があろうとも本人の希望があれば「自立した生活および地域社会で受入れられる権利」が保障されることを宣言し,国内法では,「児童福祉法」(2012年改正),「障害者総合支援法」(2013年施行)を中心に複数の法律が整備されている.心身障害児者の医療や生活においては,「本人さんはどう思てはるんやろ」の姿勢が重要であり,意思決定支援のためのガイドラインがある.「自己決定」ができないと,「推定意思」による代理決定となり,推定できない場合には「最善の利益」を法定代理人と医療・ケアチームが協同意思決定することとなる.QOL(quality of life),QOD(quality of death でもありquality of dignity)の尊重が共生社会の実現に不可欠で,さらにコロナ禍を含む災害時においても,合理的配慮がなされることが重要である.

脳卒中・神経難病の臨床倫理 今長谷 尚史氏ら
 脳卒中・神経難病をもつ患者の治療方針決定において生じやすい倫理的ジレンマは,①予後予測が難しい,②患者本人の意思確認が困難,③状況の変化で,患者本人・代理意思決定者である家族らの意思が変化し得る,の3つに由来する.意思決定においては,事実判断(例「この治療をすれば生き続けることができる」)と,価値判断を含む倫理的判断〔例「それゆえ,この治療を続けるべきである」←これには,「生き続けることはよいことである」という前提(価値判断)がある〕がある.事前指示も万能ではなく,医学の不確実性の中で,事実認識を更新し,繰り返し話し合うことで事実認識と価値観を共有し,どこに価値を置くかを判断し意思決定を行う.

障害のある学生の学校生活のための合理的配慮と個人情報保護 田中 芳則氏
 障害学生支援のための合理的配慮は意思疎通面,物理的環境面,ルール・慣行面があり,障害学生支援部門を中心に入学前相談,入学後相談を通して合理的配慮を提案し,学生本人の同意を得てチームで取り組む.はじめは全面的に障害学生支援部門が障害学生への協力を行うが,次第に障害学生が自分で行う手続きを増やし,大学などの組織と交渉することを学べるよう,エンパワメントも必要である.また職員にも知識とコミュニケーションを学ぶ機会を提供する必要がある.合理的配慮を受けるための個人情報の開示と提供については,学内の学部・学科,支援体制,大学組織の3つのレベルに対して,それぞれどこまでを開示するかを障害学生が自分で決め,学期ごとに見直す.

障害者雇用や復職における合理的配慮と個人情報保護 辻 洋志氏ら
 2016年4月に施行された改正障害者雇用促進法では,事業主は障害者から何らかの配慮を求める意思の表明があった場合,事業主にとって過重な負担がない範囲で,合理的配慮の提供が義務づけられている.合理的配慮とは,募集および採用時においては,障害者と障害者でない人との均等な機会を確保するための措置であり,採用後は,障害者と障害者でない人の均等な待遇の確保または障害者の能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するための措置である.合理的配慮の提供に関しては,必ずしも傷病や障害の証明を要件とはせず,障害者本人と事業主の相互の話し合いにより配慮の内容を決定する.合理的配慮のための健康情報などは,労働者が人事上の不利益を被ることを避けるため適切な取り扱いが求められており,指針では,就業上の措置にかかわる医師の意見に置き換えるなどの「健康情報の加工」も求められている.米国では,障害を持つアメリカ人法(Americans with Disabilities Act :ADA) 施行以降,事業主の判断で必要に応じて医師に医学的職務適性(fitness for duty:FFD)評価を依頼することが一般的となっており,今後,日本に合う形でのFFDの確立が期待される.

開く

医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

リハビリテーションの臨床倫理
箕岡 真子

心身障害児者の医療や生活における倫理的課題
船戸 正久

脳卒中・神経難病の臨床倫理
今長谷 尚史,他

障害のある学生の学校生活のための合理的配慮と個人情報保護
田中 芳則

障害者雇用や復職における合理的配慮と個人情報保護
辻 洋志,他


●ひと
第59回日本リハビリテーション医学会学術集会会長になられた芳賀 信彦氏
井口 はるひ

●入門講座 重症呼吸機能障害に対するリハビリテーション治療 ①
人工呼吸器からのウィーニング支援
平澤 純

●実践講座 医療機関における治療と仕事の両立支援 ⑥
両立支援の実際――心疾患
荻ノ沢 泰司

●研究と報告
狭義の通いの場への1年間の参加による
介護予防効果――JAGES松戸プロジェクト縦断研究
阿部 紀之,他

●症例報告
自家肺移植術に対し周術期理学療法を施行し早期復職できた1例
舩津 康平,他

●第50巻記念 特別連載
「総合リハビリテーション」の50年――印象に残った記事から読み解く ①
「総合リハ」誌の「総合性」
上田 敏

●国際標準化機構(ISO)規格の動向 ①
リハビリテーション医療におけるISO9001の活用
宮越 浩一,他

●障害者の災害支援 ①
社会的弱者と災害――誰一人取り残さないための原則とは?
立木 茂雄,他

●Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
クセノフォンの『ソクラテスの思い出』――長男への説諭
高橋 正雄

●Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「由宇子の天秤」――映画で「人間性」を可視化し定義する試み
二通 諭

●私の3冊
松瀬 博夫

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。