理学療法ジャーナル Vol.56 No.6
2022年 06月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • EOI : essences of the issue
  • 収録内容

開く

医療現場におけるサルコペニア・フレイル

 人口の高齢化に伴い,医療現場においてサルコペニアやフレイル合併患者への対応はきわめて重要になった.サルコペニアやフレイルを合併した患者では,理学療法の進行のみならず,主たる疾患の薬物療法や手術療法などの選択にも影響を及ぼす.本特集では,サルコペニア・フレイルが理学療法や疾病の治療そのものにどのような影響を及ぼすのか,また,サルコペニア・フレイルの評価,予防や治療に関する研究はどこまで進んでいるのか,さまざまな診療領域ごとに見ていく.
[企画 神谷健太郎]

脳血管疾患とサルコペニア・フレイル 野添匡史
 脳血管疾患におけるサルコペニア・フレイルは,疾患発症後の入院期間に急速に進行し,機能予後を悪化させる.サルコペニアは運動麻痺や不活動,摂食嚥下障害や低栄養などによって進行しやすいが,脳血管疾患発症後のフレイルの実態は依然明らかにされていない.脳血管疾患患者におけるサルコペニア・フレイルの予防・介入として,急性期においては早期栄養評価とともに早期離床やADL 改善を図ること,回復期では栄養状態を改善しつつレジスタンストレーニングや身体活動を促進することが重要になる.

整形外科疾患とサルコペニア・フレイル 南里佑太
 サルコペニアおよびフレイルはその病態や概念から,筋骨格の障害を主病態とする整形外科疾患と密接にかかわる.整形外科疾患とサルコペニア・フレイルの併発は,疾患や症状の増悪だけでなく,転倒や骨折の発生,および死亡リスクの増加につながることが報告されている.本稿では,変形性関節症,骨粗鬆症,大腿骨近位部骨折におけるサルコペニアとフレイルの病態,影響,および介入方法について最新の知見を踏まえて紹介する.

呼吸器疾患とサルコペニア・フレイル 金﨑雅史
 サルコペニアは,進行性の骨格筋量,筋力と身体機能の低下を特徴とし,慢性閉塞性肺疾患や間質性肺疾患において一般高齢者と比べて高頻度で観察され,主要な肺外病変である.またサルコペニアは運動耐容能,身体機能や健康状態に悪影響を及ぼすため,サルコペニアを加味した病態把握は呼吸器疾患患者の良好な臨床帰結をめざす際のガイドになる.

循環器疾患領域におけるサルコペニア・フレイル 片野唆敏,他
 本邦では高齢化を背景にサルコペニア・フレイルを合併した心不全患者が急増している.サルコペニアやフレイルの合併は心不全の予後不良と関連するため,適切な診断と早期の治療が重要である.サルコペニア・フレイル合併心不全の臨床像は心不全の病態と関連が強く,その治療の基本は心不全の標準的治療を主軸に,運動療法,栄養療法を行うことにある.

内分泌代謝疾患とサルコペニア・フレイル 浅田史成
 糖尿病を中心とした内分泌疾患患者においてサルコペニア・フレイル合併率は高く,予後も両者の悪循環により,心血管系イベント,死亡率,転倒,骨折,ADL の低下,うつなどのリスクが高くなる.予防および治療には運動療法と食事療法が必須であり,運動の種類,量,頻度,時間帯に合わせた食事のバランスと量の設定,そして薬物療法の活用が望ましい.理学療法士には幅広い知識と患者への教育スキルが必要である.

慢性腎臓病とサルコペニア・フレイル 松沢良太
 腎代替療法を必要とする末期腎不全患者は,加齢以外にもさまざまなサルコペニア・フレイルの危険因子を有している.患者の高齢化および生活習慣病の重度化が進行した今日の腎不全医療において,サルコペニア・フレイルを日常の臨床のなかで適切に管理することはきわめて重要である.本稿では,慢性腎臓病患者におけるサルコペニア・フレイルの理解,そして具体的な日々の管理法について解説する.

がんとサルコペニア・フレイル 田中伸弥
 近年,サルコペニア・フレイルは,その高い有病率と有害な転帰との関連性から,腫瘍学における関心が高まっている.サルコペニア・フレイルの定義は統一されていないため有病率は研究間で大きく異なるが,さまざまながんとその病期において,サルコペニア・フレイルの合併が一貫して予後不良な結果となっている.運動療法と栄養療法は,サルコペニア・フレイルの発症と進行の予防に有用であり,早期発見・早期介入が重要となる.

集中治療領域におけるサルコペニア・フレイル 中西信人
 集中治療領域では一次性サルコペニア・フレイルが生命予後や身体機能低下と関係している.さらに集中治療室入室後には二次性サルコペニアやフレイルを来し,長期的な機能障害の原因となることがある.その評価としては浮腫の影響を受けず直接的に筋肉量を評価可能なcomputed tomography や超音波検査が有用である.早期リハビリテーションや神経筋電気刺激療法などを併用することで二次性サルコペニアやフレイルを予防可能である.

回復期リハビリテーション病棟におけるサルコペニア・フレイル 井上達朗
 回復期リハビリテーション病棟に入院した高齢者の半数以上はサルコペニアに該当する.サルコペニアは入院中のADL 改善や自宅退院を阻害するだけでなく,嚥下機能や入院関連医療費にも影響を与える.サルコペニアへの介入は評価から始まる.骨格筋量・機能を正確に評価し,全身の運動療法と栄養療法を併用することが現段階で最も効果的なサルコペニアへの介入戦略である.

開く

医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

特集 医療現場におけるサルコペニア・フレイル

エディトリアル 医療現場におけるサルコペニア・フレイル
神谷健太郎

脳血管疾患とサルコペニア・フレイル
野添匡史

整形外科疾患とサルコペニア・フレイル
南里佑太

呼吸器疾患とサルコペニア・フレイル
金﨑雅史

循環器疾患領域におけるサルコペニア・フレイル
片野唆敏,他

内分泌代謝疾患とサルコペニア・フレイル
浅田史成

慢性腎臓病とサルコペニア・フレイル
松沢良太

がんとサルコペニア・フレイル
田中伸弥

集中治療領域におけるサルコペニア・フレイル
中西信人

回復期リハビリテーション病棟におけるサルコペニア・フレイル
井上 達朗


■Close-up 身体内滑走
骨の滑走――肩甲骨の動きについて
斉藤 嵩,他

筋・腱の滑走
川口雄一,他

神経の滑走
河端将司,他

■特別座談会
社会の変化に応じた理学療法教育――立法・行政からみた現状と期待
小川克巳,内山 靖,金谷さとみ,藤澤宏幸,大西秀明,村永信吾,永冨史子,網本 和,堀本ゆかり


●とびら
諦めず,念じて進めば道は開ける
荒木智子

●画像評価――何を読み取る? どう活かす?6
人工膝関節全置換術
森田 伸

●スポーツ外傷・障害の予防 最終回
ジャンパー膝
佐保泰明,他

●理学療法のスタート――こうやってみよう,こう考えていこう 6
・タイムマネジメントの混乱――段取りや時間の使い方
・勉強しても足りない・アドバイスをまとめきれない
長谷川真人

●臨床実習サブノート
退院後から振り返るゴール設定――推論を事実と照合して学ぶ
臨床実習におけるゴール設定を考える
金谷さとみ

●報告
人工膝関節置換術後の患者満足度向上に向けた取り組みの効果検証
岡 智大,他

超音波画像診断装置を用いた肩峰下における大結節通過時の肩甲上腕関節角度の検討
為沢一弘,他

●症例報告
予期不安をもつパーキンソン病患者のすくみ足に対する認知行動療法と運動療法を組み合わせた介入効果――ケーススタディ
太田経介,他

●私のターニングポイント
つなぐ,つなげる,つながるための受け皿になるために
小谷伊織

●My Current Favorite
障がい者スポーツ
塚田鉄平

●臨床のコツ・私の裏ワザ
深層外旋筋から考える股関節屈曲可動域制限の捉え方のコツ
辻川勇次,他

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。