理学療法ジャーナル Vol.56 No.2
2022年 02月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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進歩する低侵襲手術に応じた理学療法――治療プログラム,目標設定,リスク管理

 患者の身体の負担が少ない低侵襲手術法の進歩が著しい.手術創が小さく,周辺組織を傷つけない低侵襲手術だからこそ,術後の回復は早く,入院期間も短く,早期に社会復帰が可能となる.低侵襲手術だからこその理学療法とは? 低侵襲手術だからこそのリスク管理や合併症は? 本特集では,低侵襲手術後の特徴をイラストや写真で解説いただき,理学療法の具体的な目標設定,治療プログラム,リスク管理,課題と展望についてわかりやすく論述していただいた.

頭部の低侵襲手術と理学療法 丸屋 淳,他
 脳内血腫の神経内視鏡手術は日常的に施行される一般的な脳神経外科手術となっている.神経内視鏡下血腫除去術を行うことで,早期の減圧による二次的脳損傷の回避と早期リハビリテーションが可能となり,脳内血腫患者の予後は改善する可能性がある.血圧管理および頭蓋内圧管理に注意しつつ,術後早期からの積極的リハビリテーションが望まれる.

脳血管内治療と理学療法 井上真秀,他
 脳血管内治療はカテーテルを使用した脳血管疾患に対する低侵襲手術であり近年めざましく発展してきた治療法である.理学療法士がかかわる代表的な脳血管内治療は,くも膜下出血に対するコイル塞栓術,内頸動脈狭窄症に対する頸動脈ステント留置術,脳梗塞に対する血栓回収療法である.本稿では各脳血管内治療の特徴や術後のリスク管理,理学療法の目標設定を中心に解説する.

脊椎の低侵襲手術と理学療法 古谷英孝,他
 側方経路による腰椎椎体間固定術は,従来行われている後方経路と比較して出血量や背筋への侵襲が少なく,不良な脊柱アライメントを矯正しやすい手術である.側方経路術後の理学療法では,手術の侵襲経路を把握し,侵襲により発生し得る合併症に留意して介入を進めていく.合併症には,主に侵襲側の大腿前面および鼠径部痛,大腰筋の筋力低下があり,術後早期より改善を目的に介入を行う.

肩関節の低侵襲手術と理学療法 中村絵美,他
 現在,肩関節手術の多くが関節鏡視下で実施されている.なかでも腱板断裂に対する腱板修復術および反復性肩関節脱臼に伴う関節唇形成術が代表的である.これらの術後理学療法においては,修復組織の治癒を阻害せず,肩関節機能の改善を図ることが重要である.また,術後固定に伴う柔軟性の低下やアライメント不良を可能な限り生じさせないことも必要である.

膝関節の低侵襲手術と理学療法 廣幡健二,他
 これまで,外側半月板の後根損傷や逸脱は放置あるいは部分切除されることが多かったが,近年ではその重要性が認識されて積極的に縫合術が適応されてきている.外側半月板縫合術後の理学療法では,術後の回復を阻害しないための管理と縫合部へのストレスを回避するための運動パターン獲得が重要となる.本稿では,外側半月板縫合術後のリハビリテーションプロトコル例を提示しつつ,理学療法実施におけるポイントについて述べる.

股関節の低侵襲手術と理学療法 平尾利行,他
 近年,人工股関節全置換術(total hip arthroplasty:THA)は前方進入法(direct anterior approach:DAA)や前側方進入法(anterolateral approach:ALA)のような筋間進入を用いた低侵襲手術が行われている.低侵襲手術の最大の恩恵は,進入する際に筋や骨の切離を行わないため,手術翌日より荷重制限のない歩行が許可できることであり,ADL の早期自立を実現している.本稿では低侵襲THAにおける理学療法の治療プログラム,目標設定,リスク管理について述べる.

足関節の低侵襲手術と理学療法 佐藤正裕,他
 足関節の低侵襲手術は関節鏡や内視鏡で行われる鏡視下手術である.足関節の鏡視下手術では,直視下手術よりも理学療法プロトコルや日常生活活動への復帰が早期化するため,患者教育と適切な段階的負荷の治療方針が重要である.スポーツなどの高負荷活動への復帰に関しては,術後時期だけの判断で復帰するのではなく,機能的指標を段階的に達成したうえで決定されることが望ましい.

心臓の低侵襲手術と理学療法 河村知範,他
 近年,心臓・大血管手術の低侵襲化が進められ,minimally invasive cardiac surgery(MICS)やステントグラフトによる治療が行われるようになっている.胸骨正中切開による心臓手術や開胸・開腹による人工血管置換術と比べ侵襲が少なく,術後の早期社会復帰も可能である.心臓低侵襲手術症例における具体的な目標設定や治療プログラムを提示し,理学療法介入の際に行うべきリスク管理について述べる.

経カテーテル心臓低侵襲治療と理学療法 大塚脩斗,他
 カテーテルを用いた心臓低侵襲治療は,経カテーテル大動脈弁留置術やMitraClip®など近年急速に発展している分野である.本治療による最大の目的は,患者の生命予後および健康寿命の延伸,QOLの向上にあり,心臓リハビリテーションが非常に重要な役割を担うこととなる.本稿では理学療法を実施するうえで必要となる治療およびリスク管理に関する知識や,目標設定などについて詳述する.

肺の低侵襲手術と理学療法 馬庭春樹,他
 呼吸器外科手術における低侵襲手術である胸腔鏡補助下手術(video assisted thoracoscopic surgery:VATS)では,開胸と比較して皮膚切開が小さく,術後の回復が早いのが特徴である.VATSの周術期では術後呼吸器合併症の予防,入院期間の短縮などを目的とした理学療法が実施される.松江赤十字病院のリハビリテーションプロトコルをもとに,術前の呼吸トレーニング,術後の離床の進め方,理学療法における注意点などを紹介する.

腹部の低侵襲手術と理学療法 中田秀一,他
 Enhanced Recovery After SurgeryやESSENSEなどの術後回復強化プログラムは主に消化器がんを対象とし,低侵襲手術の重要性に加え,早期離床や身体活動量の早期回復などのリハビリテーション内容についても言及されている.特に生体防御機能や免疫力が低いがん患者では,低侵襲手術が有利とされ多くの施設で実施されているのが現状である.そこで本稿では,腹部外科患者の低侵襲手術の特徴に加え,理学療法の実際を中心に述べていく.

Women’s Health 領域の低侵襲手術と理学療法 渡辺典子,他
 女性特有のがんである婦人科がん領域における低侵襲手術には腹腔鏡手術,ロボット支援下手術があり,開腹手術に比べ術後の機能障害や合併症の発生頻度は低く,早期離床,早期退院が可能である.退院後の日常生活や社会へのよりスムーズな復帰を促すため,術後の症状や合併症予防に向けた意識づけ,継続的な運動,日常生活上の注意点など啓発を目的としたかかわりが必要である.

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特集 進歩する低侵襲手術に応じた理学療法――治療プログラム,目標設定,リスク管理

頭部の低侵襲手術と理学療法
丸屋 淳,他

脳血管内治療と理学療法
井上真秀,他

脊椎の低侵襲手術と理学療法
古谷英孝,他

肩関節の低侵襲手術と理学療法
中村絵美,他

膝関節の低侵襲手術と理学療法
廣幡健二,他

股関節の低侵襲手術と理学療法
平尾利行,他

足関節の低侵襲手術と理学療法
佐藤正裕,他

心臓の低侵襲手術と理学療法
河村知範,他

経カテーテル心臓低侵襲治療と理学療法
大塚脩斗,他

肺の低侵襲手術と理学療法
馬庭春樹,他

腹部の低侵襲手術と理学療法
中田秀一,他

Women’s Health領域の低侵襲手術と理学療法
渡辺典子,他


■Close-up 自律神経
自律神経の知識が理学療法士に必要な理由
鈴木郁子,他

非侵襲的刺激と自律神経
岡 真一郎,他

運動療法と自律神経
加藤倫卓,他


●とびら
受けた恩は次の世代へ
平田和彦

●画像評価――何を読み取る? どう活かす?・2
二次性変形性股関節症
川端悠士

●スポーツ外傷・障害の予防・2
鼠径部痛 松田直樹,他

●理学療法のスタート―こうやってみよう,こう考えていこう・2
・問診は難しい!? 問題点や治療のヒントへ迫ろう
・理学療法士の現実的目標と患者さんの希望のギャップ 
永冨史子

●臨床実習サブノート 診療参加型臨床実習―「ただ見ているだけ」にならないように・11!
通所リハビリテーション(デイケア)
松永 玄

●報告
痙直型脳性麻痺患者におけるTrunk Impairment Scaleと日常生活活動との関係
――利き足,非利き足を配慮した静的座位バランスの検証
楠本泰士,他

●症例報告
急性心筋梗塞を発症したBecker型筋ジストロフィー患者における体重免荷トレッドミルの有効性
山守健太,他

●症例報告
骨転移キャンサーボードと疼痛回避動作指導によりADLが拡大できた乳癌脊椎多発転移性骨腫瘍の1例
深田 亮,他

●私のターニングポイント
本物に触れる
中島 遼

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