BRAIN and NERVE Vol.74 No.11
2022年 11月号

ISSN 1881-6096
定価 2,970円 (本体2,700円+税)

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特集 RFC1遺伝子関連スペクトラム障害
RFC1遺伝子のAAGGG反復配列の伸長に伴う疾患は,小脳性運動失調症,ニューロパチー,前庭機能障害を呈するCANVAS(cerebellar ataxia with neuropathy and vestibular areflexia syndrome)のほか,このうちのいずれかの表現型を呈し,多系統萎縮症や感覚性ニューロパチー,運動ニューロン疾患との鑑別を要する症例も報告され,スペクトラム障害として考えられるようになった。さらに自律神経障害や慢性咳嗽を呈することもある。本邦でも報告例が徐々に増加している。最新の報告から臨床像および病態について現時点の知見をまとめ,適切な診断につなげることを目的とする。

RFC1遺伝子関連スペクトラム障害—疾患概念の確立の経緯と臨床的多様性 吉田邦広
CANVAS(cerebellar ataxia with neuropathy and vestibular areflexia syndrome)は小脳失調,感覚性ニューロ(ノ)パチー,両側前庭障害を3徴とする多系統障害型の運動失調症候群である。本症の原因として,RFC1内の(AAGGG)反復配列の伸長が同定されて以降,3徴以外の臨床的多様性が認識されるようになり,現在ではRFC1関連スペクトラム障害と捉えられている。

RFC1遺伝子の機能と変異 宮武聡子, 松本直通
CANVAS(cerebellar ataxia with neuropathy and vestibular areflexia syndrome)の原因として,RFC1遺伝子のイントロン領域に存在するリピート配列の両アレル性伸長が報告された。2種の異常リピート配列伸長による異なるアレルの組合せにバリエーションがあり遺伝型-表現型連関も示唆されるが,その病態は不明である。

Cerebellar ataxia with neuropathy and vestibular areflexia syndrome(CANVAS)の神経病理所見 山田光則
CANVAS(cerebellar ataxia with neuropathy and vestibular areflexia syndrome)の中枢神経系ではプルキンエ細胞の脱落と脊髄後索の変性が特徴であり,末梢神経系では後根神経節,前庭神経節などにおける神経節細胞の脱落が主体となる。症例により,下オリーブ核,皮質脊髄路,顔面神経節などにも変性が見られる。病変分布の差が遺伝子異常の違いやその組合せの違いによるのか,今後の解析が必要である。本疾患に特徴的な異常蛋白質の凝集体(核内封入体など)は現時点で見つかっていない。

前庭機能障害 青木光広, 丸田恭子, アルマンスール亜千夢
Cerebellar ataxia with neuropathy and vestibular areflexia syndrome(CANVAS)を代表としたreplication factor C subunit 1遺伝子(RFC1)関連スペクトラム障害では90%以上に両側前庭機能障害を認める。本論で提示するCANVAS症例では,RFC1のイントロン領域におけるAAGGGのリピート延長を認めるとともに,温度刺激検査,video Head Impulse Test(vHIT),回転検査および前庭誘発筋電位(vestibular evoked myogenic potential:VEMP)にて両側前庭機能障害を認めた。Visually enhanced vestibulo-ocular reflex(VVOR)検査で異常を認め,前庭核を含む脳幹と小脳の複合病変の存在が示唆された。

*本論文中に掲載されている二次元コード部分をクリックすると,関連する動画を視聴することができます(公開期間:2025年11月30日まで)。

慢性咳嗽と機序 土井 宏, 田中章景
CANVAS(Cerebellar ataxia with neuropathy and vestibular areflexia syndrome)に代表される,RFC1遺伝子関連スペクトラム障害の患者の少なくとも6割以上に,発作性の乾性咳嗽が認められることが判明し,慢性咳嗽は本疾患の診断のキーポイントとなる重要な所見として認識されるようになった。咳嗽は初発症状となることが多く,症例によっては失調症状や感覚障害などの神経症状に30年以上先行する。病態機序は不明な点も多いが,咳嗽反射の求心路である迷走神経の障害,あるいは小脳障害が咳嗽発症に寄与している可能性がある。

RFC1遺伝子関連スペクトラム障害と小脳性運動失調 安藤匡宏, 髙嶋 博
RFC1遺伝子関連スペクトラム障害は小脳性運動失調や感覚ニューロパチー,前庭神経障害を含めた多彩な障害が単独ないし多様な組合せをもって出現し得る疾患である。臨床症状や画像所見から多系統萎縮症との鑑別にも重要な疾患となる。本論では小脳性運動失調症におけるRFC1遺伝子関連スペクトラム障害の頻度や遺伝学的特徴,画像所見について詳述する。

ニューロパチーからみたRFC1遺伝子関連スペクトラム障害 大崎裕亮, 和泉唯信
小脳性運動失調・ニューロパチー・前庭反射消失症候群(CANVAS)の原因としてRFC1遺伝子のイントロン領域での両アレル性5塩基リピート伸長が報告された。この症候群内においてニューロパチーは最も高頻度に見られる症候であり,慢性特発性軸索性ポリニューロパチー症例の一部でこの変異を認めることもわかってきた。本論ではこのニューロパチーの臨床的特徴について概説する。

RFC1遺伝子関連スペクトラム障害における運動ニューロン障害 宮地洋輔, 土井 宏, 田中章景
CANVAS(Cerebellar ataxia with neuropathy and vestibular areflexia syndrome)の3徴は,小脳性運動失調,両側前庭障害,感覚性ニューロパチーである。当初CANVASにおいて,運動系の障害は乏しいと考えられていた。しかしRFC1遺伝子での5塩基反復配列の伸長が病因として判明するとともに,運動ニューロン障害も含めさまざまな臨床像が報告されてきている。本論では,RFC1遺伝子関連スペクトラム障害における運動ニューロン障害について述べる。

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特集 RFC1遺伝子関連スペクトラム障害

RFC1遺伝子関連スペクトラム障害──疾患概念の確立の経緯と臨床的多様性
吉田邦広

RFC1遺伝子の機能と変異
宮武聡子,松本直通

Cerebellar ataxia with neuropathy and vestibular areflexia syndrome(CANVAS)の神経病理所見
山田光則

前庭機能障害
青木光広,他

慢性咳嗽と機序
土井 宏,田中章景

RFC1遺伝子関連スペクトラム障害と小脳性運動失調
安藤匡宏,髙嶋 博

ニューロパチーからみたRFC1遺伝子関連スペクトラム障害
大崎裕亮,和泉唯信

RFC1遺伝子関連スペクトラム障害における運動ニューロン障害
宮地洋輔,他


■総説
脳磁計開発の黎明期──超伝導センサから室温センサへ
中里信和

レム睡眠の開始機構──睡眠周期の生成に関するドーパミンと扁桃体の新たな役割
長谷川恵美


●脳神経内科領域における医学教育の展望──Post/withコロナ時代を見据えて
第15回 大学間連携によるオンライン臨床実習の試み
吉倉延亮,他

●臨床神経学プロムナード──60余年を顧みて
第21回 「神経学用語集」の改訂(第2版)を理事長に進言
──ブーメランの如く委員長を命ぜられる──
平山惠造

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