臨床整形外科 Vol.57 No.11
2022年 11月号

ISSN 0557-0433
定価 2,860円 (本体2,600円+税)

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特集 腰椎椎間板ヘルニアのCutting Edge

椎間板ヘルニアと炎症 大場哲郎,他
椎間板ヘルニアの自然退縮メカニズムは,無血管領域にある髄核が血行にさらされて自己免疫反応が惹起されることに伴って起こる炎症性反応をトリガーとすることが知られている.そこでわれわれは,椎間板の炎症・変性における免疫性の炎症に着目して研究を継続してきた.TNFファミリー分子であるTNF-like weak inducer of apoptosis(TWEAK)が椎間板に恒常的に発現しており,慢性的で比較的弱い炎症反応を誘導することで,軟骨基質生成の抑制およびmatrix metalloproteinases(MMPs)の産生誘導を通じて椎間板変性に関与している.また,アレルギー性疾患で免疫寛容の破綻時に炎症を誘導するthymic stromal lymphopoietin(TSLP)は,椎間板ヘルニアにおいても同様に,免疫担当細胞の遊走を惹起していることを解明した.

椎間板ヘルニア後の再生を目指して—椎間板再生医療等製品開発の現状 酒井大輔
椎間板変性症に伴って発症する椎間板ヘルニアは働き盛りの壮年期に好発し,社会的インパクトも大きい疾患であるが,その治療は保存的治療が無効な場合,組織の切除しかないのが実情である.椎間板ヘルニア手術後に椎間板変性が進行することが示されており,その抜本的対策として椎間板再生医療の実現が望まれる.本稿では椎間板再生の機序,臨床応用までの道筋と臨床試験の現状について紹介する.

多血小板血漿を使用した椎間板内治療 明田浩司,他
多血小板血漿(PRP)は多種の生体活性タンパク質を高濃度に含んでおり,再生医療分野にて臨床応用されている.われわれは活性化PRPから抽出したPRP上清を椎間板治療に応用し,その有用性を報告してきた.基礎研究および臨床前研究より,PRP上清が椎間板細胞を活性化し,椎間板変性を再生・修復させる効果があることを示した.そこで慢性腰痛患者(椎間板性疼痛患者)に対して,PRP上清を用いた椎間板内治療の臨床試験を行った.PRP上清は安全性が高く,腰痛に対し効果的な椎間板内治療を展開することが可能である.

間葉系幹細胞を用いた椎間板再生 北原 貴之,他
椎間板変性は,腰痛に代表される腰椎疾患の主要な原因と考えられている.変性した椎間板は自然治癒しないため再生治療に期待が寄せられている.椎間板再生治療において細胞治療は中心的役割を担っており,間葉系幹細胞を用いた細胞治療では移植細胞の栄養作用による組織再生効果が報告されている.本総説では,間葉系幹細胞を用いた椎間板再生のアプローチについて用いられる細胞種・担体・作用機序について概説し,われわれが報告してきた脂肪由来間葉系幹細胞由来3次元複合組織による椎間板再生治療についても紹介したい.

椎間板再生医療の実用化に向けた超高純度な生体吸収性バイオマテリアルと
同種骨髄由来間葉系幹細胞の開発 須藤 英毅

椎間板は無血管野であり栄養供給に乏しく細胞分裂能が低いため,変性あるいは欠損した椎間板は自然再生しない.組織再生を目指して幹細胞を単純移植しても周囲組織との相互作用がなく十分な生着が期待できないため,超高純度な硬化性ゲルを開発し腰椎椎間板ヘルニアに対する探索的医師主導治験を実施してきた.一方,中高年期の自己修復能の乏しい患者へのバイオマテリアル単独治療には限界があり,混合性腰部脊柱管狭窄症に対しては,硬化性ゲルに他家骨髄由来間葉系幹細胞を組み合わせた細胞治療法による医師主導治験を行っている.

コンドリアーゼを用いた椎間板内治療 坂野 友啓 
2018年に腰椎椎間板ヘルニアに対する椎間板内注射製剤として,コンドリアーゼが世界に先駆けて本邦で臨床使用可能となった.これまで多くの患者に対して使用され,安全で高い有効性が報告されてきている.コンドリアーゼを用いた椎間板内治療は低侵襲であり,保存治療と手術治療の中間に位置する治療選択肢の1つとして定着しつつある.本稿ではコンドリアーゼの適応や投与の実際,臨床成績などに関してまとめた.

腰椎椎間板ヘルニアに対する治療の実際 井上 玄
腰椎椎間板ヘルニアは日常診療で最も診療する機会が多い疾患の1つである.膀胱直腸障害や著明な筋力低下など,術後の回復が思わしくない病態を除き,自然経過でのヘルニア吸収が期待できるため,少なくとも2,3カ月の保存療法が望ましいとされる.代表的な保存療法である薬物療法,神経ブロック,理学療法を,患者個々に適して選択することが重要である.手術療法に関しては,現状で長期的にはコンセンサスは得られていないが,少なくとも短期間での有効性は確立されている.今後,低侵襲術式や髄核融解療法などの新たな治療の発展とともに治療体系も変化していくものと考えられる.

局所麻酔下経椎間孔アプローチによる全内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術の実際 杉浦 宏祐,他
経椎間孔アプローチによる全内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術は,局所麻酔下に可能な最小侵襲脊椎手術の1つである.術前に椎間板造影後CTを撮像し,ヘルニアの形状を評価する.手術では椎間孔部を麻酔後,カニューラを設置する.十分止血のうえ,上関節突起や椎間板などの位置関係を同定しforaminoplastyを行い,神経根障害を予防する.Insideにカニューラを進め髄核を摘出し,手元を下げながら引くことで椎間板と硬膜外腔との境界を確認して除圧する.独自のラーニングカーブがあるため,経椎間孔アプローチのトレーニングを積み手技に習熟する必要がある.

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特集 腰椎椎間板ヘルニアのCutting Edge

緒言
波呂浩孝

椎間板ヘルニアと炎症
大場哲郎・他

椎間板ヘルニア後の再生を目指して──椎間板再生医療等製品開発の現状
酒井大輔

多血小板血漿を使用した椎間板内治療
明田浩司・他

間葉系幹細胞を用いた椎間板再生
北原貴之・他

椎間板再生医療の実用化に向けた超高純度な生体吸収性バイオマテリアルと同種骨髄由来間葉系幹細胞の開発
須藤英毅

コンドリアーゼを用いた椎間板内治療
坂野友啓

腰椎椎間板ヘルニアに対する治療の実際
井上 玄

局所麻酔下経椎間孔アプローチによる全内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術の実際
杉浦宏祐・他


●視座
足関節鏡視下手術の上達の秘訣
吉村一朗

●論述
腰部脊柱管狭窄症手術後の腰痛に伴う機能障害残存の予測因子
竹中裕人・他

●Lecture
軟部肉腫におけるUnplanned Excision
中村知樹

●症例報告
人工股関節脱臼整復に難渋したEhlers-Danlos症候群の1例
明戸瑞樹・他

特発性脊髄硬膜外血腫の治療経験
渡邉健斗・他

大菱形骨・第2中手骨間に発生した変形性関節症と思われる1例
三浪明男・他

上腕二頭筋麻痺で肘屈曲がMMT4である症例
山本博史・他

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