総合リハビリテーション Vol.49 No.9
2021年 09月号

ISSN 0386-9822
定価 2,530円 (本体2,300円+税)

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精神障害を地域で支える

 本誌においては,発達障害や高次脳機能障害,認知症に関する特集,あるいは職業リハビリテーションの特集の一部で精神障害を取り上げてきましたが,精神疾患を主な対象とした特集は2016年以来となります.本特集では,精神障害のある方々の地域での生活をどのように支えていくのかという視点で企画しました.精神科医療の現状から,地域での支援体制,ピアサポート,就労支援など,幅広いテーマで執筆していただきました.日ごろは必ずしも精神障害のリハビリテーションにかかわっていない方でも,興味・関心をもっていただける内容となっています.

統合失調症患者の退院支援と地域移行――その現状と課題 安西信雄氏ら
 統合失調症の有病率はどの国でも人口の約0.7~1%とされ,それほどまれな疾患ではない.精神障害を地域で支える課題においては,統合失調症を中心とする退院困難患者の退院支援や地域生活支援が依然として重要な課題である.著者らが関与した「退院支援実践ガイド」に基づき,具体的な支援方法を紹介していただいた.最新で効果的な治療の提供だけでなく,定期的に行うカンファレンスや多職種チームでの支援などが重要であることが強調されており,まさにリハビリテーションそのものであると考える.

横浜市における横浜市総合保健医療センターの役割と機能――精神障害者の地域での暮らしを支える 飯塚英里氏
 横浜市に設置された認知症を中心とする精神疾患と生活習慣病を対象とした施設における実践的な取り組みのレポートである.精神障害者の地域生活を支える制度としてさまざまなものがあるが,国や自治体独自の制度がよくいえば重層的,悪くいえばわかりにくく使いにくいものとなっている.障害種別や年齢にかかわりなく,種々の相談ができる窓口が期待される.目の前の支援一つ一つに取り組むことが,より大きな地域全体の課題の解決につながり,個々の障害者へ還元されるというよい循環を生み出すことになると考える.

ごく当たり前の生活を実現するために 増田一世氏
 著者らが運営しているやどかりの里における経験から,精神障害のある人たちが地域で暮らすために何が必要か,求められる支援や法制度のあり方などを執筆していただいた.生活拠点での支援で重要なことは,暮らしの場の確保,健康を守って暮らすこと,孤立しないことである.そのためにグループホームの利用や食事の確保,支援者の確保などが必要であるが,経済的問題や家族の問題なども多い.一方で,ある限られた福祉の社会の中で暮らしていると,生活はしやすいが多様なネットワークの中での暮らしとはならないかもしれないことに留意が必要である.

ピアサポートの可能性――当事者研究とピアSSTの経験から 向谷地生良氏ら
 精神保健医療の動向とピアサポートの歴史を概観し,ピアサポート活動の果たしてきた役割と意義,現状と課題などを解説していただいた.他の論文でも触れられているが,「リカバリー」の概念の登場は重要であり,精神障害領域だけなく他の分野のリハビリテーションにおいても改めて参考にすべきことが多いと考える.ピアサポート(当事者自身による相談活動)は,決して当事者と専門家の対立を示すものでも促すものでもない.ピアサポートの意義は大きいが,現在あるいくつかの課題についても言及されており,考えさせられた.

就労支援 相澤欽一氏
 ハローワークにおける障害者の就職件数はこの20年間に急増しており,なかでも精神障害者の件数は30倍以上になっている.法定雇用率の変更などによって,企業の関心が高まったことが要因の一つと考えられる.しかし,ハローワークから就職した精神障害者の4割近くが3か月未満で退職しているというデータもあり,就職のための支援だけでなく,職場定着支援や離転職後の生活安定の支援も重要である.就労支援を実施する際の留意点について詳細に解説していただいたが,実際には精神障害に限らず身体障害でも障害のない人にとっても重要な視点である.

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統合失調症患者の退院支援と地域移行――その現状と課題
安西信雄,他

横浜市における横浜市総合保健医療センターの役割と機能――精神障害者の地域での暮らしを支える
飯塚英里

ごく当たり前の生活を実現するために
増田一世

ピアサポートの可能性――当事者研究とピアSSTの経験から
向谷地生良,他

就労支援
相澤欽一


●巻頭言
回復期リハビリテーションの父
三橋尚志

●入門講座 どう選ぶ? 介護保険のリハビリテーション・機能訓練②
通所リハビリテーション
近藤国嗣

●実践講座 医療機関における治療と仕事の両立支援②
両立支援制度における医療機関の役割
中村俊介

●研究と報告
実車評価にて運転適性ありと判断した脳卒中・脳外傷者のその後の交通事故状況
冨士井睦,他

高齢者の社会参加の種類・数と要介護認定発生の関連――JAGES2013-2016縦断研究
東馬場要,他

●集中講座 評価法の使い方 シリーズ2 各論(疾患別篇)⑨
小児疾患
真野浩志,他

●リハビリテーション医療における退院支援 第4回
ケアマネジャーからの要望――リハビリテーションと退院支援
結城康博

●新専門医制度における研修プログラム 第2回
大学病院を基幹研修施設とする都市部の研修プログラム
川上途行,他

●Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
『続日本紀』にみる感染症対策――聖武天皇の対応
高橋正雄

●Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「ブータン山の教室」――教師も子供たちに突き動かされて成長するのだ
二通 諭

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